天文天体物理若手夏の学校#38@つくばグランドホテル
(2008/07/27-07/29)

全国の天文学・天体物理学系の院生の集まりで、 天文天体物理若手の会というのがあるのだが、 もう30年以上も前から続いていて、毎年夏に合宿セミナーをしている。 10数年前と、2年前に続いて、今年、3度目の招待講師で呼ばれて、 茨城県の筑波山まで行ってきた。 10数年前は「天文学の舞台裏分科会」で天文教育関連の話、 2年前は「事務局企画」で天文研究者としてのお題、 3度目の今回は「コンパクトオブジェクト分科会」で はじめて研究プロパーの話を依頼された。
宿泊したつくばグランドホテルは、もろ観光地のホテルで、 食事はなかなか豪勢だった。 つくばエクスプレスの駅から遠くてどうしようかと思っていたが、 招待講師ということで送迎もしてもらい、とてもいい待遇をしていただいた。 おまけに、ノーベル物理学賞の小柴昌俊さんも同じ分科会の招待講師で、 なかなかラッキーなことだった。 小柴さんの前座ということで、プレッシャーもあったけど(笑)。
「宇宙ジェット理論のすべて(誇張)」ということで、 正式に依頼された半年前から気合いを入れて少しずつ、 喋りきれないのを覚悟で相当に分厚いファイルを作った。 喋りきれない部分は、また後日、ネットで公開すればいいと思って、 あまりセーブせずに作っていったら、200ページ近くになってしまった。

第38回天文天体物理若手夏の学校 コンパクトオブジェクト分科会 「宇宙ジェット理論のすべて(誇張)」(PDF/12MB)

実際、喋ったのは、1/4ぐらいだが、まぁ、いいだろう。
いろいろと楽しませてもらい、事務局や分科会世話人の方には、 改めて御礼を述べておきたい。

初日(7/27)、夕方の「コンパクトオブジェクト分科会」セッション。 出ないといけないわけじゃないが、せっかく来ているので、少しサービス残業(笑)。
2日目(7/28)、講演当日の朝。 参加院生はぎゅうぎゅうの相部屋らしいが、 招待講師はさすがにゆっくりとした個室に入れてもらえる。 初日は10時までセッションがあって、その後にやっと呑み会だったので、 寝たのが12時ぐらいになったが、6時ごろには目が覚めてしまった。 これは今晩がもたないと思って、午後、1時間ほど、昼寝をした。 昼寝なんて贅沢なことは何年ぶりだか。
「コンパクトオブジェクト分科会」午前の部は9時スタートである。 トップバッターで、宇宙ジェット理論のすべてを話すが、 なかなかテンコモリの話であった。 時分の講演姿なんて、滅多に見られない(笑)。
午前の昼前に、いよいよ、小柴さんの講演である。 講演前に一瞬のチャンスに写真を撮らせてもらった。 実はこの時間、3つのセッションが走っていたが、 「コンパクトオブジェクト分科会」の会場はぎっしり状態である。

講演を聴きながら取ったメモをもとに再現:

小柴昌俊:

四つの力:重力、電磁気力、弱い力、強い力の話
クォーク、実験なしで信じられている唯一の粒子
宇宙の最初の素粒子反応
電磁気力と弱い力の統一
大統一理論、陽子崩壊の予言

陽子崩壊の検出が目的
Kamioka Nucleon Decay Experiment/KamiokaNDE
地下1000mに3000トンの水をたたえる
当時最大のものPMT(5インチ=12.5cm径)
4億円
vs.
IMR
10倍の研究費で数倍の水量
同じ光感度

これに対抗するため!
直径を4倍にして、光感度を15倍に
浜松ホトニクス
世界最大の光電子増倍管の開発成功
1000個を並べる

太陽ニュートリノ
超新星ニュートリノ
ニュートリノ振動
陽子崩壊の未検出

スーパーカミオカンデ
5万トン
11500個の光電子増倍管

Kamioka Liquid Scintilater Anti-Neutrino Detector/KamLAND
反電子ニュートリノを液体シンチレーターで検出
地球内部でβ崩壊で出ている反電子ニュートリノを検出し
地球内部トモグラフィーができる
フォトグラフならぬニュートリノグラフの太陽イメージ
講演が終わった後にロビーで他大学の院生と話していたら、 係の方が小柴さんをつれて出てきた。 タクシーを確認しにいった一瞬のタイミングで、 またまたラッキーチャンスである。
ホテルの屋上から眺めた筑波方面。 残念ながらすこし曇っていて、あまり遠くまでは見えなかった。
ホテルのすぐ下にある、筑波山麓の鳥居。 筑波山は古くから巡礼地らしく、 鳥居をくぐって山頂へ行くらしい。
「コンパクトオブジェクト分科会」の3人目の招待講師、田代信さんの講演。 1時間ほど昼寝して元気も回復したので、しっかり聞くことができて、 なかなか勉強になった。院生より勉強させてもらったかも。
2日目(7/28)、夜はいよいよ懇親会。 なかなかに豪勢な料理が並んだ。もっとも…
かろうじて一皿ぶんほどゲットした後、 あっという間に料理の姿は見えなくなった。 今回の参加者は350人を超えるぐらいらしい。
仕方ないので、会場後ろのオサケコーナーのそばで、 ああ、牛久のワインですか、白の方が美味しいですねぇ、などと、 ホテルのおばちゃんと話していたら、 田代さんがやってきて、説明を聞いている。 でも、この位置は正解で、厨房との通路に当たっていたため、 追加の料理がそばを通るので、ときどき関所料を徴収できた。
懇親会の後は、当然、2次会である。 お仕事も終わったので、心おきなく呑める状態だ。
事前の事務局とのやり取りで、ワインをお願いしたら、 ものは試しに書いた銘柄を揃えてくれたので、 なんだか申し訳なくて、こちらからもさらに数本送った。結果、
・ボルドーの赤とサンテミリオンの赤
・ボルドーのロゼとスペインのマテウス
・シャブリ白とドイツのリースリング/シュペートレーゼ
など、そこそこテイスティングができるぐらいに揃った。 これはリースリング(左)とシャブリ(右)。
11時34分。 どっかのだれかが、これ被ってみて、といってきた。 はっきり言って、完全にできあがっている。
懇親会が始まったのは8時過ぎで、まだ3時間少ししか呑んでいないけど、 2次会ではワインばっかりだったからなぁ。
3日目(7/29)、朝8時の筑波山神社。 ホテルから筑波山神社までは10分ほどなので、 朝食後、散歩がてら、行ってみた。 階段が多くて大変だったが、ここまで来たら、 筑波山頂まで上がってみたくなったが、 ケーブルカーの始発は9時20分なので残念。
山々が重なっていると、光学的厚みの説明にいい画像が取れる。 うーん、どこでも仕事目なのが少し問題だが。
10時過ぎの筑波山神社。 この日、午前中は、部屋で仕事の予定だったけど、 初日は夜中の10時まで仕事したので、裁量労働を適用(笑)。 筑波山にくるチャンスなど、おそらくもうないので、 結局、筑波山頂まで行ってみることにした。
いや、しかし、神社までの階段に加え、 さらに予想以上に大変な階段ラッシュである。 左はケーブルカーの駅へ、右は山道へ続く階段。
やっとケーブルカーの駅を辿り着いた。 ほんとに這う這う辿り着いた感である。 ケーブルカーの名前が、“もみじ”というのも、いまはじめて知ったぐらいだ。 二日酔いで寝不足の身で、なんでこんな目に遭わなあかんねん。
ともあれ、ケーブルカーで8分、緑の谷を抜けると、ようやく山頂である。
山頂まで行ったら、行き着くとこまで行こう。 回転展望台の天辺まで上がった。 もう限界であるが、気持ちいい風が来て、辿り着いた甲斐があった。 こちらは男体山。
こっちは女体山。
降りるとき、ケーブルカーの色が変わっていて一瞬驚いたけど、 こっちは“わかば”だそうだ。 そうか、ケーブルカーは、2台でシーソーだったっけ?
たしかにケーブルの中ほどで、往路に乗った“もみじ”と、 復路の“わかば”がすれ違った。 ここは複線である。 あっれー、いま気づいたけど、この前までの単線部分では ケーブルが2本見えていたのに、この部分では、 ケーブルが1本しかないなぁ。 そうか、こっちが“わかば”をぶら下げているケーブルかもしれない。
3日目(7/29)、午後。 「天文学と社会分科会」が、最後の“お仕事”である。 30年ほど前の、この分科会を創設したメンバーの一人でもあるので、 この分科会まで参加することにしていた。 招待講師は国立天文台の生田ちさとさんと日本経済新聞社科学部の黒川卓さん。 天文学を志す院生も、天文研究のことだけではなく、 年に一回ぐらいは社会との関わりを考えようという意図で創設したのだが、 一応は、その目的は果たされているようである。

コメントもいくつかさせてもらい、楽しませてもらった。 非常に濃く充実した3日間だった。

おまけ。 新幹線から見えた天使の梯子。 デジカメを出す前は、もうちょっとはっきりしていたんだが。