鹿児島だぁ。 15年かそこら前の学会以来、今回は2度目だが、 前回の鹿児島の印象はとてもよかったので、 今回はちょっと(かなり)期待気味である。 今回は、『アインシュタインLOVE』という特別企画展に招かれた。 奇跡の年から百年目の2005年の相対論百年祭−世界物理年−ごろからか、 話には聞いていたのだが、京都・大阪・仙台など日本各地で、 アインシュタインに関する巡回展示を行っている企画だ。 なにしろ、アインシュタインがその書簡など資料を遺贈し、 アインシュタイン・アーカイブを作ったイスラエルのヘブライ大学が 全面的にバックアップしている巡回展示企画なので、 ノーベル賞メダルはもとより、さまざまな貴重な書簡や資料が展示されている。 そして、 アインシュタインを日本に招いた改造社の山本実彦の故郷が鹿児島だという縁もあり、 「アインシュタインLOVE鹿児島展実行委員会」の主催で、 特別企画展とともに展示期間中に一般向け講演会が開催され、 その講師の一人として呼ばれたわけだ。
講演会の講師は、 また、飛行機も久しぶりだ。 札幌に行ったとき以来だから、2年近くぶりかな。 いつものようにMKスカイゲイトシャトル (MKタクシーが運行している乗り合いシャトルバス)で伊丹へ向かった。 ちなみに、どこかの知事が 伊丹の存続を再検討などと宣っているらしいが、 客は便利だから伊丹を使うのだ。 関空の利用者が伸びないのは当たり前で、 地元民に不便を強いる方策ではなく、 地元民のためになる施策を捻り出すのが為政者の務めだろう。 民衆の気持ちがわからないトップはダメダメである。 まぁ、そういう頭の悪いトップを選ぶ方も頭悪いけど(笑)。 |
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さて、登場アナウンスがあって搭乗口へ向かうと、 あれ、エプロンじゃなくて、階段? 滑走路歩きで双発プロペラジェット機かぁ。 たまにはいいけど、でも、たしか鹿児島、雨なんだよなぁ。 濡れるところはないと思って安心していたのに。 | |
しかも、早く乗り降りできて景色のいい前方窓際席を選んでいたから、 まさにプロペラの直側、これが結構、怖いかった。 プロペラの震えがモロ響くのである。 たとえば、プロペラの回転からくる震えにムラがあるのわかるし、 それに何だかすごく回転していてそのままスポっと抜けてしまいそうだし。 鹿児島周辺は雷を伴った雨だそうだ(機長アナウンスのリアルタイム中継)。 まじ、大丈夫かなぁ。高度4500mというからジェット機より低いだろう。 | |
そしてまたすごい雲海である。 しかも下層と上層と二層にわたって拡がっている。 九州上空では雲の軍団だ。 キャビンアテンダントのお姉さんが、 “ときどき揺れますが、運行には支障がありませんので…” とおっしゃるが、まぁ、支障があるとは言わんだろうなぁ。 とかなんとか思っているうちに、とくに何もなくタッチダウン。 幸い、空港到着時は雨脚が途切れていた。 | |
すぐにタクシーに乗って、宿泊先の“城山観光ホテル”を告げると、
“お仕事ですか”“ええ、そうです。明日ですが”
“いい会社ですね”“え、そんなにいいホテルですか”
…と、高速で土砂降りの雨である。運がよかった。 タクシーの運転手さんの話では、城山観光ホテルは、 どうやら、鹿児島を代表するホテルらしい。 もともとはホテルは副業でパチンコ業が本業だったらしいが、 パチンコ業界に県外の大手が入ってきて、本業が左前になり、 ホテルは老舗なので、おおやけのテコ入れを受けて、 いまや、鹿児島を代表するホテルになったらしい。 晴れていれば、ホテルからは桜島が絶景とのこと。 ちなみに、城山は、ほんとうに小高い山で、 かつて西南戦争の折りに、西郷隆盛が幕府軍に包囲され、 最後に自刃した場所でもある。 最近、明治維新のころの本をたくさん読んでいるので、 ここらへんは少し詳しい(笑)。 しかしまぁ、関西のおばちゃんのように、よく喋る運転手さんである。 話しながら、タイプしているけど(笑)。 篤姫(天璋院)や四賢侯の一人の島津斉彬の話なんかしているうちに (こっちはちょっと前に司馬遼太郎の『最後の将軍』を読んだばかり) ホテルまで着いてしまった。 |
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いやいや、たしかに立派なホテルだ。 タクシー降り場からフロントまでホテルマンが荷物運んでくれるし、 LANケーブルを借りようとフロントに電話したら部屋までもってくるし、 こんなホテル泊まるの最初で最後かなぁ。 でも、あまりに広すぎて、慣れていないくって、 ものが遠いし、何だか居心地悪い。貧乏性が染みついている。 | |
さて、到着当日の夜は、
アインシュタインLOVE鹿児島展実行委員会が主催して、
ホテルの中華レストランで歓迎会である。
実はこのときまで、そもそもの運営母体がよくわかっていなかった。 鹿児島大学の祖父江さんから依頼されたので、 いろいろな連絡は事務局の方が取っていたが、 なんとなく鹿児島大学が主体かと思っていたら、まったく違っていた。 紹介された実行委員会のメンバーは、 会社の社長さんだとか税理士さんだとか社団法人の方とか、 まぁ、みごとに、天文どころか科学さえ縁がないような人たちだ。 何かのきっかけでヘブライ大学と親交ができ、 今年の5月に鹿児島展実行委員会が立ち上がったらしい。 その過程で、鹿児島大学も一緒になり、 主として天文関係のスタッフが参加して、 会場の提供やいろいろな交渉などを行ったようだ。 科学以外の分野にも、アインシュタインをかくも愛する人々がいるのである。 しかも、驚くべきは、その実行力と行動力とテンションの高さである。 なにしろ実行委員会が立ち上がったのが5月で、展示の実施は8月だ。 すごいエネルギーと行動力だと思った。 ぼくも実行力はある方だと思っていたが、これはレベルが違うぞ。 おまけに歓迎会でも、このテンションはなんなの? 南国のせい? ついつい“そのテンションには付いていけないデスヨ”と突っ込み入れつつ、 だんだん巻き込まれてしまったが(笑)。、 |
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“いい”ホテルなので、一応、スカイラウンジへ行ってみた。 シャンパンはMoet et Chandonというよくあるやつだったが(もちろん美味しいけど)、 オリジナルカクテルがなかなか風味があって美味しかった。 | |
さて、翌日は、本番の講演会である。お仕事である。 場所は鹿児島大学の稲森会館メモリアルホール、立派なホールだ。 (京セラの)稲森財団と関係あるのかと尋ねたら、 まさに稲森氏が鹿児島の出身でその寄付でできたホールだった。 10時すぎに開始、250席あるホールが満席立ち見状態である。 親子連れ、高校生、大学生、一般など、参加者はさまざまだ。 これはなかなか話しにくいパターンではある。 | |
鹿児島大学の面高さんが司会で、
トップバッターの松田さん、佐藤さんに続いて、
11:40〜12:30 「ブラックホールシャドーとジェット」
というタイトルで講演。
午後に観測的な話が来るので、観測面は概要のみ話して、
理論的な話をしたわけだが、うーん。
まぁ、準備に相当な時間をかけた割に
(しかも昨晩の歓迎会で方向性がようやくわかり、直前まで手直ししていた)、
可もなく不可もなしかなぁ(笑)。
松田さんのように笑いを取るのは、やっぱ無理だ。 |
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午後は、中井さん、亀野さん、佐藤さん、松田さんらの 講演があり、最後に、祖父江さんの司会で パネルディスカッション(総合質問タイム)だった。 相対論・宇宙のはじまり・ブラックホールがらみの質問がたくさん出る。 親子連れや高校生あたりは午前で帰って、 午後は大学生と一般が残った感じである。 それでも、かなり多くの人が最後まで残っていて、 なかなかみなさんすごい。 松田さんが自分の話の途中で言っていたが、 講演は排泄行為の一種だそうで、 講演をする方は気持ちいいが、 排泄物を浴びせられる聴衆がしんどいそうだ。 まぁ、あながち的はずれではないと思うが… | |
とまれ、10時すぎから6時半まで、長くて短い一日が終わり、 夜は、“天文館”と呼ばれる鹿児島市内の繁華街で慰労会と相成った。 繁華街に“天文館”とは変わった名前だが、 かつて薩摩藩の「天文方」があった場所らしい。 慰労会は、薩摩名物の黒豚を使った豚シャブだが、 肉はもうあまり食べられないのだが、出汁が非常に美味しくて、 豆腐と野菜と薩摩揚げを堪能した。 | |
慰労会が終わっても鹿児島展実行委員会はとても元気である (講演会などが成功裏に終わったこともあるかもしれないが、 基本的に元気みたい)。 2次会に行くことになり、 いつもの行きつけだというカラオケスナックへ、 やや体力の残っていたぼくと佐藤さんが連行される。 カラオケ自体も1年ぶりくらいだが、 カラオケスナックなんて、もしかしたら十数年ぶりかも。 | |
佐藤勝彦さんのアンビリーバブルなショット。
佐藤さんとカラオケに行くのも驚愕的だが、 佐藤さんがカラオケ歌うなんて超驚愕した。 聞いてみると、事務職員さんたちとの付き合いで、 たまにカラオケとかは行くこともあるらしい。 日本のトップもなかなか大変である。 |
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ますますテンションが上がっていって、ついに、
こちら(実行委員会)のメンバーととなりのグループのメンバーが踊り始める。
行きつけの店だと言うことだったので、
お互い顔見知りの常連客同士かと思いきや、なんと、初対面だとのこと。
もう何がなにやら。 しかし、鹿児島、あなどれない、ちゅうか、凄すぎる、これは。 |
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最近は、大学も登校拒否になりそうなぐらい勤労意欲が殺がれるところだし、 陰々滅々と呑むことも少なくないから、久しぶりにスカッと呑んだかなぁ。 南国薩摩で生きるエネルギーをもらった感がある。 宿に帰ったのは12時ぐらいだけど、翌朝はスッキリ目覚めた。 飛行機の便などの関係で、観光時間はまったく取れなかったが、 帰京の朝は、桜島もそこそこに眺められ、まぁよしである。 | |
実行委員会の丁重な見送りを受けて、
空港までは、ちょうど、松田さんと中井さんと乗り合わせになる。
松田さんの饒舌に1/3ぐらいで対応しているうちに、
あっという間に、鹿児島空港だった。
飛行機の違う松田さんたちとは空港の玄関で別れて、土産物の物色である。 鹿児島はいつもいい思い出が多く、南国で気が大きくなるのか、 お土産も白薩摩とか薩摩切子とか、普段の3倍くらい、 あり得ないほど買ってしまった(笑)。 帰りの便はジェット機で天気も乗り心地も景色もよく、 久しぶりに快適な空の旅だった。 桜島を眼下に眺めたり、入道雲の頂上を見れたり、 なかなか見飽きなかった(仕事ができなかった)。 大学の直上を通る空路だったので、 左側の窓際なら柏原キャンパスが見下ろせたはずだが、 惜しいことに右側の窓際だったので、生駒山系などを眺めつつ、 着陸態勢に入った。 行きはプロペラ機だったので1時間半ぐらいかかったが、 帰りはジェット機で約1時間で到着。 さて、MKタクシーの係員に導かれてMKのシャトルバスに乗り込むと、 先着した松田さんがニヤニヤ笑いながら待っていた。 万事休す。 |