特異連星SS433のアニメーション

1997年度 卒業研究 年吉雅美

特異連星SS433は,宇宙ジェットのプロトタイプとして有名な天体です. SS433は,高温の伴星とコンパクト星からなる近接連星で, コンパクト星のまわりには降着円盤が形成されていますが, その中心付近から,光速の26%もの速度で, 2方向へプラズマガスの噴流−宇宙ジェット−が吹き出ているのです.
SS433の中心のコンパクト星はブラックホールなのか中性子星なのか, 周辺の降着円盤の形状はどうなっているのか, ジェットの運動はどうなっているのか, ジェットはどうやって形成されたのか, などなど,SS433には多くの謎が残されています.

左:特異連星SS433(大阪教育大学)

SS433の要素
可視光天体(伴星)早期型星/V=14
距離約5kpc
連星周期13.082日
視線速度振幅約112 km/s
質量関数約2.0太陽質量
歳差周期162.5日
歳差角19°

SS433のアニメーション
特異連星SS433は,比較的表面温度の高い星(赤い方)と, コンパクト星(ブラックホールか中性子星) +周辺のガス降着円盤(青い方)が, 共通重心のまわりを約13日の周期で公転しています. 相手の星を隠す食現象が観測されていて, 明るさの変化の様子から,降着円盤のサイズが比較的大きいことや, 降着円盤が薄っぺらなものではなくある程度の厚みがあること, などが推測されています. 降着円盤は周辺部では温度が低いのですが, 中心に近づくにつれ温度が高くなっていて, コンパクト星の近傍では (コンパクト星は図のスケールでは見えません), ガスの温度は数千万度もの高温となっています.
SS433がユニークなのは, コンパクト星の周辺からジェットが噴出していることですが (図ではジェットは示してありません), さらに変わっているのは,そのジェットが,約163日ほどの周期で, コマのように歳差運動を行っている点です. ジェットの歳差運動の原因は, ジェットが吹き出している降着円盤自身が, 同じ163日の周期で歳差運動しているためだと考えられています. アニメーションでは, 青い降着円盤と赤い伴星が公転運動をすると同時に, 青い降着円盤がゆっくり歳差運動しているのに注目して下さい.


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