ピンポイントクラッシュ
−平均自由行程と衝突時間−

■ワイリー&バーマー『地球最後の日』(1933年)■
■ジョージ・パル監督『地球最後の日』(1951年)■
■東宝映画『妖星ゴラス』(1962年)■
■小松左京『さよならジュピター』■

宇宙の彼方から飛来してきた天体 (他の惑星や恒星,はたまたブラックホール)が, 太陽系に突入し,太陽(あるいは地球)に衝突する.
しかもピンポイントクラッシュ!
太陽系の危機だ!!

ピンポイントクラッシュが起こる可能性は?


■太陽系近傍における星の空間密度■

星の平均距離〜1光年
星の空間密度〜1個/立方光年

■平均自由行程と衝突時間■

n:星の空間密度
σ:“衝突”が起こる有効断面積
v:ブラックホール(衝突天体)と星の相対速度

星が個数密度nで分布している空間に,
断面積σで長さxの円筒を考える

円筒の体積は σx
円筒内の星の個数は nσx

平均自由行程x:nσx=1
平均衝突時間t:x=vtよりnσvt=1

■物理的衝突(直接衝突)の頻度−太陽への直接衝突■

断面積σは,星の(物理的な)断面積
断面積σの半径Rは,星の半径

具体的には

Rは太陽半径にとる

星の平均密度n=1個/立方光年
星の物理的な断面積σ=πR2
ブラックホールの速度v=100km/s

平均自由行程x=5.9×1013光年
平均衝突時間t=1.8×1017

平均衝突時間は宇宙年齢より長い!
→ピンポイントクラッシュは起こらない

■重力的衝突(間接衝突)の頻度1−太陽の捕捉■

断面積σは,重力的な影響を受ける有効断面積
ブラックホールの質量をMとすると,有効断面積の半径Rは,
   R=2GM/v2
になることがわかっている.

具体的には

ブラックホールの質量を太陽の10倍
ブラックホールの速度v=100km/s

有効半径R=380太陽半径

n=1個/立方光年
σ=πR2

平均自由行程x=3.8×1010光年
平均衝突時間t=1.2×1014

平均衝突時間はまだまだ宇宙年齢より長い!

■重力的衝突(間接衝突)の頻度2−太陽系の破壊■

ブラックホールが太陽系の縁をかすめて, 太陽系の力学を破壊してしまう.
   R=100天文単位

具体的には

n=1個/立方光年
σ=πR2
ブラックホールの速度v=100km/s

平均自由行程x=1.3×105光年
平均衝突時間t=3.8×108

平均衝突時間は宇宙年齢より短くなった.
でも,1億年のオーダー.


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