93光帆.JXW 1993 1130-1208
95光帆.JXW 1994 1109, 1125, 1129
 
               銀河中心核文明(降着円盤文明)その3
     ソーラーセールからフォトンサーファーへ
 
福江 純
<大阪教育大学天文学研究室 〒582 柏原市旭ケ丘4−698−1>
e-mail:fukue@cc.osaka-kyoiku.ac.jp
 
太陽からの光圧を利用して帆走する宇宙ヨット,太陽系内に設置されたレーザー光線発射装置からの強力なレーザーで推進されるレーザー推進型宇宙船,さらに,銀河中心核に高度宇宙文明が存在していれば,降着円盤系からの強烈な輻射圧を利用する光帆走が可能かもしれない.そのような降着円盤の放射を利用した光帆船<フォトンサーファー>の軌道力学について考察した.降着円盤系から十分遠方での光帆船ファーサーファーの場合,ある臨界浮遊角度では,重力と輻射圧が釣り合って,セールは浮遊するが,臨界浮遊角度より小さな角度領域では輻射圧の方が強くてファーサーファーは吹き飛ばされ,大きな角度領域では重力の方が強くてファーサーファーは落下する.また降着円盤直上の光帆船ニアサーファーの場合,ニアサーファーはある浮遊高度を挟んで上下方向に調和振動的な運動をする.動径方向に対してセール面が傾いているインクラインドサーファーについても簡単に議論する.
 
1.光の力
 
 光の力は偉大です,なんていうとどっかの新興宗教みたいで少しアヤシイ感じがしますが,ここでいってるのは,光子あるいは光子の奔流である輻射の力のことです.人力や金力や重力に縛られた日常の世界では光の力はあまりわかりませんが,宇宙では光−輻射−はあちこちの場面でその力を誇示しています.たとえば,太陽の光圧−輻射圧−によって吹き飛ばされた彗星の塵の尾.観測される星の質量に上限(太陽質量の100倍程度)があるのは,あまりに質量が大きくなると,輻射圧が重力を上回って,まとまった星として存在することができなくなるためだと考えられています.宇宙の大噴水である宇宙ジェットの中には,光圧で吹き飛ばされているものもあるようです.活動銀河の中心核領域では,中心からの強烈な輻射の圧力によって,星間雲さえ吹き飛ばされている可能性があります.銀河のもととなる揺らぎが形成された時代には,宇宙のあらゆる場所で輻射が物質と同じ勢力をもっていました.
 宇宙において,かくも偉大な光の力は,当然……あまり必然性のない当然でしたが……宇宙航行にも利用されます.太陽からの光圧を利用して帆走する宇宙のヨット<ソーラーセール>(クラークの『太陽からの風』が超有名でしょう.生物ヴァージョンである堀さんのトリニティ,その後はどうしてるのかなぁ).太陽系内に設置されたレーザー光線発射装置からの強烈なレーザーで推進される<ライトセール>(フォワードの『ロシュワールド』のレーザー推進船プロメテウス)(注1).そして,高度宇宙文明が発展させている……かもしれない……降着円盤系からの光帆船【フォトンサーファー】(注2).
 今回は,銀河中心核文明(降着円盤文明)に関する考察の(一応の)最後として,降着円盤系から放射される強烈な光の流れに乗ってサーフィンをする光帆船について考えてみたいと思います(図1).なお本稿の議論では,その1(福江1994a,1995a)およびその2(福江1994b,1995b)の結果を用います.また,ソーラーセールやライトセールになじみのない方は,最近出版された『ソーラーセイル』が好著でした.
……………注1:本稿では,ソーラーセール(太陽帆船)は太陽光のみを利用して帆走する船を意味するのに対し,ライトセール(光帆船)は,レーザー推進船なども含め,より広い意味で使っています.
……………注2:これも何という名前がいいんでしょうね.ディスクセール(CDのバーゲンみたい);ライトサーファー(光剣に似ている);フォトンサーファー(ここらへんかな,フォトンフローターとの釣り合いもいいし).
 
2.ソーラーセールの科学
 
 降着円盤系のセールを考える前に,太陽系内の空間に置かれたセール<ソーラーセール>の力学を復習しておこう.前回(その2)考察したサンフックと同じく,ソーラーセールには,太陽からの重力と輻射圧が働く.サンフックでは重力と輻射圧が相殺する条件を調べたが,相殺しない場合にはセールは静止できないので運動をはじめる.それがソーラーセイル(太陽帆)/ライトセール(光帆)である.
 
2.1.ラジアルセール
 まず一番単純な場合として,図2上のように,太陽の方向に対してセールの面を垂直に配置する(傾ける場合は次節で考える).太陽の質量をM,光度をLとする.またソーラーセールの総質量をm(セールの質量m+ペイロードの質量m),セールの断面積をS,セールの物質のアルベド(反射能)をA(0が完全吸収,1が完全反射)とする.さらに太陽とセールの距離をrとする.
 前回(その2)の結果より,セールに働く加速度(単位質量当りの力)は,
     GM        Sf
 a=− −− + (1+A)−−  (1)
     r         mc
である(右辺第1項が重力加速度,第2項が輻射圧).太陽(光度L)から距離rでの輻射流束fは,
    L
 f=−−−             (2)
   4πr
と表されるので,加速度aは,結局,
   GM         LS
 a=−−[−1+(1+A)−−−−−−] (3)
    r       4πcGMm
と表される.右辺[]内の第2項は,重力に対する輻射圧の割合を示しているが,距離rに依存しない.天文の業界の慣例にしたがって,これを
          LS
 Γ=(1+A)−−−−−−    (4)
        4πcGMm
と置けば,上の(3)式は,
   GM(Γ−1)
 a=−−−−−−−         (5)
      r     
となる(ソーラーセールの場合は,このΓをライトネス数と呼ぶそうだ).重力と輻射圧が釣り合っているサンフックでは,Γ=1の場合を考えたわけだが,一般(Γ≠1)には運動方程式を解かなければならない.
 上の加速度aを用いると,動径方向の運動方程式は,
 dr  GM(Γ−1)
 −− =−−−−−−−       (6)
 dt    r     
となる.これは中心対称な重力場中の自由落下の式と形式的には同じである.
 上の運動方程式を時間に関して1回積分すると,いわゆる中間積分(エネルギー積分)が得られる:
 1 dr     GM(Γ−1)
 −(−−)=− −−−−−−−+積分定数
 2 dt        r     
時刻t=0で距離r=rから速度dr/dt=0で出発したという初期条件を与えて積分定数を決めると,動径速度dr/dt=vは,結局,
 v  GM(Γ−1)   GM(Γ−1)
 − =−−−−−−− − −−−−−−−
 2     r         r 
    GM(Γ−1)     r
   =−−−−−−−[1 − −−](7)
       r        r     となる.輻射圧が重力より大きい場合(Γ>1),セールは次第に加速され,十分遠方(r>>r)では一定の終末速度:
 v∞=√2GM(Γ−1)/r    (8)
に近づく(図2下参照).
 
2.2.インクラインドセール
 つぎに,一般的な場合として,動径方向に対してセール面が傾いている場合を考えよう(図3).このときには,太陽光の反射によって斜め方向の力を受けるので,セールが受けるネットな力には,動径方向の成分以外に回転角方向の成分が存在し,その結果,角運動量の授受が生じる.
 運動方程式を書き表すための座標系として,図3のように,セールの位置の直角座標を(x,y),極座標を(r,θ)とする.またセールの軸がx方向となす角度をψとする.そのとき,その他の角度については,光の入射方向(太陽の方向,動径方向)とセールの軸のなす角度をαとすると,
 α=ψ−θ            (9)
となり,動径方向とセール面のなす角度βは,
 β=π/2−α          (10)
である(さきのラジアルセールの場合はα=0).
 他の記号については,ラジアルセールと同様に,太陽の質量をM,光度をL,セールの総質量をm,セールの断面積をSとする.力の計算を簡単にするために,セールの物質のアルベド(反射能)Aは1とする.
 さて,まずセールの面に垂直方向に働く力を求めよう.セールの面を動径方向に垂直に置いた場合(ラジアルセール),セールに働く単位質量当りの輻射圧は,(1)式にもあったように,
  Sf
 2−−
  mc
である(A=1とした).ここで輻射流束fはf=L/4πrである.セールを傾けたために,光のあたる有効面積は,SでなくScosαとなる.また力の垂直方向の成分は,fcosαである.結局,セール面に垂直方向の(単位質量当りの)力は,
  Scosα fcosα
 2−−−−−−−
   m   c
である.
 つぎにセールの運動方程式を極座標(r,θ)で表してみよう.そのために,まず,上の加速度の大きさを用いて,直角座標(x,y)での加速度の成分(a,a)を表すと,x方向y方向それぞれについて,
      GM   Sf
 a=− −−x+2−−cosαcosψ (11x)
      r    mc
      GM   Sf
 a=− −−y+2−−cosαsinψ (11y)
      r    mc
と表される(輻射圧のx方向の成分にはcosψ,y方向の成分にはsinψがかかる).これらを,
 a= acosθ+asinθ     (12r)
 a=−asinθ+acosθ     (12θ)
を用いて,極座標での加速度の成分(a,a)に変換する.すなわち,
    GM  Sf
 a=−−+2−cosα(cosψcosθ+sinψsinθ)
     r mc
     GM  Sf
   =−−−+2−−cosα    (13r)
     r   mc
       Sf
 a= +2−cosα(−cosψsinθ+sinψcosθ)
      mc
       Sf
   = +2−−cosαsinα    (13θ)
       mc
と変換される.なおここで,
cosα=cos(ψ-θ)=cosψcosθ+sinψsinθ (14a)
sinα=sin(ψ-θ)=sinψcosθ-cosψsinθ (14b)
を用いた.
 上の(13)式に,f=L/4πrを代入して整理すると,結局,極座標での加速度として,
    GM    S  L
 a=−−[−1+−−−−−−cosα](15r)
    r    m2πcGM
    GM S  L
 a=−−[−−−−−−cosαsinα](15θ)
    r m2πcGM
が得られる.
 さらに,ラジアルセールのときのように,重力に対する輻射圧の割合を
     LS
 Γ=−−−−−−        (16)
   2πcGMm
と置けば(いまはA=1),上の(15)式は,
   GM     
 a=−−[Γcosα−1]     (17r)
    r
   GM  
 a=−−[Γcosαsinα]   (17θ)
    r  
となる.
 この加速度の表式をみたらわかるように,r方向については,(cosαがかかっていることを別にして)基本的にはさきのラジアルセールと同じで,重力加速度の項と輻射圧の項がある.しかし,重要な点は,θ方向については,輻射圧の寄与しかないことである.そしてsinαがプラスなら(θ方向に)加速されるし(角運動量を得る),マイナスなら減速される(角運動量を失う).
 これらの加速度の表式を用いて,極座標で運動方程式を書き下すと,
    dr   dθ   GM     
 a=− −r(−−)=−[Γcosα-1](18r)
    dt   dt  r      
    1d  dθ  GM  
 a=-−(r−−)=−[Γcosαsinα](18θ)
    rdt  dt  r  
である.また極座標で表した速度成分は,
    dr
 v=−−     (19r)
    dt
     dθ
 v=r−−    (19θ)
     dt
である.
 上の運動方程式を適当な初期条件を与えて数値積分すれば,斜めに置いたセール<インクラインドセール>の軌道などが求まる(数値積分では,初期半径やGMなどを使って無次元化する).パラメータは,
   Γとα
である.どちらも一定である必要はないが(Γはセールの面積Sを変えれば変わるし,αは傾きを変えれば変わる),以下の計算では,簡単のために一定とした.
 具体的な計算例を図4に示す.パラメータは,図4上がΓ=1(α=10°,30°,45°),図4下がα=30°(Γ=10,2,1,.5)である.初期条件は,t=0で,
 r=1, θ=0, v=0, v=0
である.
 Γが大きいと(すなわち輻射圧が優勢だと)セールは動径方向に飛んでいくが,面白いのは,Γが1あるいは1より小さくてもセールが落下せずに飛んでいくことである.これは,(もちろんαによるのだが),上でも触れたように,sinαがプラスだと,輻射圧によって回転角方向に駆動され角運動量を得るためである.
 図5に,セールの半径r,動径速度v,そして角運動量L=rvを時間の関数として示してみた.図5上は,Γ=10,α=30°の場合,図5下はΓ=1,α=30°の場合である.実際,角運動量Lが増加しているのがわかるだろう.
 
 以上は,一番単純な場合のソーラーセールのに関する話だが,地球周回軌道から出発する場合については,『ソーラーセイル』や『宇宙の旅』を参照していただきたい.またレーザー推進船については『SFを科学する』で考察してある.
 
3.フォトンサーファーの科学
 
 さていよいよ,降着円盤の輻射圧で駆動されるライトセール【フォトンサーファー】の考察に移りたい(図1).といっても,基本的な部分はすでに2節のソーラーセールに関する考察ですんでいるが.以下,前回(その2)のフォトンフローターの場合に対応して,いくつかの代表的な場合を考えていこう.
 
3.1.ラジアルサーファー
 最初は単純な場合として,セールの面が傾いてないとする.降着円盤中心の天体の質量をM,降着円盤の光度をL,ソーラーセールの総質量をm,セールの断面積をS,セールの物質のアルベドをAとする.
 
3.1.1.ファーサーファー:降着円盤から離れている場合
 まずフォトンサーファーが降着円盤から十分遠方にある場合−【ファーサーファー】−を考えてみよう(図6).図6に示したように,ファーサーファーの(降着円盤の中心から測った)距離をr,(降着円盤の回転軸から測った)角度をiとし,上で述べたように,簡単のためにセールは,降着円盤からの光束を正面から受けるように,中心方向に向けて垂直に置く.このとき,前回(その2)の解析結果より,ファーサーファーのセールが受ける加速度は,
   GM       SLcosi
 a=−−[−1+(1+A)−−−−−−](21)
   r       2πcGMm
である.やはり前回述べたことだが,ある特定の角度iで加速度aが0になる.すなわち,
        1  m 2πcGM
 cosi=−−−−−− −−−−−  (22)
     (1+A)S   L
で決まる臨界浮遊角度iでは,重力と輻射圧が釣り合って,セールは浮遊する.しかし,図6に示したように,この臨界浮遊角度iより小さな角度領域では輻射圧の方が強くてファーサーファーは吹き飛ばされ,iより大きな角度領域では重力の方が強くてファーサーファーは落下する.
 具体的な運動の仕方は,ソーラーセールでのラジアルセールの場合と同じなので,ここでは省略する.
 
3.1.2.ニアサーファー:降着円盤の表面近くにある場合
 ファーサーファーとは反対に,降着円盤版ライトセールである<フォトンサーファー>が,降着円盤の表面近くにある場合−【ニアサーファー】−はどうなるだろうか(図7).降着円盤の回転軸をz軸とする円筒座標系で,ファーサーファーの半径をr,高度をz,降着円盤の中心からの距離をR(=√r+z)とする.
 さてセールが回転していて重力のr方向の成分が遠心力で打ち消されていれば(その2でいうニアフローターT),サーファーの鉛直方向の運動だけ考えればよい.このとき前回(その2)の結果より,サーファーが受ける鉛直方向の加速度は,
    GM         3MS
 a=−−[−z+(1+A)−−−−](23)
    r         8πcm
である.ただしここでMは質量降着率とする.
 この場合も,先の臨界浮遊角度と似て,
         3MS
 z=(1+A)−−−−     (24)
         8πcm
で決まるある特定の高度−浮遊高度z−でのみ,セールに働く鉛直方向の重力と,セールを持ち上げる鉛直方向の輻射圧が釣り合う.
 前回(その2)述べたように,この浮遊高度zは安定な平衡点である.したがって,ニアサーファーはこの浮遊高度を挟んで上下方向に,調和振動的な運動をすることになる(図7).すなわち降着円盤のごく表面近くからスタートしたニアサーファーは,輻射圧に押されて上昇するが,浮遊高度zを超えると重力のz成分の方が輻射圧より強くなるので減速され,やがて上昇はストップする.そして降着円盤に向かって落下を始めるが,浮遊高度zより降着円盤に近づくとこんどは輻射圧の方が強くなって落下が止まり,ふたたび上昇に転じるのである.
 以上のようなニアサーファーの振舞いは,円盤面に近いという大前提があるので,S/mが十分大きくて浮遊高度が高くなれば(z>>rになれば),調和振動はせずに,サーファーは吹き飛ばされるはずである.
 
3.2.インクラインドサーファー
 つぎに,一般的な場合として,動径方向に対してセール面が傾いている場合を考えよう(図8).ただし簡単のために,セールは降着円盤から十分離れているとする(ファーサーファー).
 ソーラーセール(インクラインド)の結果と,ファーサーファーの結果を用いると,セールに働く加速度の極座標成分は,
     GM  Sf
 a=− −−+2−−cosα
      r   mc
      GM  S L
   =− −−+2−−−−−−cosαcosi
      r   m2πcr
    GM   S L
   =−[-1+−−−cosα|sinθ|](25r)
    r  mπcGM
        Sf
 a=   +2−−cosαsinα
        mc
         S L
   =   +2−−−−−−cosαsinαcosi
        m2πcr
    GM S L
   =−[−−−cosαsinα|sinθ|](25θ)
    r mπcGM
と表される.ただしここで,
 cosi=|sinθ|       (26)
を用いた.
 さらに,降着円盤の場合における,重力に対する輻射圧の割合を表すパラメータを,
     L
 Γ=−−−−−        (27)
    πcGMm
と置けば(いまはA=1),極座標で表した運動方程式として,最終的に,
    dr  dθ  GM     
 a=− -r(−−)=−[Γcosα|sinθ|-1]
   dt  dt  r      
                 (18r)
    1 d  dθ  GM  
 a=−−(r−−)=−[Γcosαsinα|sinθ|]
    rdt  dt  r  
                 (18θ)
が得られる.
 パラメータは太陽のまわりの<インクラインドセール>と同じく
   Γとα
で,以下の計算では,簡単のために一定とした.具体的な計算例を図9に示す.破線が降着円盤の赤道面の方向を表す.
 パラメータの値は,図9上がΓ=1,α=30°で,図9下がΓ=2,α=30°である.また計算の初期条件は,t=0で,
 r=1, θ=θ(図中に表記),
 v=0, v=0
である.
 降着円盤からの輻射量が,cosi=|sinθ|に依存するため,比Γや傾き角αだけでなく,スタート宙点の方向θによっても軌道が変化する.降着円盤周辺のライトセール<フォトンサーファー>を操るのは,ソーラーセールよりさらに高度な技術を要しそうである.
   ・・・
 以上,降着円盤系におけるライトセールの運動について簡単な考察を行ってみた.あまりいろいろなパラメータは試していないが,Γやαやθの組合せによってはいろいろ変わった軌道が得られるのではないかと思う.またここでは輻射圧によるセーリング(フォトンサーフィング)だけを考慮したが,それ以外にも,降着円盤中心領域から吹き出すプラズマジェットに乗る【ジェットサーファイング】や,降着円盤を貫いて存在する可能性のある大局的な磁場で駆動される【マグネティックサーフィング】などが考えられるのではないだろうか? 今後の研究を待ちたい.
   ・・・
 本稿は,ハードSF研究所公報(非公開)に掲載された文章を書き直したものです(福江1994c).月報掲載にあたっては,編集理事の田代 信さんにとくに感謝したいと思います(別件ですが,おめでとう>半田利弘さん).
 
         参考文献
 
A・C・クラーク,1972,『太陽からの風』早川SF文庫
堀晃『太陽風交点』徳間書店
ロバート・L・フォワード,1984,『ロシュワールド』早川SF文庫
福江 純,1994a,HSFL公報,54,5
福江 純,1994b,HSFL公報,55,9
福江 純,1995a,天文月報,**,**
福江 純,1995b,天文月報,**,**
三浦公亮・長友信人,1993,『ソーラーセイル』丸善
福江 純・藤原隆男・岡田理佳,1992,『宇宙の旅』アスキー
石原藤夫・福江 純,1987,『SFを科学する』講談社
福江 純,1994c,HSFL公報,56,13
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
    Accretion Disk Civilization 3:
   From Solar Sail to Photon Surfer
 
         Jun FUKUE
 
Astronomical Institute, Osaka Kyoiku University, Kashiwara, Osaka 543
 
Abstract:
Similar to the solar sail driven by the
sunlight pressure or the laser-driven
spaceship via the laser-light pressure,
it is possible the light sailing by means
of the intense radiation pressure from an
accretion disk at an active galactic nuclei.
We invesitigate the orbital dynamics of
such a PHOTON SURFER.
In the case of the FAR-SURFER,
which is located far from the disk,
the sail is blown off by the radiation
pressure when the inclination angle of the
sail's position is smaller than the
critical floating angle, and vice versa.
In the case of the NEAR-SURFER,
which is located very close to the disk,
on the other hand,
the sail moves up and down around the
critial floating height,
which is proved to be dynamically stable.
The INCLINED-SURFER is also briefly
discussed.