日本天文学会創立百周年
記念講演会&記念祝賀会
@東京(2008/03/23)
リアルタイムレポート

日本天文学会は1908年に創設された、 大変に由緒ある、日本でもかなり古い部類の学会だ。 そして今年2008年は1908年から数えて百年目になる。 となれば、当然、百周年記念行事が企画されるわけである。

すでに数年前からいろいろなプロジェクトがはじまっていて、

百周年記念出版事業 シリーズ「現代の天文学」(日本評論社)全17巻 (刊行中)
日本天文学会ロゴマークの制定
記念切手の発行
記念講演会・記念祝賀会の開催
日本天文学会の百年史『日本の天文学の百年』(恒星社厚生閣)の刊行
(One Hundred Years of Astronomy of Japan)2008年3月25日発行
来年2009年の世界天文年に合わせ記念巡回展示「天文学・望遠鏡の発展」

などが実施済み、実施中あるいは計画中である。

そして、明日から始まる日本天文学会の前日の本日(いま会場で書いている)、 3月23日に、
・記念講演会
・記念祝賀会
が開かれた。 記念行事などというものには、およそ関心はない人間なのだが、 (大学の卒業式さえ出ていないぐらいで)、 まぁ、招待状も届く年齢になってしまったことだし、 日本天文学会百年史の編纂委員もしたことだし、 立場上(笑)、出ないわけにもいかんだろう。 大人になったもんである(苦)。

当日は比較的に暖かくて、暖冬の影響からか、 神保町から一ツ橋へ下る道そばでは、桜が咲き始めていた。
で、今日は午後3時から、東京千代田区一ツ橋にある、 学術総合センター 一橋記念講堂 というところで、午後の部: 日本天文学会創立百周年記念講演会である。

ここは何年か前に、国際天文学連合の会議があったので、 一度、来たことがあったけど、やっぱり記憶通りに、 結構、面倒な位置だった。

・基調講演「日本天文学会百年の歩み」
土佐 誠 日本天文学会理事長

まず現在の理事長の土佐さんが、日本天文学会の百年の概要を講演した。 去年の秋に博多であった国際会議で、はじめて一緒に呑む機会があったのだが、 土佐さんはなかなかに酒飲みであった。閑話休題。

実は10数年前に趣味で学会の歴史を調べ、 『天文月報』に掲載したことがあるので、 ここらへんの話は割と詳しく知っていることだった。 (「天文学術誌の興亡:外伝/Prelude to Publications」1991年,天文月報,84巻,7月号,232頁)。 その記事は、土佐さんも冒頭で紹介してくれたが、 ちょっと昔を思い出してしまった。 話を聞きながら、スクリーンをチラチラ見ながら、 このテキストを打っているのだが、 ふと後ろを振り返ったら、花山天文台台長の柴田一成さんが、 ぐっすり眠り込んでいる(実況中継)。

・祝辞
文部科学省、 日本学術振興会
・祝電
日本学術会議、 天文学振興財団

その他、海外の関係団体からもいくつも祝電が入っていた。
まぁ、どれも、型どおりのものである。
・記念切手贈呈式
日本郵便事業株式会社

3月21日に、百周年を記念した記念切手が発行された。 うーん、小学校ころは切手収集が趣味のころもあったけど、 いまでも実家のどこかに、切手アルバムが眠っているはずだが、 いまは、もう興味ないなぁ。 でも、世間には切手収集が趣味の人は少なくないので、 案外と一般向けの宣伝にはなるだろうと思う。 実際、今日の昼過ぎに、新宿のビジネスホテルへチェックインを済ませてきたのだが、 新宿郵便局の側を通るので、お金をおろしに行ったら、 キャッシュコーナーの横の方に長蛇の列である。 何だろうと思ったら、記念切手の発売だった。

・記念講演「天文学の百年」
尾崎洋二 東京大学名誉教授

つづいて、百年史編纂委員長の尾崎さんが、 天文学の百年間を1時間にまとめる記念講演をした。 日本天文学会百年史『日本の天文学の百年』のダイジェスト版である。 編纂委員なので、もちろん知っている内容だったりする。 ただ、上手にコンパクトに整理されていて、 まとまって聞くと、なかなか面白かった。 とくに有名な木村栄(ひさし)のZ項というものの話は、 時間をかけて紹介されたこともあり、やっとよくわかった (すぐ忘れるだろうけど)。 またビッグバン宇宙と太陽の共通点の話も面白かった。 すなわち、

太陽内部は光学的に不透明な電離プラズマ= 宇宙の晴れ上がり以前は光学的に不透明な電離プラズマ
太陽表面ではガスの温度が下がり中性水素になって光球が見えるようになる= 宇宙が膨張すると温度が下がり中性水素になって宇宙が晴れ上がる
太陽周辺のコロナでは水素が再電離する= 晴れ上がりの以降の宇宙でも水素の再電離が起こる

最後の対応のみはおそらくメカニズムが異なるが、 空間的視点と時間的視点が対応関係にある点で、 なかなか面白い指摘である。 話を聞きながら、スクリーンをチラチラ見ながら、 このテキストを打っているのだが、 ふと後ろを振り返ったら、花山天文台台長の柴田一成さんが、 ふたたびぐっすり眠り込んでいる(実況中継)。

記念講演会は5時少しすぎに終わって、 同じ建物内で、展示などを見ながら、軽い飲み物が供された。 展示は知らん顔で、ワインを少し飲みながら、 いろいろな人と話していたが。

さらに、今日は午後6時からは、講演会場のはす向かいにある、 学士会館本館(左の写真は昼間撮ったもの) というところで、夜の部: 日本天文学会創立百周年記念祝賀会だ。 身を粉にして百年史を編纂したのだから、 ただ酒ただ飯かと思ったが、事前申し込み制で、 きっちり会費1万円を振り込まないといけないようだ。 まぁ、黙って振り込んだけど、 とーても大人になったもんである(爆)。

前言撤回(ここからホテルで書いている)。 祝賀会、すごくよかった。 ふつうに立食だと思っていたが、 テーブル席でフルコースだった。 ワインはあまりいいのが出なかったが、 シャンパンは飲みやすいのが出て、 シャンパンをお代わりしてしまった(笑)。 いやぁ、さすがに百周年記念祝賀会だけあった(ころっと変わる)。

シャンパンに始まって

オードブルはサーモン

スープは何だったっけ

赤ワインはあるかって、尋ねたら、 最初は魚料理なので白ワインが出ますが、と答えてきやがる。 (んなこたぁ、知ってる、と心で毒づきつつ) 同時に出してもらえますか?と大人のニコニコ顔。
ただ、シャンパンに比べるとワインはだいぶ格下で、 記念講演会の後で供された赤の方が遙かに美味しかった。

アントレ(でよかったかなぁ)は白身のムニエル?

少しずつ残したのだけど、やはり、無理、 アントレの肉の方はパスした。

最後はタルトなどデザート3種。 これもなかなかいけたぞ。

座る場所は決まっていない、割と面倒なフリー席だったが、 結局、来賓席のすぐ後ろ、広い部屋のど真ん中の一番いいテーブルに、 京都大学花山天文台の柴田さん、愛知教育大学の澤さん、 西はりま天文台の黒田さん、国立天文台の縣さん、渡部さんたちと座った。 こんなところにどーんと座るのは、ずうずうしい人間に決まっている。
さて、この祝賀会の席上、委員長以下十数名の編纂委員と 50名ほどの執筆者の血と汗と涙の結晶である、 日本天文学会百年史『日本の天文学の百年』 (恒星社厚生閣2008年3月25日発行)が披露された (最後の引き出物として出された)。

実は、当初の刊行予定はたしか半年ぐらい前の予定だったが、 今回の記念事業で配りたいという理事会の意向で、 百年史の刊行時期を遅くしたものだ。 これは編纂委員会でも歓迎された。 というのも、 百年史の編纂は3年前の2005年からはじまっていたのだが、 なかなか難渋を極めていて、原稿が集まらないパートや、 全体としての不揃いなところなど、編纂作業が遅れている部分もあり、 刊行時期が遅くなったことで、 結果的に、内容を少しでもよくすることができたからだ。

ぼくも、完成品ははじめて目にする。 いやぁ、こんな立派な本になるとは思わなかった。 さすが、委員長以下十数名の編纂委員と 50名ほどの執筆者の血と汗と涙の結晶であるだけのことはある!!  しかも、学会百年史であることから、自動的に約束されているのは、 これまでの百年間(空前)とこれからの百年間(絶後)、 前後二百年にわたり決して類書の存在し得ない空前絶後の本であるということだ。 そんな本の編纂に携われたのは、とてもありがたいことであった。

祝賀会の合間に、ときどき海外からのお客さんの祝辞などを挟みながら、 2時間の予定通り、祝賀会は午後8時にお開きになった。 後、どーしょーかなーと思ったけど、2時間、十分しゃべったし、 明日からの学会もあるし、さっさと帰ることにした。

ちゅうか、この時点で、 20日(木)先斗町で30年ぶりに会った友人たちと、 21日(金)大学の生協で理科教員送別会が、 22日(土)祇園で山口県からのお客さんを迎えて、 そして23日(日)今日の祝賀会と、飲み会の四連荘である。

こんなことは初めてだが、明日からの学会を入れると、 まるまる一週間続くことになる。身体、もつかなぁ。 学士会館を出たら、タクシーが止まっていたので、思わず乗ってしまった。

おまけ:ホテル横の喫茶/バーのスタウト。
昼過ぎにホテルにチェックインしたときから気になっていたのだが、 明晩からは呑むのは不可能だということが明白だったので、 軽めに呑んだ今日、一杯だけ試飲した。 ふつうに美味しいスタウトだった。