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星座解説

黄道第1星座。白羊(はくよう)宮。
設定者はプトレマイオス。

黄道第1星座として昔から重要視されており、「12宮の長」ともいわれた。 第1星座となっている理由は、紀元前2世紀のギリシャの天文学者ヒッパルコスが 春分点を12宮の始まりとした頃に、春分点がおひつじ座にあったためである。 だが、現在は歳差のため、春分点は隣のうお座に移っている。 春分点を「白羊宮の原点」というのはその名残である。

神話では、テッサリアの王アタマスの息子の王子フリクソスとその妹ヘレーが、 2人を憎む継母イノーの計略により殺されそうになった時、 これを助けようと大神ゼウスが送った空飛ぶ金毛の雄羊、 アルゴ探検隊の勇士50人たちが、アルゴ号 (アルゴ座、現在は、ほ座+りゅうこつ座+とも座+らしんばん座に分かれている)に乗り、 捕まえに行った金の毛の羊、 また、大神ゼウスが巨神族に追われた時に変身した牡羊であるともいう。

中国の二十八宿ではα、β、γの3星を婁(ろう)という。 婁とは丘のことで、3星が作る形をそう見たようだ。
天体解説

主な恒星
符号 名前 意味 等級 距離
α ハマル 羊の頭 2.0 70
スペクトル型:K2Vab。
β シェラタン しるし 2.6 50
スペクトル型:A5X。
γ メサルティム 大臣 3.9  
 
δ ボティン 胃袋 4.4  
 


星雲・星団・その他
流星群:おひつじ
出現期間は5/22-7/2。極大は6/8。出現数は多い。





星座解説

黄道第2星座。金牛(きんぎゅう)宮。
設定者はプトレマイオス。

1等星アルデバランから、ちょうど「>」の形に角が伸びた牡牛の姿である。 角の先にあるβ星は、隣のぎょしゃ座にかかるが、 おうし座に属すると見るのが普通である。

現在、春分点は隣のうお座にあるが、紀元前4000年-7000年の間は、 このおうし座に春分点があり、古くバビロニア時代に設けられた星座である。

ギリシャ神話では、大神ゼウスがフェニキア王アゲノールの美しい娘、 エウロパ(エウロペ)をさらう時に化けた牡牛(おうし)である。 ゼウスは白い牡牛に姿を変え、エウロパが美しい牡牛に興味を持ち、 その背中にふと乗ったところ、牡牛は駆け出し海に入り、 エウロパをクレタの海岸にさらっていった。 そのまま海の中に入ったが、不思議なことにエウロパは全く濡れることがなかったという。 海を渡った先にたどり着いたところを、 エウロパの名から、「ヨーロッパ」と呼ぶようになったという。 牡牛が上半身しか描かれていないのは、 下半身は海の中に入っているからであるためであるという。 また、ゼウスがかわいがっていた美女イオの姿であり、 そのことが妻ヘラに知れないようにイオを牛の姿に変えた姿であるともいわれる。 しかし、この場合、牡牛ではなく、牝牛(めうし)ではなかろうか?
天体解説

主な恒星
符号 名前 意味 等級 距離
α アルデバラン 後に続くもの 0.8 60
牛の右目に輝く1等星。スペクトル型:K5V。
「後に続くもの」というのは、プレヤデス星団に日周運動でついていくことによる。 日本でも「あとぼし」、「すばるのあとぼし」の名があるが、発想は同じである。
β エルナト 角で突くもの 1.7 130
雄牛の角の先に輝く2等星。スペクトル型:B7V。
隣のぎょしゃ座にかかるが、おうし座に属すると見るのが普通である。
ζ     2.9 500
スペクトル型:B4Vpe。
η     2.9 250
スペクトル型:B7Ve。


星雲・星団・その他
ヒヤデス星団
牛の顔にのところにある散開星団。距離140光年。星数約100個。
赤経4h19.8m、赤緯+15°37′。
アルデバランは距離149光年にあり、ヒヤデス星団とは偶然同じ方向に見えるだけであって 星団の中には含まれない。 双眼鏡で見ると星がたくさん散らばり、非常に美しい。
M45 (Mel.22):プレヤデス星団
牛の肩のところにある散開星団。光度1.6等。距離410光年。
赤経3h47.1m、赤緯+24°06′。
清少納言の「枕草子」にも「星はすばる...」との記述がある。 日本では「すばる(昴)」、「はごいた(羽子板)星」、「群がり星」などと呼ばれていた。 視力のよい人なら肉眼でも6個以上は見える。 双眼鏡で見ると、大小130もの星が見え、非常に美しい。 写真では薄い青色の光の雲に包まれた姿が見えるが、 これはこの星団がまだ若いことを表している。
M1 (NGC1952):かに星雲
光度8.4等。赤経5h34.5m、赤緯+22 °01′。
1054年の超新星爆発の残骸である。 蟹の足の形に見えたことからこの名が付く。 佐渡島のような形といった方が分かり易い。 記録によると、その光は23日間見えたようだ。 このように星が砕け散り生じた残骸は、宇宙空間へ広がっていき、新しい星を作る材料となる。
流星群:おうし
出現期間は10/23-11/20。極大は11/4-7。 極大時の1時間あたりの出現数は約10個。 母天体はEncke(エンケ)。
流星群:おうしβ
出現期間は6/5-7/18。極大は6/30。出現数は中。





星座解説

黄道第3星座。双子(そうじ)宮。
設定者はプトレマイオス。

1等星のポルックスと2等星のカストルが仲良く並んでいるのが目に付く星座。 現在、η星付近に夏至点がある。

神話では、白鳥に化けた大神ゼウスとスパルタ王の妃レダの間に生まれた双子である。 レダの生んだ卵から孵ったという。 カストルが兄で、ポルックスが弟になる。 カストルは馬術の達人、ポルックスは剣と拳闘の名手で、2人はアルゴ探検隊 (アルゴ座、現在は、ほ座+りゅうこつ座+とも座+らしんばん座に分かれている)の 冒険にも加わっている。 アルゴ探検隊が海上で暴風雨に遭った時、同行していたオルペウス(持っていた琴がこと座)が 神に祈ると、一瞬にして雨は止んで晴れ渡り、双子の頭上に星が1つずつ現れたといい、 このため、この星座は地中海沿岸で古くから航海の守護神として崇められている。

そして、従兄弟のイーダスとリュンケンス兄弟と争って兄のカストルが殺された時、 不死身のポルックスは大神ゼウスに頼んで、2人がいつも一緒にいられるように、 天に上げてもらったといわれる。

2星は英名で「ジャイアンツ・アイズ(巨人の目)」というが、 日本でもこの2星が並んで輝くのが目に付いたようで、 猫の目、蟹の目、眼鏡星、にらみ目、かどぐい(正月に飾る松の枝)星、 また、カストルは白色、ポルックスは橙色なので、 カストルを銀星、ポルックスを金星と呼ぶ地方がある。 キリスト教でも「アダムとイブ」ということがあり、 文化が違ってもこの2星を対にして見ているのは面白い。

現在、η星付近に夏至点がある。夏至(6月22日頃)の時期には、このあたりで太陽が輝く。 この頃太陽は最も高く上がるが、ふたご座もそれくらい高く上がるということになる。
天体解説

主な恒星
符号 名前 意味 等級 距離
α カストル 双子の兄の名 1.6 50
双子の兄にあたる2等星。スペクトル型:A1X+A2Xm。
弟にあたるポルックスよりも暗い。
β ポルックス 双子の弟の名 1.1 35
双子の弟にあたる1等星。スペクトル型:K0Vb。
兄のカストルよりも明るい。
γ アルメイザン 行進するもの 1.9 80
スペクトル型:A0W。
δ ワサト 中央 3.5  
 
ε メブスタ のばした前足 3.0  
 
ζ メクブタ ちぢめた前足 3.4  
 
η プロプス      
この星のそばに夏至点がある。


星雲・星団・その他
M35 (NGC2168)
散開星団。光度5.3等。赤経6h8.8m、赤緯+24°21′。
η星の近くに見える。
流星群:ふたご
出現期間は12/11-16。極大は12/12-14。 極大時の1時間あたりの出現数は約60個。 母天体はPhaethon(フェートン)?





星座解説

黄道第4星座。巨蟹(きょかい)
設定者はプトレマイオス。

この星座が高く上るのは3月下旬であり、春の訪れを告げる星座である。

既にバビロニア時代に知られており、星座としての歴史は非常に古い。 2000年前には夏至点がここにあった。

黄道第4星座だが、特に明るい星はなく、目立たない。

神話では、英雄ヘルクレスのヒドラ(うみへび座)退治の際に沼の中から這い出し、 ヒドラに加勢したものの、あっさり踏み潰されてしまった化け蟹の姿であるという。

中国の二十八宿では「鬼」があり、プレセペ星団のその青白い様子から、 積尸気(せきしき)といい、尸は屍(かばね)、死体の意味であり、 つまり死体を積み重ねたところから出る鬼火の燐光を指す。
天体解説

主な恒星
符号 名前 意味 等級 距離
α アクベンス つめ 4.3  
 
β アルタルフ 足の先 3.5  
 
γ アセルス・
ボレアリス
北の小さなロバ 4.7  
 
δ アセルス・
アウストラリス
南の小さなロバ 4.0  
 


星雲・星団・その他
M44 (NGC2632):プレセペ星団
散開星団。光度3.7等。赤経08h40.1m、赤緯+19°59′。
元は雲のようなものと考えられていたが、 ガリレオ・ガリレイ(1564〜1642)が自作の望遠鏡で観測し、 それが単体ではなく、星の集団であることを確認した(1610)。 双眼鏡でも星の集団あることが分かる。 プレセペとは「飼葉桶(かいばおけ)」の意味で、γ星とδ星の2頭のロバが、 飼葉を食べているように見えることからそう名付けられた。 実際、γ星にはアセルス・ボレアリス(北の小さなロバ)、 δ星にはアセルス・アウストラリス(南の小さなロバ)という固有名が付いている。 また、蜂が集まるように見えることから、英名ではビーハイブ(蜜蜂の巣)という。
M67 (NGC2682)
散開星団。光度6.1等。赤経8h50.5m、赤緯+11°49′。





星座解説

黄道第5星座。獅子(しし)宮。
設定者はプトレマイオス。

春の大星座。 獅子といっても勇ましい百獣の王ではなく、人喰い獅子である。 神話では、英雄ヘルクレス(ヘルクレス座)は、自分が犯した大罪から、 エウリュステウス王から12の荒行を課せられた。 その1つに「ネメアの森に住む人喰い荒獅子退治」があった。 怪力を持つヘルクレスは格闘の末にこの獅子を倒し、皮をはいで肩にかけたという。 クエスチョンマーク(?)を裏返しにした形が目に付き、 これが草刈に使う鎌に似ていることから「獅子の大鎌」といわれる。

この星座には銀河が非常に多くある。

■春の大三角形■
獅子の尻尾にあたるデネボラ(2等星)とスピカ(おとめ座)、アークツルス(うしかい座)、 この3つを結んでできる三角形が「春の大三角形」である。
天体解説

主な恒星
符号 名前 意味 等級 距離
α レグルス 1.3 70
獅子の心臓に輝く1等星。スペクトル型:B7X。
固有名は、ラテン語の「王(rex)」に由来する。 その名付け親はコペルニクスといわれ、ラテン語で「小さい王」、 ローマ時代には「コル・レオニズ(獅子の心臓)」とよばれていた。 黄道上にあり、8月22日頃に太陽がここに輝く。また、時々月に隠されることがある。
β デネボラ 獅子の尾 2.1 40
獅子の尾の先にある2等星。スペクトル型:A3X。
スピカ(おとめ座)、アークツルス(うしかい座)との3星で「春の大三角形」を構成する。
γ アルギエバ 1.9 80
獅子の額に輝く2等星。スペクトル型:K1-Vb+G7V。
北天の中では最も美しい連星の1つとされ、2.2等(橙色)と3.5等(黄色)が小望遠鏡でも見える。
δ ゾズマ   2.6 60
スペクトル型:A4X。
ζ アダフェラ      
 
θ シェルダン      
 
λ アルテルフ      
 
μ ラサラス      
 


星雲・星団・その他
M65 (NGC3623)
光度9.5等。赤経11h18.9m、赤緯+13°06′。
θ星とι星のほぼ中間、獅子の後足のところに集まる銀河群の中の1つ。
M66 (NGC3627)
銀河。8.8等。2700万光年。赤経11h20.2m、赤緯+12°59′。
θ星とι星のほぼ中間、獅子の後足のところに集まる銀河群の中の1つ。
M95 (NGC3351)
銀河。10.4等。赤経10h43.9m、赤緯+11°42′。
α星とθ星のほぼ中間、獅子の腹のところに集まる銀河群の中の1つ。
M96 (NGC3668)
銀河。9.1等。赤経10h46.7m、赤緯+11°49′。
α星とθ星のほぼ中間、獅子の腹のところに集まる銀河群の中の1つ。
M105 (NGC3279)
銀河。9.2等。赤経10h47.8m、赤緯+12°35′。
α星とθ星のほぼ中間、獅子の腹のところに集まる銀河群の中の1つ。
流星群:しし (しし座流星群、レオニズ)
出現期間は11/14-19。極大は11/18。輻射点はγ星付近。
母彗星はTempel-Tuttle(テンペル=タットル)彗星。
33年に1回、大出現が見られることで知られる。 1799、1833、1866、1966年に素晴らしい出現が見られ、 特に1833の大流星雨には、毎時1万個以上が見られたという。 しかし、1899、1932年にはそう出現せず、 期待された1999年も、大出現といえるものではなかった。
(作者も1998、1999年共に観測した\(^o^)/)





星座解説

黄道第6星座。処女(しょじょ)宮。
設定者はプトレマイオス。

春の大星座で、全天でも第2位の広さを持つ。 しかし、1等星のスピカ以外は3等星以下で、あまり目立たない。 現在、秋分点がある。

おとめ座の「女神」は誰か、という説は数多くあり、 神話では大神ゼウスと女神テミスの間に生まれた正義の女神アストライア、 穀物神デメテル、またその娘ペルセフォネ、 古代シリアでは豊穣の女神アタルガティスに見立てている。

■春の大三角形■
スピカとアークツルス(うしかい座)とデネボラ(しし座、2等星)の3つを結んで できる三角形が「春の大三角形」である。
天体解説

主な恒星
符号 名前 意味 等級 距離
α スピカ 穂先 1.0 350
女神が持つ麦の穂先に輝く1等星。スペクトル型:B1V-W+B2X。
連星であり、伴星とわずか4日周期で回り合っている。 日本ではその輝きから「真珠星」と呼ぶところがある。 黄道のすぐそばにあるため、時々惑星と並ぶ。 日本ではアークツルス(うしかい座)と対にして夫婦(めおと)星とよんでいた。 スピカが妻にあたる。 アークツルス(うしかい座)とデネボラ(しし座、2等星)の3星で「春の大三角形」を構成する。
β ザヴィャヴァ 犬小屋 3.6  
 
γ ポリマ 予言の
女神の名
2.8 40
スペクトル型:FOX+F0X。
ほとんど同光度、同色の星同士の2重星である。 171年の周期で回り合っており、2007年に2星が大接近する。
δ
 
ε ヴィンデミ
アトリックス
ぶどうを
摘む娘
2.8 100
スペクトル型:G8Vab。
η ザニア 犬小屋 3.9  
 
ι シュルマ      
 


星雲・星団・その他
M49 (NGC4472)
銀河。8.6等。5900万光年。赤経12h29.8m、赤緯+08°0′。
M58 (NGC4579)
銀河。8.2等。赤経12h37.8m、赤緯+11°5′。
M59 (NGC4621)
銀河。9.3等。赤経12h42.1m、赤緯+11°39′。
M60 (NGC4649)
銀河。9.2等。5900万光年。赤経12h43.7、赤緯+11°33′。
M61 (NGC4303)
銀河。9.6等。赤経12h22m、赤緯+04°29′。
M84 (NGC4374)
銀河。9.3等。赤経12h25.1m、赤緯+12°54′。
M86 (NGC4406)
銀河。9.7等。赤経12h26.3m、赤緯+12°57′。
M87 (NGC4486)
銀河。9.2等。5900万光年。赤経12h30.8m、赤緯+12°24′。
M89 (NGC4552)
銀河。9.5等。赤経12h35.7m、赤緯+12°34′。
M90 (NGC4569)
銀河。10等。赤経12h36.9m、赤緯+13°10′。
M104 (NGC4594):ソンブレロ銀河
8.7等。4600万光年。赤経12h40m、赤緯-11°37′。
最も明るい銀河の1つとして有名。 ソンブレロとは、スペイン人やメキシコ人がかぶるつばの長い帽子のことで、 形が似ていることからそう名付けられた。 太陽系の約2倍の質量を持つ、大型の銀河である。
流星群:おとめ
出現期間は3/26-4/27。極大は4/7-18。出現数は小。





星座解説

黄道第7星座。天秤(てんびん)宮。
設定者はプトレマイオス。

明るい星はなく、目立たないが、 紀元前1200年頃には秋分点がα星のそばにあり、 ローマ時代には収穫の季節を知る重要な星座であった。 歳差により、現在、秋分点は隣のおとめ座にある。

古代ギリシャではこの星座に昼夜を平分する秋分点があったので「天秤」としたようで、 神話では、人間の善悪を裁くために正義の女神アストライアが使った天秤であるといわれる。 その女神アストライアは隣のおとめ座である。

バビロンでは「ジバニーツ(死の天秤)」とよび、秋分以降、冬に向かうのを 太陽が冥界に落ちて行くとと考えたようだ。

なお、昔は隣のさそり座のはさみとも考えられたので、 α星は「ズベン・エス・カマリ(南のつめ)」、 β星は「ズベン・エル・ゲヌビ(北のつめ)」という固有名が付いている。 また、α星には「キファ・アウストラリス(南の天秤皿)」、 β星には「キファ・ボレアリス(北の天秤皿)」という名もある。
天体解説

主な恒星
符号 名前 意味 等級 距離
α ズベン・エス・カマリ 南のつめ 2.8 60
黄道上に位置する。2重星。スペクトル型:A3W。
昔は隣のさそり座のはさみとも考えられたのでこの名が付く。 キファ・アウストラリス(南の天秤皿)という名もある。
β ズベン・エル・ゲヌビ 北のつめ 2.6 130
スペクトル型:B8X。美しい緑色の星。
昔は隣のさそり座のはさみとも考えられたのでこの名が付く。 キファ・ボレアリス(北の天秤皿)という名もある。
δ        
アルゴル型変光星。
σ ズベネルハクラビ      
 





星座解説

黄道第8星座。天蝎(てんかっ)宮。
設定者はプトレマイオス。

巨大なS字カーブを形作るこの星座は、夏の代表的な星座。 毒蠍(さそり)の姿。 冬のオリオン座と並んで均整の取れた星座であり、昔から知られている。

巨人で力持ちの猟師オリオンは、いつも自分の強さを自慢していた。 神の前でも自分より強いものはないと言っているのを聞いた女神ヘーラはたいへん怒り、 1匹の毒蠍をオリオンのもとに送り込んだ。 その蠍にオリオンは刺され、さすがのオリオンも死んだ。 その功績により、天に上った蠍の姿である。 オリオン座とさそり座は天球上でちょうど180度離れており、 さそり座が現れるとオリオン座が隠れ、さそり座が隠れるとオリオン座が出てくるという 面白い位置同士にある。オリオンは天に上っても、まだ蠍が怖いのだろうか?
天体解説

主な恒星
符号 名前 意味 等級 距離
α アンタレス 火星に対抗
するもの
1.0 500
蠍の心臓に輝く赤い1等星。
スペクトル型:M1.5Tab-Tb,(+B4Xe)。
アンタレスとは、「アント(対)」+「アレス(火星)」から来ている。 火星と張り合うくらい赤いということである。
β グラフィアス かに 2.5 600
スペクトル型:B1X+B2X。
δ ジュバ 2.3 600
スペクトル型:B0.3W。
ε     2.3 80
スペクトル型:K2.5V。
θ     1.9 200
スペクトル型:F1U。
ι     3.0 5000
スペクトル型:F2Tae。
κ     2.4 600
スペクトル型:B1.5V。
λ シャウラ 1.6 300
スペクトル型:B2W+B。
π     2.9 600
スペクトル型:B1X+B2X。
σ アル・ニヤト   2.9 500
スペクトル型:B2V+09.5X。
    2.8 600
スペクトル型:BOX。
υ レサート   2.7 500
スペクトル型:B2W。
ω ジャバト・
アラクラブ
     
 


星雲・星団・その他
M4 (NGC6121)
球状星団。6.4等。赤経16h23.7m、赤緯-26°31′。
M6 (NGC6405)
散開星団。5.3等。赤経17h40m、赤緯-32°12′。
M7 (NGC6475)
散開星団。4.1等。赤経17h54m、赤緯-34°48′。
M80 (NGC6093)
球状星団。7.7等。赤経16h17.1m、赤緯-23°0′。





星座解説

黄道第9星座。馬人(ばじん)宮。
設定者はプトレマイオス。

この星座の方向には、天の川の中心があり、星雲、星団が非常に多い。 現在、冬至点がある。

神話では、ケンタウロスという半人半馬の一族の1人、賢者ケイロンの姿。 ちょうど隣の蠍(さそり座)の心臓(アンタレス)を狙っているようである。 ケンタウロス族は大抵凶暴な一族であったが、ケイロンは温厚な性格で、 神々から狩猟、医学、音楽等の才能を授けられ、これを英雄たちに伝授した賢者であり、 音楽を授けられたアポロンをはじめ、ギリシャ神話の若い勇士達の多くが彼の門下生であった。 だが、後にヘルクレス(ヘルクレス座)の放った毒矢が誤って当たり、死んだといわれる。 (ヘルクレスの妻を侮辱したので殺されたという説もある。)

中国では、北斗七星に対して南斗六星、二十八宿では斗宿と呼び、 英名ではミルクディパー(乳さじ)である。 だが、大きさは北斗七星の半分程度しかない。
天体解説

主な恒星
符号 名前 意味 等級 距離
α ルクバト ひざ 4.0  
 
β1 アルカブ 射手の
アキレス腱
   
 
γ2 アルナッシュ 矢の頭 3.0 90
スペクトル型:KOV。
δ カウス・メディア 弓の中央 2.7 100
スペクトル型:K3Va。
ε カウス・
アウストラリス
弓の南 1.8 120
スペクトル型:B9.5V。
ζ アスケラ わきの下 2.6 180
スペクトル型:A2V+A4W。
λ カウス・
ボレアリス
弓の北 2.8 70
スペクトル型:K1Vb。
ν        
射手の目にあたる5等星。最初に発見された肉眼的重星である。
π     2.9 600
スペクトル型:F2U。
σ ヌンキ 海の指標 2.0 200
南斗六星に含まれる2等星。スペクトル型:B2.5X。
海の指標というのは「海の始まりの印」のことで、この名があるのは、 この星から東へ、山羊、海豚、水瓶、南魚、魚など、 海(水)に関する星座が続くことに由来するようだ。


星雲・星団・その他
M8 (NGC6523):干潟星雲
散光星雲。6.0等。赤経18h3.1m、赤緯-24°23′。
M17 (NGC6618):オメガ星雲
散光星雲。7等。赤経18h20.7m、赤緯-16°11′。
M18 (NGC6613)
散開星団。7.5等。赤経18h18.5m。赤緯-17°08′。
M20 (NGC6514):三裂星雲
散光星雲。9.0等。赤経18h2.3m、赤緯-23°2′。
M21 (NGC6531)
散開星団。6.5等。赤経18h4.6m、赤緯-22°30′。
M22 (NGC6656)
球状星団。5.9等。赤経18h36.4m、赤緯-23°55′。
M23 (NGC6494)
散開星団。6.9等。赤経17h57m、赤緯-19°1′。
M24 (NGC6603)
散開星団。4.6等。赤経18h18.5m、赤緯-18°24′。
M25(IC4725)
散開星団。6.5等。赤経18h31.7m、赤緯-19°15′。
M28 (NGC6626)
球状星団。7.3等。赤経18h24.5m、赤緯-24°52′。
M54 (NGC6715)
球状星団。7.3等。赤経18h55.2m、赤緯-30°28′。
M55 (NGC6809)
球状星団。7.6等。赤経19h40.1m、赤緯-30°56′。
M69 (NGC6637)
球状星団。8.9等。赤経18h31.3m、赤緯-32°21′。
M70 (NGC6681)
球状星団。9.6等。赤経18h43.2m、赤緯-32°18′。
M75 (NGC6864)
球状星団。8.0等。赤経20h6.2m、赤緯-21°56′。





星座解説

黄道第10星座。磨羯(まかっ)宮。
設定者はプトレマイオス。

上半身が山羊、下半身が魚の姿。 神話では、牧人と家畜の神パーンがナイル川の岸で怪物テュフォンに襲われた時、 慌てて川に飛び込む際に化けそこなった姿という。 現在、冬至点は隣のいて座にあるが、昔はこの星座にあった。
天体解説

主な恒星
符号 名前 意味 等級 距離
α1 アルゲティ 子山羊 4.2  
 
α2 アルゲティ 子山羊 3.5  
 
β ダビー 屠殺者の幸運 3.0  
 
γ ナシラ 幸運なもの 3.7  
 
δ デネブ・アルゲティ 2.8  
 


星雲・星団・その他
M30 (NGC7099)
球状星団。8.4等。赤経21h40.3m、赤緯-23°11′。
流星群:やぎα
出現期間は7/25-8/10。極大は8/1-2。 極大時の1時間あたりの出現数は約10個。





星座解説

黄道第11星座。宝瓶(ほうべい)宮。
設定者はプトレマイオス。

起源は古く、メソポタミア時代の彫刻にすでに見られるが、 大きい割に明るい星はがないので、少年が水瓶を肩にかかえている姿であるが、 その形は捉えにくい。水瓶から出た水は、南にある魚(みなみのうお座)の口に注いでいる。

三ツ矢の形が唯一目に付くが、これが水瓶にあたる。 中国ではこの三ツ矢を三角に結んで墳墓(ふんぼ)と呼んでいた。

水瓶を持つ人物が誰かについては、いろいろな見方があるが、 ギリシャ神話によると、トロイアの王子で美少年ガニメデ(ガニメード、ガニュメデス)が 山で羊の番をしていたところ、大神ゼウスが変身した鷲(わし座)が飛んできてガニメデをさらった。 オリンポス山に連れていかれたガニメデは、神々の館で神酒を酌取りする役を与えられ、 年を取ることなく幸せに過ごしたそうである、というのが一般的である。

古代バビロニアでは、太陽がこの星座に入る季節は雨季を迎えるので、 ここに水に関係のある星座ができたという。 このみずがめ座をはじめ、うお座、やぎ座(下半身が魚)、みなみのうお座等、 秋の星座の多くが水に関係のある星座で占められているのも同じ理由からである。
天体解説

主な恒星
符号 名前 意味 等級 距離
α サダルメリク 王の幸運 3.0 800
スペクトル型:G2Tb。
β サダルスウド 幸運中の幸運 2.9 800
スペクトル型:G0Tb。
γ サダクビア 隠されたところの
幸運の星
3.8  
 
δ スカト 3.3  
 
ζ        
三ツ矢の中心にあたる。ほとんど天の赤道上に位置する。
θ アンカ 4.2  
 
ε アルバリ      
 


星雲・星団・その他
M2 (NGC7089)
球状星団。6.3等。赤経21h33.5m、赤緯-00°50′。
M72 (NGC6981)
球状星団。9.8等。赤経20h53.5m、赤緯-12°32′。
M73 (NGC6994)
重星。9.0等。赤経20h59m、赤緯-12°37′。
流星群:みずがめη
出現期間は5/3-10。極大は5/4-5。輻射点はη星付近。 極大時の1時間あたりの出現数は約10個。 母天体はHalley(ハレー)。
流星群:みずがめδ
出現期間は7/27-8/1。極大は7/28-29。輻射点はδ星付近。 極大時の1時間あたりの出現数は約20個。





星座解説

黄道第12星座。双魚(そうぎょ)宮。
設定者はプトレマイオス。

現在、春分点(座標原点となる)がある。 しかし、これは永遠にここにあるのではなく、歳差のため、 いずれ隣のみずがめ座に移ってしまう。 その移動量は毎年50″(秒)であるので、72年に1°(度)ずれることになる。 12宮を創設した2000年前からは、約38度のずれが生じている。 その結果、2000年前にはおひつじ座(白羊宮)にあった春分点が 今では隣のうお座に移ってしまっている。 同様に夏至点はかに座からふたご座へ、秋分点はてんびん座からおとめ座へ、 冬至点はやぎ座からいて座へ、それぞれ移ってしまっている。

北の魚と西の魚(南の魚ともいう)が紐で結ばれた姿であるが、 その形を見出すのは困難である。 結び目であるα星と、西の魚の口であるβ星がやっと目に付く程度である。

神話では美の女神アフロディテ(英語でビーナス)とその子エロス(英語でキューピッド)が 河畔を散歩している時、怪物テュフォンが現れ、 それから逃れようと川に飛び込んだ際に、魚に化けた姿だという。
天体解説

主な恒星
符号 名前 意味 等級 距離
α アル・リスカ 結び目 3.8  
4.2等と5.1等の2つの星が周期720年で回り合っている連星である。
β フム・アル・サマカー 魚の口 3.6  
西の魚(南の魚ともいう)の口にあたる。


星雲・星団・その他
M74 (NGC628)
銀河。10.2等。3700万光年。赤経1h36.7m、赤緯+15°47′。


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