降着円盤の 3DCG シミュレーション


Blenderというアプリケーションを用い、ケプラー回転(差動回転)、温度分布、速度、密度を反映させた降着円盤のアニメーションを作成しました。

恒星やコンパクト天体などの周囲には、それを取り囲むように回転するガス円盤が存在することがあり、そのガス円盤は降着円盤と呼ばれます。差動回転による摩擦熱の発生により、ディスクの回転エネルギーが熱エネルギーに変換され、それが輻射となって円盤表面より放出されます。降着円盤の表面温度は一様ではなく、中心天体が作る重力勾配は中心ほど大きくなるので、単位面積あたりのエネルギー開放も中心ほど大きく、gasの温度も中心に近づくほど高くなるという性質があります。
降着円盤の性質 降着円盤の性質
アニメーションの前提として非常に多くの粒子を使い gas としての振る舞いを再現しようとしました。また相対論的な効果は無視した単純で幾何学的な降着円盤を表現しています。

降着円盤と宇宙ジェット


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このアニメーションは差動回転の表現を主に作成したものです。粒子の色は温度が高い方から青、緑、黄、赤としました。 gas は半透明にし、密度が大きくなると重なりが増え、より明るくなるよう設定しました。宇宙ジェットに関しては輻射圧で加速するモデルを参考にしています。

X線連星の gas の供給の様子


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このアニメーションはgasの供給の様子の表現を主に作成したものです。上と同じく、粒子の色は温度が高い方から青、緑、黄、赤としました。 gas は半透明にし、密度が大きくなると重なりが増え、より明るくなるよう設定しました。伴星から流れ込んでくる gas が降着円盤と衝突するホットスポットが光り輝いています。

演算詳細

使用したアプリケーションは Blender ver 2.79 でした。空間にオブジェクトを非常に多く追加することも考えましたが、処理が非常に重くなるまたは動かないことがあったので ParticleSystem を利用しました。 そのため降着円盤と宇宙ジェットでは粒子数は2万5千体、X線連星の gas 供給の様子では5万体を扱うことができました。 降着円盤と宇宙ジェットのアニメーションの Resolution は 1920×1080ピクセル、fps は24で2000フレーム、レンダリングには Blenderレンダーで約72時間かかりました。 X線連星の gas の供給の様子のアニメーションの Resolution は 1920×1080ピクセル、fps は24で2500フレーム、レンダリングには Blenderレンダーで約125時間かかりました。 PC の CPU は Core i7-4790K(Devil's Canyon)でレンダリングはCPUに依存していました。メモリは DDR3-1600 2枚で合計16GBのものを使いました。

大阪教育大学 天文学研究室
2018年度卒業生 佐藤宏哉

大阪教育大学 天文学研究室