2000年
天文天体物理若手夏の学校
天文学と社会分科会
ネットインタビュー
2000/07/07


>福江先生

>お久しぶりです。お元気でしょうか?

まぁ、ぼちぼちやってます。
今晩も一日早い七夕コンパで、カレー大会です。

>まの@愛媛です。
>私はなんとか、元気にやっています。(^^)

ほう;そっちでエエ男はみつかりましたか?
#ちいと、小耳にはさんだりして(笑)

>
>さて、7月8日のサイパーの集まりで先生に
>久しぶりにお会いできるので、楽しみにしています。
>それで、以前夏の学校の天社の講演依頼をしたときに
>先生がインタビューなら聞いてもいい、とおっしゃっていた
>のに甘えて、少しだけお話が聞きたいと思っています。

夏の学校は、せっかくの招待に応えられなくて申し訳ない。
予想通り『宇宙スペクトル博物館:電波編』がすでに押し気味で、
8月は火の車どころか火ダルマ状態になりそうや。
#ぼくの夏休みを返せーーー

んじゃ、とりあえず、以下はインタビュー風に答えましょう。

>
>大教に一度ゆっくりお話しに行ければいいのですが、
>もう忙しくて、休みが取れません。
>それで、今度のサイパーの集まりのときに
>少しお話が出来れば、と思います。
>せっかくの集まりのときに申し訳ありませんが、
>どうかよろしくお願いいたします。

そうやね。
8日は、ぼくも30分ぐらい早めに行くつもりやから、
なんなら、開始前でも聞いてくれたらええわ。
#ゆーとくけど、飲み会に入ったら、まず無理やで

>
>一応、お聞きしたい内容を事前に送らせていただきます。
>もし、メールでお答えいただけるのなら、
>それでもいいです。
>8日に行ったときにいろいろ話ながらお聞きしようとは思っていますが。
>何かご不明な点がありましたら、是非お教え下さい。

当たり前じゃ、ドアホ!!
具体的な数字とか、その場でわかるはずないわ。
事前に送らいで、どーするんじゃ、ボケぇ!!!

>
>せっかくのサイパーの集まりで、別の話に少々お時間を
>いただくことになってしまいますが、
>どうかお許しください。

ふーん、えらい殊勝な言葉やな。
らしゅうないけど、まあええ。

>なるべく時間はかからないようにいたします。
>
>では、どうかよろしくお願いいたします。
>
>----------------------------------------------
>
>3以外には、できるだけ具体的な数字を出してお答えください。
>

りょーかい。

Q1.先生が天文に関する情報発信(教育、普及も含む)に費やす時間についてお教え下さい。
Q1(1)啓蒙書(一冊)を執筆されるのにかかる時間
そやな、時間は本によっても違うんやけど、

書籍:1日〜2日/週 × 3ヶ月〜6ヶ月

ぐらいかなぁ。 でも、編集者の人が熱心でいろいろコメントをもらうこともあるし、 いろいろな事情で2年ぐらい寝かせるときもあるから、 そういうときは、何度も書き直しをするけどね。
そういえば、昔、岩波から出した『ぼくだってアインシュタイン(全4巻)』は、 分量的には4巻で普通の啓蒙書一冊分ぐらいやったから、 (啓蒙書ほど楽とは思わんまでも)、 少しは楽かと思っていたけど、ぜんぜん。 1巻1巻が、啓蒙書一冊分ぐらい大変やった。 子供向けの本は、チャレンジャブルやで。
あ、それから、念のために書いとくけど、 上の数字は現在の数字やで。 ブルーバックスで最初に書いた本『SFを科学する』とか『降着円盤への招待』は、 一年かそれ以上はかかったよ。

Q1(2)雑誌の原稿(一部)を執筆されるのにかかる時間
これも原稿の長さによるけど、だいたい、

雑誌:数日〜1週間

ぐらいかな。 とりあえずは、数日かけてラフな下書きをして、 その後は、締めきりまでときどき手直し(推敲)というのが常套パターンや。 締めきりは必ず守ってるで。 雑誌の原稿は、時間が限られているし、 出した後はあまり書き直しはないね。 校正も即返しが多いから忙しいよ。
このインタビューの回答も、昼間ざっと書いてから、 いま(真夜中)手直ししてるで。 12時までには送らんとな。
ちなみに、雑誌の原稿も、 一番最初に『天文月報』で降着円盤の記事を書いたときは、 数ヶ月かかって書いたで。

Q1(3)教育用CD−ROM(一作品)を制作または監修されるのにかかる時間
あはは、これまたケースバイケースで難しい。
そうやな、具体的には、まのちゃんも知ってるけど、いま、5人で制作している、 マルチメディアソフト『宇宙スペクトル博物館<電波編>宇宙が奏でるハーモニー』 ちゅうのがあって、これの脱稿が8月末だもんで、 6月ぐらいから制作が山にさしかかりつつあるんやけど、

制作:2日〜3日/週 × 6ヶ月〜1年

ぐらいかなぁ。 最初にも書いたけど、8月に入ったら、もっと時間喰うやろう。
それから、監修の場合は、 日本天文学会の天文教材委員会(委員が5,6人)の関係で、ときどきあるんやけど、 ちょうど、いまも『太陽系大紀行』ちゅうソフトを一つやってるんやけど、 ピーク時には、

監修:メール100通/週

ぐらいは飛び交うな。

Q1(4)講演(一つ)にかかる時間
これは準備に、ちゅうことやね。 講演自体は、往復の時間+1,2時間やし。 そうやなぁ、新しい講演ネタを準備するのに、数時間で済んだこともあるし、 ゴールデンウイークをぶっつぶしたこともあるから、

講演:数時間〜数週間

ってとこかな。 もっとも、数週間かけて作ったコンテンツは、 さすがに一回こっきりじゃなくて、 その年一年の分は、数回は使い回したけどね。
まのちゃんも、講演の依頼したり依頼されたりするやろけど、 まだ手ぇ抜いたらアカンで。 10年早いワ。
あ、そうやな、これも思い出したけど、 最初に講演したんは、大阪市立科学館で、 黒田さんに頼まれたんやけど、まだ就職してへんかったときや。 はじめてやし、準備に一ヶ月くらいはかかったと思う。 でも、準備に時間かけたのに、 こっちも慣れてへんし、話しが難しすぎたと思うワ。 いまでも、人前で話す講演はキライやけどな。

Q1(5)先生が年間で執筆される啓蒙書(書籍)の数
ああ、これは数字がはっきり出せるな。この5年間では、

書籍:1/1999年,0/1998年,1/1997年,5/1996年,1/1995年

や。 その年に書いた本ではなくて、その年に出版された本ね。 教科書もちょっと混ざってると思う。 1996年が多いみたいにみえるけど、 たまたま寝かせてたのが出たり、共著があったりの結果や。 1年に5冊も書いた訳じゃないよ、そんなん、無理や。

Q1(6)先生が年間で執筆される雑誌原稿の数(雑誌の冊数)
これもこの5年間だと、

雑誌:11/1999年,5/1998年,6/1997年,14/1996年,17/1995年

ぐらいになるなぁ。 1996年と1997年が多いのは、そのころ月刊誌の連載を持ってたからや。 あれは、結構きつかったけど、2年ぐらい続いて、 ネタ切れになってやっと辞めさせてもらった(^^;

Q1(7)先生が年間に制作される教育用CD−ROMの数
一応、最近5年間に制作・監修したのは、

CD:1/1999年,0/1998年,2/1997年,1/1996年,0/1995年

やな。 でも、誤解のないようにゆうておくけど、 CD−ROMは、もちろん多人数で制作しているから、 上の数字は、あくまでぼくが(その一部に)関わったヤツやで。

Q1(8)先生が年間に行われる講演の数
うーんと、これもこの5年間では、

講演:5/1999年,8/1998年,3/1997年,1/1996年,4/1995年

ぐらいや。 そんなに多い方じゃないと思うよ、これは。

Q1(9)失礼かと思いますができれば、書籍、雑誌、CD−ROMに関して、 どれくらい売れたかお教え下さい。(金額で)
よう聞いてくれた、なんて言うか、ドアホ! 聞いてどーすんねん。 まぁ、毎年確定申告しとるから、隠す必要もないし、 一応、答えるけど。

まず、書籍はやなぁ、だいたい印税率が決まっていて、

印税=定価(たとえば1500円)×10%×出版部数(1000部から2000部ぐらいか)

や。 どれぐらいになるか、自分で計算してみ。 出版社によっては、印税率が少し低い場合もあるし、 出版部数でなくて、配本部数の場合もあるから、 実際には、もっと減ることもある。 献本(著者割引があるけど自腹よん)も数十冊単位でするしね。
具体的には、去年出た『活動する宇宙』(裳華房)の場合だと、 共著やったんやけど、印税で4万ぐらいはもろたかな。 飲みに一回行くぐらいやな。
昔、『SFアニメを天文する』(日本評論社)という本を出したときは、 もう印税いらんし、カラーページ増やしてくれ、ちゅうて、 趣味に徹したこともあった。 ラムちゃんの写真、たくさん使いたかったしな(爆)
あと、翻訳書だと印税率が5%ぐらいかな。 それから、監修だと、佐藤勝(彦)さんぐらいになると違うと思うが、 ぼくぐらいのレベルだと、10万やな。 ちなみに、印税は増刷の度に払われるけど、 監修料は一回ぽっきりや。

で、つぎが、何やて、雑誌か。 これも長さによるけど、まぁ、

雑誌:1万〜数万

ぐらいかな。 特集記事とかで長いと、一桁上がるけどね。

そいから、CD−ROMか。お笑いや。 うーんとね、日本天文学会で監修作業をした、 『STELLAR-LAB』とか『GALAXIUM』の場合は、

CD:タダ

天文教材委員会の仕事としてやってたからね。 もちろん、これらのソフトで印税は発生しているけど、 それはぜーんぶ学会の会計に入っているはず。
それから、去年出た、 粟野他『宇宙スペクトル博物館<X線編>見えない星空への招待』(裳華房) の場合だと、印税で、

CD:5万ぐらい

もろたかな。 少ないけど、一回分の飲み代ぐらい出たかと思うやろ。
甘いな。
打ち合わせの旅費・宿泊費や合宿やミーティングや何やかやで、 2,30万は持ち出しているから、ね。

ついでに、講演だと、

講演:数万

ぐらいやね。 これもエライ人や有名な人やと桁が違うけど、ぼくはこんぐらいや。

な、おそらく想像してたより、ぜんぜん儲からへんやろ。

Q2.先生が研究に費やされる時間をお教えください。
Q2(1)論文を一つ書き上げるのにかかる時間(研究時間を含む)
そうやなぁ、研究の種類にもよるし、一人か共同研究かにもよるけど、 一応、一つの区切りとして、

研究:3ヶ月(単独研究)〜1年(共同研究)

というのが目安やなぁ。 研究ゆうのもナマモノやから、あんまし時間かけてダラダラやっても中身腐るし、 理論研究は誰でも、だいたい上みたいなもんやなかろうか。
論文自体を書くのに必要な時間は、これは慣れやから、

論文:一週間

かな。 ただ、まとまって時間が取れないときは、 ちびちび書くこともあるから、もっと時間かかる。

Q2(2)研究会のプロシーディング(集録)を一つ書くのにかかる時間
最近の研究会は、事前に原稿を用意していって渡す、 あるいはOHPをそのままコピーする形式も増えているから、

集録:0〜数時間

というとこでしょう。

Q2(3)学会(研究会)発表にかかる時間(準備、交通を含む)
交通っちゅうのは、学会開催地に依存するわな。 せやし、準備でいうと、 学会発表前に論文が仕上がっている場合は図のコピーだけで済むけど、 まだ途中の場合はもう少し手間暇かかるから、

発表:1時間〜数時間

ぐらいです。
よー、学会で中途半端な発表するヤツがおるけど、あれはアカン。 完成度が低いのはさておき、 準備にばっかり時間がかかって無駄が多すぎるわけや。 学会までに論文が仕上がってりゃ、 少なくとも論文の構成ぐらいまでできてりゃ、 論文(の図)と発表準備とが一時に全部済むから効率がエエで。 これも別にぼくだけじゃなくて、ぼくの身近な理論屋は、 たいていそういう仕事の仕方をしてるよ。

Q2(4)先生が年間に書かれる論文の数
論文ちゅうのは、当然、レフリー付き雑誌やな。 この5年間の掲載数は、

論文:6/1999年,8/1998年,5/1997年,7/1996年,7/1995年

やな。 一年に一つぐらいは単著もあるけど、後は全部、 他大学の研究者や院生や、自分とこの院生・学生とかとの共著や。 もちろん、ファーストオーサーじゃないのも数えてあるよ。
ちなみに、 20代前半に論文書きはじめてから20年ぐらい経つけど、 レフリー付き雑誌に掲載された論文が80篇と少しやから、 少ない方じゃなかろう。 でもな、それで驚いたらアカンで。 ぼくの同期の谷口(東北大)なんか、去年やったか、 学会か研究会で会ったときに、つかつか寄ってきて、 “福江クン、ぼくは(論文が)100を超えたよ!”て、 わざわざエバリに来たし、 一つ先輩の柴田さん(京大)もとーに(100を)突破してるやろし、 そんなヤツらばっかりや。
えっ”! 量より質やろって?  ぐぐ、それを言われると(^^;
そやなぁ。 まぁ、論文は10回ぐらい引用されて、 それも自己引用じゃなくて他人から引用されて、 やっと少し読まれたかなってぐらいやろから、 そう思うと、ぼくの場合は、うーん、 10回ぐらい引用された論文に限ると、 10分の1ぐらいになるかなぁ;トホホ。

Q2(5)先生が年間書かれるプロシーディング(集録)の数
研究会の集録は、この5年間だと、

集録:1/1999年,5/1998年,10/1997年,6/1996年,5/1995年

やな。 1997年が多いんは、京都でIAUの総会があったからや。 これも、ぼく自身が発表したヤツだけじゃなくて、 共同研究も含めてや、当然やけど。
30代半ばまでは、研究会もぎょうさん出て集録もぎょうさん書いたけど、 最近は、メンドウやから、(研究会は)できるだけ減らしとる。 旅費だけ出て、参加できて、集録なし、ちゅうのがベストやな。

Q2(6)先生が年間に学会(研究会)で行なわれる研究発表の数
この5年間では、春季年会と秋季年会を合わせて、

発表:13/1999年,8/1998年,14/1997年,8/1996年,8/1995年

になるな。 筆頭発表者なのは、春と秋と合わせて2つか、追加の発表をしても3つぐらいで、 後は共同研究者のヤツや。

Q3.先生が、研究時間をさいてまでも天文情報を発信する理由は何でしょうか?
ああ、これなぁ。何でやろうな。 ま、その理由(の一部)は、前に、 『SF天文学入門』(裳華房)のあとがきに書いたから、 まず、それを引用しとこう。

−−−『SF天文学入門(上)』(裳華房)のあとがきより−−−

■ミーム・オブ・アストロノミー−おわりに

 本文では紹介できなかったが、ポール・プロイスのSFで『破局のシンメトリー』というやつがある。
 ストーリーのさわりだけ紹介すると、…アメリカと日本が共同でハワイに建設した、直径6kmの主リングをもつ粒子加速器TERACで、新粒子インサイド・クォークが発見される。そして、謎の爆発事件が起こったり、虚々実々の駆け引きがあったり、陰謀の影が浮かんだり、物語はサスペンスタッチで進んでいくのだ。ところどころヘンなとこもあるが、著者は日本人や日本文化にはかなり詳しいようで、研究所の建物に“朝永ホール”なんてのも出てくる。
 内容自体、とても面白いのだが、ぼくはとくに訳者あとがきの一節に感動した。米国イリノイ州のフェルミ国立加速器研究所に関して触れた部分で、
 “…余談にわたるが、1974年5月の開研式典(デディケイション)のとき、招かれてここを訪れた某上院議員が、「この高価な施設はアメリカの国防にどれほど役に立つのか?」という皮肉な質問(おきまりのパターンだが)をしたところ、ウィルスン所長は即座に、「何も。そのかわりこれは、アメリカを守る価値のある国とするために役に立つ」と答えたという。…”
   ・・・
 話は変わって、昨年(1995年)の夏に信州で開催された若手の天文学者の集まりで、大阪大学の池内了氏の講演を聴く機会があった。その話の中で、“よく天文学は何の役に立つのか、と言われるが、何の役にも立たなくていいのではないか。たとえば、芸術作品や音楽作品が何の役に立つのか聞く人はいない。なぜなら、それらは文化だからだ。天文学も人類の知的文化活動の所産であり、別に何らかの役に立つ必要はないんだ・・・”というような主旨のことを述べられていた。ぼく自身も、天文学の意義や存在理由については、いろいろ考えたり、あちこちでも書いてきたが、“天文学は文化だ”と一言で言い切られると、こりゃ目ウロコ状態ですな。
 ミーム・オブ・アストロノミーについて、この続きは、下巻で。

−−−『SF天文学入門(下)』(裳華房)のあとがきより−−−

■センス・オブ・ワンダー−おわりに

 本文などでも触れたが、1995年の夏に開催された若手天文学者の会合「天文・天体物理若手夏の学校」で講演をした。まず、そのときの内容をまとめた文章から少し引用させてもらいたい。

“■最後に:なぜこんな論文を書くのか?
 では最後に、なんでそんな論文書くねん、という質問に対する答えとして、理論研究の遂行上のポリシーというか、理論の「公理」をあげておく。
公理1 禁じられていない限り 何でもあり
 これは当たり前みたいだが、案外難しい。とくに経験を積み、また自分の手法が確立するほど、逆に、守備範囲が狭くなったりするものだ。いろいろな用事に追われると、さらに難しくなる。これを忘れないようにするため、宇宙はどーなってんだろう、宇宙はどーなってんだろう、宇宙はどーなってんだろう・・・といつもいつも考え続け、マインドコントロールするのは役に立つ。
公理2 ただし オモロイこと
 自分が面白くない研究は人も面白いと思ってくれない。これも当たり前なんだが、ときどき抜け落ちてしまうものでもある。SFではよく、“センス・オブ・ワンダー”というが、ようするに、ドキドキ、ワクワクすることをしたい。
公理3 そして 間違いを恐れない
 なーに、間違ったら、やり直せばいいのである。
     ・・・・・
 とにかく、楽しいから気持ちいいから、研究なんだ。映画でも音楽でも、面白かったモノは他人に伝え、面白さを共有したい。それが人情ってもんじゃなかろうか? 研究にしたって同じだ。
 気をラクーにして、みんなで研究を楽しんでいきたい、じゃないスか…何事も分かち合えば、楽しさ2倍、苦しさ半分。理解はエクスタシーである。”

 リチャード・ドーキンスという生物学者(動物行動学者)がいる。“利己的な遺伝子”の提唱者といえば、わかる人はわかるだろうか。彼は、自己複製し進化する生命と同じように、人間の文化も自己複製し(文化を伝える)進化するシステムであることを指摘した。そして生命の自己複製子である遺伝子(ジーン)に対応して、文化の自己複製子にミームという造語を当てた。
 そう、ミーム・オブ・アストロノミーとは、センス・オブ・ワンダーに満ちた天文学という文化を創造し伝達する自己複製子なのである。自分の動機が少し理解できたような気がする。

+++

うーん、なかなか言葉にしづらいモンがあるけど、 何となくわかってもらえるやろか? 

天文教育や普及で、ようある議論にな、
100億円もかけた観測装置で研究して国民の血税を使ってるから
とか
国家公務員は国から給料もらっているから
だから、
国民のみなさんに研究成果を還元しなさい!!
なんてのがあるんやけど。 実際、そう言うてる人、多いやろ。

でもな、ぼくはああいうのは昔からシックリきいへんねん。 まあ、すばるとか、たしかに金かかってるから、 表向きそういうのはエエけど。 せやけど、教育・普及なんて、義務でできることちゃうしな、 だいたい、そんなこと声高に言ってるヤツに限って、 そんなことしてへんやろ(笑)。
実際、ぼくの場合に限ってゆうたらな、 そんな高い装置使ってへんし、 給料分はちゃんと講義やゼミこなしてるし (たしかに講義とかしてへんスタッフもいるけどな)、 ようするに、税金分の仕事はちゃんとしてるわけや。 むしろ税金は取られ過ぎなんや。 印税はもちろん、ちょっとした原稿でも講演でも、 ぜーんぶ、最初から10%の税金が天引きされてんやで! あ、だんだんムカツイてきたやんか。 税務署のバカやろー!!
とにかくやな、言いたいことは、 大上段に理念を振りかざしてるわけじゃなくて、 おそらく、もっと感性的なことで、 こんなオモロイことがあるで、 ちゅうのを言いふらしたいわけや。 きっとそうやと思う。
せやし、本とか書いて、ぜんぜん儲からんでも、 見も知らん人とかから、“面白かったです”なんて感想をもらうと、 それだけで“書いてよかった♪”と思うわけや。 ずいぶん前に、熱海であったてんま衛星の研究会だったと思うけど、 若い院生が寄ってきて、 “『降着円盤への招待』を読んで、この道(天文学)へやってきたんです” ゆうてくれてな。 あの本は、若いとき書いてかなり堅かったから、 専門家ウケはしたんだけど、一般ウケはせーへんかったんで、 だから、そー言うてくれたときは報われた気がしたワ、ほんと。 もっとも、男の子やったから、名前は聞かんかったけどな。

でもなぁ、5年ほど前は夏の学校に行く余裕もあったんやなぁ。 40ごろにいったん仕事減らした筈なのに、 なんで最近またこんなに忙しいんやろ。 やっぱり、まのちゃんの先輩がアカンのかなぁ?
なぁ、何かオモロイことないか?


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