粘液濃胞摘出手術をする(2006/04/12)

京大病院で「粘液濃胞摘出手術」をした。 一言で言えば、口の中の唾液腺が詰まって、 良性の腫瘍ができたので、手術で切り取ったんだけど、 予想よりも痛くて大変だった。

最初に異常に気づいたのは、実は、3月末の学会より前である。 唇の右側の裏側あたりの(おそらく)唾液腺が少し膨れだしたのだ。 20年前(10年ぐらい前かと思っていたら、京大の記録では なんと20年前だったー)にも一度、同じあたりに濃胞ができて、 やはり京大病院で切除していた。
んなもんで、ああ、今回も似たようなもんができたなぁ、 しかも学会前のクソ忙しいときにぃ、 まぁ、仕方ない、学会後に病院に行こう。 てな感じで、ちょっと甘く見てたというか、 少しほったらかしにしていて、後で泣きをみたのだが。 一応、学会が終わって、3月のほんとの末に病院に行ったら、 手術予定が埋まっていて、しばらく予約が取れない。 結局、手術日は2週間も先になってしまい、 学会期間を含めて、3週間もほったらかしにすることになり、 その間、濃胞ちゃんはちゃくちゃくと成長したのであった。

しかし、ほーんとに久しぶりに京大病院に行ったのだが、 外来の建物が建て代わり(まぁ、それは外から見て知っていたが)、 IT的に完全に近代化されていたのは当たり前とはいえ驚いた。 患者の情報はすべてデジタル化されているようで、 20年前の記録もすぐに出てきたようだし、 受付や診療科(今回は、歯科・口腔外科)や手術室などの間は、 完全にオンラインで結ばれていて、呼び出し端末ももたされ、 最初はとまどったが、慣れれば、非常に便利になっている。 何よりも、かつての2時間待たされて5分診療という状態が、 ほぼ解消されていた感じだ。
また最近の流れで、いわゆるインフォームドコンセントだっけ、 病気の状態や治療方針や術後の注意事項などが、 お医者さんから、看護婦さんから、十分すぎるほど説明があるのはいいが、 同時に、山ほど書類を渡されて、確認の署名をさせられた。 手術の後にも、摘出した濃胞を学術に役立てたいので提供して欲しい、 ということで、看護士さんかな、びっしりと書いた書面を説明し始めたので、 “あ、ぜんぜん構いません、あげます、好きに使ってください”と、 こっちがかぶせて言ってしまい、さっさと署名してしまったぐらいだ。
手元に残っているだけで、
・術前から術後までのA3用紙に書かれた全般的な説明書
・治療計画のお知らせ(患者様交付用)
・デイ・サージャリー局所麻酔手術予約票
・日帰り手術をデイ・サージャリーで受けられる患者様へ、という注意書き
・手術・検査・特殊療法承諾書(患者様控)
・病理組織材料の診療目的外使用に関する同意書(様式1)
・デイ・サージャリーで手術を受けられた患者様へ、という注意書き
他にも支払い用の書類とか2,3あった。 法人化で大学も書類の洪水になったが、 どこも似たようなもんらしい。

さて、12日、手術当日である。 摘出手術自体は、局所麻酔で入院もしない日帰りの手術なので、 20年前も受けたこともあったし、かなり高をくくっていたが、 これが大間違い。
まず、手術室。 20年前は診療科のベッドでちょこちょこっと手術された覚えがある。 しかし、現在の京大病院の外来棟では、システムが統合されたようで、 各診療科は外来棟の2Fや3Fにあるのだが(口腔外科は2Fにあった)、 デイ・サージャリー(日帰り手術かな。英語にすんな!)は、 外来棟4Fに手術室がまとめられていた。 だから、手術室はかなり広くて、床や壁はピカピカだし、 ギラギラした手術用照明が当てられて、 おどろおどろしい器械だらけの、ほんとに“真っ当な”手術室だったのだ。 もちろん別室で服も脱いで手術着に着替える。 さらに手術中は、胸には心電図の電極、右腕には自動血圧計、 左手の人差し指にはおそらく脈拍を測るモニタのサックをつけられ、 体中が器械につながれた状態だ。 おまけに、体全体に口の部分だけ空いたビニールのカバーをかぶせられて、 手術中は何も見えない。 かなり“びびった”。 麻酔で手術自体はまったく痛くなかったが、 精神的にはなかなか怖かったぞ。
も一つは、最初に甘く見て、手術が遅くなってしまったことだ。 20年前はすぐに病院に行ったので、 濃胞もあまり大きくなっていなくて、 たしか2針ぐらい縫っただけで、 術後もあまり困った覚えはなかった。 しかし今回は、濃胞ちゃんがおっきくなっていたので (術後に見せられたが、1cmサイズの梅干しみたいだった)、 5針ぐらい縫う羽目になって、術後も痛くて腫れて、かなり大変だった。 やはり、異常を感じたら、すぐ医者に行かなければいけない。
まぁ、手術自体は永遠に続くような緊張の中で30分ほどで終わったが、 緊張しすぎて、当日はフラフラだった。 非常に弱った状態になってしまい、数日間は、 なんかイジワルなことを言われただけで泣いてしまいそうな感じだった。

手術の後、数日間は、患部がかなり腫れるので、手渡された書類にも、 事前に仕事は段取りを付けて安静にしておくように、って書いてあったが、 春休み中に済ませる予定だったけど、もう学期が始まっていて、 しかも翌日の木曜日も翌々日の金曜日の初回の講義があるので、 ちょっと休めないなーって感じ。 さらに困ったのは、数日間は、口が腫れていて、あまり開かないし、 ものが噛みにくいので、結局、茶碗蒸しとか流動食を抱えて登校し、 ふにゃふにゃと講義する羽目になった。 講義の最初に、一応、前日に口の中を手術して、 あまり喋れないから、と断ってはじめたが、 結局、初回だったので時間いっぱい話し詰めで、 後で少し痛くなった。 いかりや長介みたいになってんねん、と言ったが、 これはあまり受けなかった。
でも、もっと悲惨だったのは“液体のパン”である。 通常生活ではカロリーは“液体のパン”つまりビールで摂っているので、 まぁ、たしかにアルコールはダメだろうし、書類にも控えろって書いてあるけど、 控えたらカロリー摂れないし、仕方ないよなぁ、 だけど、手術箇所にアルコールが当たると滲みるだろうし、 というわけで、2日間だけだが、はじめてストローで缶ビールを飲んだ。 数日間は量は減らしたけど、うーん、治り具合とか、 腫れに影響したかどうか、よーわからん。

なんやかやで一週間経ち、抜糸の日。 抜糸はさすがに手術室ではなく、診療科のベッドで行った。 “痺れはなかったですか(神経のそばだったらしい)”とか、 少し尋ねられて、“じゃぁ、抜糸します、ちょっと痛いですよ”、 ほんとに“アイタ”だったが、あっと言う間に終わり。 家を出てから帰るまで30分、抜糸自体は数分だったろうか。 なんだか気が抜けてしまった。

というわけで、久々にキンチョーの超高い経験をしたが、 はぁぁぁぁぁである。 また、術後の抗生剤や痛み止めなどの薬代やタクシー代などは別として、 手術だけに関して言えば、総医療費23270円、 患者負担額6980円、 抜糸時が、570円/170円で、 さぁ、この手術代は高いのか安いのか。
ま、とにかく、“再発しやすいですから”って言われたし、 つぎはすぐに病院に行こう。