◇重力レンズ(Gravitational Lens)

星や銀河など質量をもった天体の周辺では, 重力場のために空間が曲がっており,その結果, その空間を伝わる光の経路も曲がります. この重力場による空間の曲がりと光線の彎曲は, アインシュタインの一般相対論が予言したものですが, 現在では,さまざまな観測によって, 一般相対論も光線の彎曲も実証されています.
天体の周辺で光線の経路が曲げられるということは, 重力場をもつ天体がある種のレンズの役目を果たすということです. これを重力レンズ(gravitational lens)と呼んでいます.


アクリル製“重力レンズ”による2つの像


アクリル製“重力レンズ”によるリング状の像

現実の宇宙では,1979年, 17等級のクェーサー0957+561A,Bが, 最初の重力レンズ天体として発見されました. このクェーサーは,角距離が5.7秒角離れた2つの成分AとBからなるのですが, このAとBが分光学的にまったく同じ姿をしていることが判明し, 成分AとBが,別のクェーサーではなく, 遠方のクェーサー(赤方偏移1.4)からの光が, 途中の銀河や銀河団(赤方偏移0.39)の重力場によって曲げられてできた, 2つの重力レンズ像であることがわかったのです.
現在では,さまざまな重力レンズ天体が発見されてきていて, 重力レンズは遠方の宇宙を探る強力な手段になりつつあります.