特異連星SS433(SS433)

特異連星SS433は,宇宙ジェットのプロトタイプとして有名な天体です. SS433は,高温の伴星(図中の▲で挟まれた星) とコンパクト星からなる近接連星で, コンパクト星のまわりには降着円盤が形成されていますが, その中心付近から,光速の26%もの速度で, 2方向へプラズマガスの噴流−宇宙ジェット−が吹き出ているのです.

左:特異連星SS433(大阪教育大学)

SS433の要素
可視光天体(伴星)早期型星/V=14
距離約5kpc
連星周期13.082日
視線速度振幅約112 km/s
質量関数約2.0太陽質量
軌道傾斜角78.8°
歳差周期162.5日
歳差角19.8°

特異天体SS433は,赤経19時9分,赤緯4°53′,わし座の領域に位置する天体で, 電波観測によるジェットパターン(歳差のために螺旋状になっている)の解析から, 太陽からの距離はほぼ5kpcであることがわかっています. 見かけの明るさは約14等級で,6等から8等程度の星間吸収を受けています.
このSS433は,長年にわたって, 可視光はもとより電波,赤外,X線,γ線など多波長で観測がされてきました. そしてシステムに関する基本的な描像(運動学的モデルと呼ばれる)は確立しています. しかし,SS433活動の主因である降着円盤の形状や物理的性質, (円盤とジェットの)歳差の原因,そしてジェットの形成機構など, その本質的な部分はまだ十分解明されていません. すなわち,
  • 中心のコンパクト天体は中性子星なのかブラックホールなのか?
  • それを取り巻く降着円盤は分厚いのか薄っぺらいのか?
  • 降着円盤はどうしてコマのように首振り運動をしているのか?
  • 光速の26%もの速度で噴出するプラズマジェットは, いかなるメカニズムで加速され収束されているのか?
など,まだよくわかっていないのです. 現在も,観測と理論の両面から研究が続けられています.

SS433のアニメーション
特異連星SS433は,比較的表面温度の高い星(赤い方)と, コンパクト星(ブラックホールか中性子星) +周辺のガス降着円盤(青い方)が, 共通重心のまわりを約13日の周期で公転しています. 相手の星を隠す食現象が観測されていて, 明るさの変化の様子から,降着円盤のサイズが比較的大きいことや, 降着円盤が薄っぺらなものではなくある程度の厚みがあること, などが推測されています. 降着円盤は周辺部では温度が低いのですが, 中心に近づくにつれ温度が高くなっていて, コンパクト星の近傍では (コンパクト星は図のスケールでは見えません), ガスの温度は数千万度もの高温となっています.
SS433がユニークなのは, コンパクト星の周辺からジェットが噴出していることですが (図ではジェットは示してありません), さらに変わっているのは,そのジェットが,約163日ほどの周期で, コマのように歳差運動を行っている点です. ジェットの歳差運動の原因は, ジェットが吹き出している降着円盤自身が, 同じ163日の周期で歳差運動しているためだと考えられています. アニメーションでは, 青い降着円盤と赤い伴星が公転運動をすると同時に, 青い降着円盤がゆっくり歳差運動しているのに注目して下さい.
以上のようなSS433の詳細なモデルは, 可視光領域の測光観測や分光観測,電波観測, X線観測などからわかってきたことですが, 中心のコンパクト星がブラックホールなのか中性子星なのか, ジェットはどうやって形成されるのか, などなど,SS433には多くの謎が残されています.
(CGアニメ作成 大阪教育大学 年吉雅美)


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