今週は極端にミーティング(飲み会)の多い週だった.
まずは8/28から8/30まで2泊3日であった研究室のゼミ合宿から始まって,
8/31の某ヨコヲ大先生の還暦パーティの打ち合わせ会議@寺田町,
9/2の天文教育用ソフトの最終打ち合わせ+打ち上げ@阪大豊中,
9/3の某ヨコヲ大先生の還暦記念誌の編集会議@北白川,
そして締めくくりが,
9/4の宇宙作家クラブの大阪例会である. 4時の待ち合わせに少し遅れてヒルトンに着いたときには, すでに,野尻抱介さん,小林泰三さん,草上 仁さんがおられて, そのまま喫茶大都へ. まもなく,菊池 誠さん,田中啓文さん合流. 6時ごろに場所をビアホールのニュートーキョーに移して, 北野勇作さんと田中哲弥さんが合流して, そこで9時ごろまで気炎を上げていたようだ. 草上さんが写真を撮っておられた. 菊池さん,草上さん,ぼくは2次会までで帰ったけど, 3次会はどーなったんだろう? さて,いろいろタメになる話とか, SACのオフィシャルな話もあったのだが, 覚えているのは・・・
賞金が5000円とか8000円とかの何とか賞をもらって,
受賞するために,自腹で東京まで行ったという話.
←うーむ,なかなかつらそうだ,それは.
会合の雑談だけでは説明不足だった話について少し補足: ■ブラックホールエンジンの効率 <量子ブラックホールを使った平衡型質量エネルギー変換器> については,前回のミーティングの後に, 小林さんが詳しいアップをしているが, そのときの宿題などを含めて,簡単なおさらい+α.
問題設定:
ブラックホールの質量変化と光度の式:
t:時間[s] とおく.すると,
(1)ブラックホールの質量の時間変化:
(2)ブラックホールエンジンの光度: が成り立つ. 上の(1)式の右辺の第1項は 放射エネルギーなどで逃げずにブラックホールに吸い込まれる物質量で, 第2項はホーキング放射で逃げるエネルギーの等価物質量である. (2)式の右辺の第1項は 物質エネルギーの放射エネルギーに変換されたもので, 第2項はホーキング放射である.
もしブラックホールの質量が増えも減りもしないという,
定常性を仮定すると,(1)の式から,
L=Nc2 が得られる. つまり, 重力エネルギーが変換するにせよ, ホーキング放射で放射されるにせよ, その割合はともかく, ブラックホールに注ぎ込んだ物質量の分だけ, そのまま外界に放出されることになる. まぁ,ブラックホールの質量が変化しない条件なので, 考えて見れば,至極当たり前の話だ. もっとも,ブラックホールエンジンを定常的に運転するのは, 小林さんが指摘しているように, なかなか微妙な制御が必要だし, ホーキング放射がバーストする危険も伴い, 取り扱いがメンドウである. だから,いっそ,定常的な運転にはこだわらずに, 物質をばかすか注ぎ込んだ方がいいかもしれない. また実際,よっぽどブラックホールの質量が小さくない限り, 一般的な状況では, ホーキング放射に伴う質量の減少分, すなわち(1)式の右辺の第2項は, 第1項の注ぎ込んだ質量分に比べて無視できる (あるいはホーキング放射Lh<<光度Lと同値). では,ブラックホールに物質をどんどん注いだときはどうなるか? どっちみち,ブラックホールは, 注ぎ込まれた物質全部は食いきれない. すなわち,注ぎ込んだ物質の重力エネルギー解放によって, ブラックホール周辺は光り輝くのだが, その放射圧がブラックホールの重力と釣り合った段階で, それ以上は注ぎ込めなくなる. この限界は,天文学ではよく知られている エディントン光度と呼ばれるモノになる. エディントン光度とそのときの質量降着率は,
G:万有引力定数 L=LE=4πcGM/κ N=LE/c2=4πGM/κc である. ブラックホールの質量を1015gとして, 具体的に数値を入れると, L=LE=6.3×1019erg/s N=LE/c2=0.070g/s となる. エディントン光度もそのときの質量降着率も, 共にブラックホールの質量に比例するので, ブラックホールの質量が違う場合を求めるのは簡単だろう. 面白いのは,ブラックホールに物質をどんどん注ぎ込んで, ブラックホールが物質を消化できる限界で食わせてやったとき, ブラックホールの質量の増加のタイムスケールは, 最初の質量によらずに一定になることだ. すなわち, τ:ブラックホールの質量増加のタイムスケール[s] とすると, τはブラックホールの質量Mを質量降着率Nで割れば求まり, τ=M/N=Mc2/LE=κc/4πG となるが,(質量降着率がMに比例するので), 質量Mはちょうどキャンセルして,τはMによらない. 具体的な数値としては, τ=4.5×108年 となる. (ただし,効率を考慮すると,この値の10分の1ぐらいが妥当). すなわち,ブラックホールエンジンは, 限界まで食わしてやって運転すると, だいたい5億年(効率を0.1とすると約5千万年)で, その質量が倍加するので,状態が変わるだろう. 言い換えれば,その間ぐらいは, ほぼ定常に近い運転ができる. ■ブラックホールエンジンの保持 これは上の話題のスピンオフ.
ブラックホールエンジンは,
クラークの『地球帝国』やニーヴンの
<ノウンスペース>シリーズで使われたが,
宇宙船の中などでエンジンを保持する方法としては,
しばしばブラックホールを帯電させ,
電磁気的に保持していたと思う. しかし,そこらへんを解決する糸口になる論文を最近見つけた.
"Vacuum Breakdown Near a Black Hole Charged by
Hypercritical Accretion" である. これはタイトルの通りに, ブラックホールに物質をどんどん注いだときに, 真空の破れを扱ったものだが, その一部を転用できそうだ. ブラックホールに物質をどんどん注ぎ込むと, 上で述べたように,物質の重力エネルギーが解放されて, ブラックホール周辺が輝き出す. あまりに強い放射圧のために, 物質は外向きの放射圧を受ける. ここまでは上の話と同じだ. ところで,物質が受ける放射圧を成分ごとに見てみると, 一番簡単な陽子と電子からできた水素のプラズマガスとして, 陽子も電子も放射圧を受けるわけだが, 質量が約2000倍違うので,放射圧の受け方が異なる. すなわち,陽子よりも電子の方が圧倒的に軽いので, 電子の方が放射圧の影響を強く受け, 一方,質量の重い陽子は影響を受けにくいので, 電子より陽子の方が落ちやすくなり, 結果として,労せずしてブラックホールは正に帯電するのだ. ようするに, エディントン限界で運転しているブラックホールエンジンは, 自動的に正に帯電するので, その保持も容易なのである. うーむ,まぁ,長年の疑問は解決しそうだが, この保持方法はぼくも考えついてしかるべきだったし, 何年か前にクレッグ・ホィーラー (『ブラックホールを破壊せよ』) とも似た方法を議論したことがあるだけに, それを思うと気持ちは複雑. ちなみに,ホィーラーと議論したのは, 降着円盤の強い輻射場によって, 降着円盤からのプラズマ風が吹くのだが, その際,電子と陽子が選択的に放射圧を受け, 電子の方が陽子より早く飛ばされるので, 降着円盤風の中に電流が流れるというような話だった. 上のブラックホールエンジンを保持するときも, 現象的には,周囲からブラックホールへ向けて, 正の電流が流れている状態になるはずだ. だから保持を完全にするためには, 電流回路を閉じる方策を施しておかなければならないだろう. ■死に方アラカルト こちらの報告は他の方にまかせるけど, やっぱりゲロ窒息はイヤだなぁ. あ,でもいろいろな死に方が議論されたけど, そういえば,宇宙の腹上死って死に方もあるが, これは議論に出なかったなぁ. どうなるんだろう?? しかしまぁオボロゲに思い出してみると, ビアホールのど真ん中で, ウルトラマンの話ぐらいならまだともかく, ***は+++とか,×××は○○○とか, とても書けないことを, 大のオトナが声高に“議論”したような気がする. ああ,堕ちていく. |