ブラックホールの蒸発と未来
Evaporation and Future
ブラックホールの蒸発とはいったいどんな現象でしょうか? ブラックホールの未来はどうなるのでしょうか?

<ブラックホールの“死”>


ブラックホールの蒸発

■6■ブラックホールの生涯

【生涯】
 星の終末は、その質量によって異なる。すなわち約0.08太陽質量より小さい星は太陽になれない。約0.08太陽質量から約4太陽質量の星は、最終的に白色矮星になる。約4太陽質量から約8太陽質量の星は、超新星爆発を起こすが、粉々に砕け散って後に何も残さない。そして太陽質量の8倍より大きな星が超新星爆発を起こしたときに、中性子星やブラックホールが残される。
 とくに質量の大きな星が超新星爆発を起こすと、その中心部は、ガスの圧力や中性子の縮退圧などいかなる圧力によっても自分自身を支えることができなくなり、中心点へ向かって無限に重力収縮してしまう。ふつうのブラックホールは、このような星の重力崩壊の結果、誕生する。

 ブラックホールが誕生した後の進化には、蒸発と成長と、二つの方向がある。一つはケンブリッジの物理学者ホーキングの唱えたブラックホールの蒸発だ。古典的な理論では真空に置かれた単独のブラックホールは、永久に存在する。しかし量子力学的な場の理論では、真空は無ではなく、そこでは仮想的な粒子・反粒子対が常に生成消滅を繰り返している。ブラックホールの地平面の近傍でこのような仮想粒子対が生成すると、それらが消滅する前に、片方の粒子(反粒子)がブラックホールの地平面内に落ち込み、もう一方の反粒子(粒子)が遠方へ逃げ去ることがある。これを遠方からみると、まるでブラックホールから粒子が出てきたように見えるだろう。このような蒸発によって、ブラックホールの質量はだんだん減少する。ただし蒸発の割合は質量が大きいほど小さく、ふつうのブラックホールでは蒸発は無視できる。
 もう一つはブラックホールの成長だ。すなわち、ブラックホールは周囲から物質を吸い込んだり、あるいはブラックホール同士が衝突して、その結果、だんだん成長していくことがある。たとえば、銀河の中心などで生まれたブラックホールの場合、まわりのガスや星が多いので、それらを吸い込んで、ブラックホールはだんだんと成長し、ついには、太陽の一億倍もの質量を持った超大質量ブラックホールが形成されている。

 さて、質量の大きな星の死と共に誕生するふつうのブラックホールの場合は、どんな一生を送るのだろうか? はくちょう座X−1などに代表される、ブラックホールと比較的質量の大きな星からなる連星系の場合で考えてみよう(もちろん、ブラックホールが誕生する際の超新星爆発で、連星系が壊れずに生き延びなければならない)。

 ブラックホールが誕生した後、何百万年か経つうちに、相手の星も進化して膨らむので、ブラックホールは相手の星の外層大気をはぎ取って吸い込み、次第に成長していく。ブラックホールが相手の星を吸い込んでいる間は、吸い込まれる途中にブラックホールの周辺で高温になったガスのために、きわめて激しい活動が起こっている。これがX線源はくちょう座X−1の現在の姿だ。やがて星は吸い尽くされてしまい、後には、だいたい星の質量分だけ重たくなったブラックホールが残るだろう。その後は、基本的には成長はストップする。もちろんわずかに存在する星間ガスを少しずつ吸い込んだり、ときには他の星やブラックホールと出会ってそれらを食べて少しだけ太ることもあるかもしれないが、いずれはまわりに吸い込む物質もなくなり、長い年月にわたり変化は起こらなくなる。そして膨張宇宙が未来永劫続くのなら、遥かな、ほんとに遥かな未来に、いずれは蒸発する運命にある。


ブラックホールの温度と蒸発時間




ブラックホールの常識のウソ

ブラックホールは太るだけ!
ブラックホールは永遠不滅?

ブラックホールは蒸発し,
はるかな未来には消え去る!

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