2009年 皆既日食 観測ツァー

小笠原諸島南方 硫黄島近海 皆既日食中心帯
北緯25度18分 東経142度1分
ふじ丸船上
(2009/07/22)

はじめに

今世紀最大のイベント(!?)、天体現象としては、 おそらく冥王星以来の大騒ぎになった皆既日食である。 あいにくと日本の大部分では部分日食だが、 トカラ列島から小笠原諸島にかけて、 日本の南海上を皆既日食帯が通過する。 はじめて皆既日食観測ツァーに参加した。

日食病に罹っていない人へ: 本ページは、事前準備の部分はツァー前に、 その後はクルーズ中にリアルタイムで書きながら、 クルーズ後に推敲や追加などをしたものだ。 ただ、ぼく自身がそうだったからわかるけど、 皆既日食だけは実体験しないとわからない。 (実際、悪天候の場所も多かったためか、 国内のメディアでも盛り上がらなかったようだし、 事前には膨大なメールが流れていた天文関係のメーリングリストでさえ、 事後に日食の話題はまったく出ていない。 おかげで、6日ぶりにネットに繋いだとき、 思ったほどメールが溜まっていなくてホッとしたのだが。) その点を留意して読んで欲しい。
クルーズ病に罹っていない人へ: ほぼ同上。
写真の利用について: また素人の撮影なのでたいした写真はないが、 個人的あるいは教育目的での利用はまったく構わない。 出版物その他で利用されたい場合には、 事前に連絡をいただければありがたい。


地球全体での皆既日食帯(NASA)


日本近海の皆既日食帯(NASA)

2年間の事前準備

“福江さんも一緒に乗りませんか?”
“ハイッ! 行きます!”

2年前の夏に、西はりま天文台の黒田武彦公園長から、 今回の2009年の皆既日食ツァーに誘われた。 いままで日食を見たくなかったわけじゃないが、 曇るリスクを冒して現地まで行くほどの気はなかった。 しかし、今回は少し話が違う。 何しろ黒田さんが音頭を取って豪華客船を仕立てて、 皆既日食帯の通る小笠原近海までクルーズし、 メインイベントが日食というツァーだ。 この“豪華客船クルーズ”に反応してしまったのだ(笑)。 このときから、2年間にわたるNOT団 (=日食を大いに楽しむ団; SOS団=世界を大いに盛り上げる涼宮ハルヒの団の関連組織) と黒田本舗の活動が開始された。


昨年の8月に撮影した黒田さんの写真と、 黒田本舗企画部長兼専属デザイナーの「かず茶」さんが 描き起こした似顔絵。

今回の皆既日食では、自分とツァーを盛り上げるために、 事前に黒田さんの許可も取り (正確には、“ツァーのときにグッズを売ってもいいですか?”と聞いたら “どうぞ何でもやってください”と言ってもらえたので何でもやった;笑)、 『黒田本舗』をツァー中の6日間期間限定で開店営業することにした。 どんなグッズがいいかとか、ぼちぼちと検討しているうちに、 あっと言う間に1年半が経ってしまい、 4月になってから、いよいよ本格的な開店準備に入った。

まず記念グッズについては、 黒田本舗専属デザイナー「かず茶」さんが描きためた絵をもとに、 絵はがきやメモ帳やクリアファイルやTシャツなどの検討をはじめた。 絵はがきについては、4月早々に行きつけの写真屋さんで見積もりを取ってもらい、 そこそこの値段で印刷できそうなことがわかる。 しかし、クリアファイルその他は、人に尋ねたりネットで調べたりするものの、 少部数だとどこも割高高額になり、ポケマネではさすがにしんどい。 もはや無理かなと諦めかけた6月下旬になって、ようやくネットで、 少部数のクリアファイルでもポケマネで許容できる価格で印刷してくれる業者を見つけ、 大急ぎで注文し、ぎりぎりで間に合った。 また同じころ、Tシャツの方も安く印刷してくれる業者が新聞広告で見つかり、 こちらも大急ぎで注文して、ぎりぎり間に合った。 メモ帳の方は、財布の限界と、おそらく物量的な限界(持参不可能だろう)から、 残念ながら見送ることにした。

またこれらの販売グッズの製作と並行して、特典グッズを検討し、 5月の連休をつぶして「太陽太陰図鑑」というものを作成した。 さらに大特典グッズとしては「ステキな本3冊セット」を用意することにした。 後者については、もともとは、クルーズに参加するはずの、 海部宣男さんとか森本雅樹おぢさんら著名人の本を3冊セットにしたら、 盛り上がって面白いだろうなぁと考えて、“ステキな”本としたけど、 さすがにそこまで根回しをする余裕はどこにもなくて、 自分の本でごまかすことにする(笑)。 それって“ステキな”本なのかっ!?、て突っ込まれると痛いけど。


絵はがきの図柄は、いろいろなデザインから10種類を厳選した。 セットAはリアル黒田を含むシリーズで、 セットBはデフォルメ黒田を含むシリーズ。


クリアファイルのデザインは、表面は2種類を作成した。 タイプAは2006年のトルコ日食のイメージで、 タイプBは海上で観測する今回のイメージ。 裏面は共通のデザインで天の川と黄道十二星座のイメージ。

ロゴはわざわざ論文作成用のLaTeXというソフトで作成(笑)。 このLaTeXは英文のフォントが豊富なので綺麗なロゴが作れるためだ。


Tシャツはやはり2種類を作成した。 どちらも日食時以外にも着れるシンプルなデザインとしてある。

最終的には、黒田本舗の日食記念グッズとして、

・絵はがき5種セットA 100セット
・絵はがき5種セットB 100セット
・クリアファイルA 100枚
・クリアファイルB 50枚
・TシャツA 10枚
・TシャツB 10枚
・お買い上げ特典A 太陽太陰図鑑 40部限定
・お買い上げ特典B ステキは本3冊セット 5部限定

を用意した。 その他に手作りで社員名刺やタスキも作り、 黒田本舗の開店準備が整ったのが出立の数日前である。


筆まめで作成した営業用(笑)の名刺。


黒田本舗のグッズ各種と特典など。これだけの物品をもっていけるだろうか?

また、もともとは、完全にバカンスのつもりだったけど、 本業(?)がらみで、結局、できるだけ皆既日食の様子を記録することにし、 そちら関係の機材もきちんと揃えることにした。 難儀な性である。
実は今回の日食ツァー、 事務方ではありがたくも“出張”でいいですよと言ってくれたのだが、 実際、仕事が3/4は入ったけど、最終的には、 やはり旅費のでない“研修”として行くことにした。 仕事がらみとはいえ、その方が気持ちいい。

で、最終的には、仕事用機器+日食観測用機材として、

・ノートパソコンや電源ケーブルなどアクセサリ一式
・デジカメや電源ケーブルなどアクセサリ一式
・デジタルビデオ、電源ケーブル、ワイドコンバータレンズ、三脚、その他アクセサリ一式
・DSと電源ケーブルなど
・そしてもちろん日食メガネ各種

などとなった。


パソコンや撮影機材やDSなど。これだけの物品をもっていけるだろうか?

機材やグッズなどは部屋の隅に少しずつ積み上げていたのだが、 いつの間にか何だか怖ろしい山になっている。 実際、前々日にざっと荷造りしてみたら、 とんでもない重さ×容積になってしまった。 4人のパーティだが、手分けしても到底すべてを持参するのは無理だと判明。 高額お買い上げの場合の特典B「ステキな本3冊セット」については、 早い段階で、該当者には郵送にする予定だったが、 他のグッズも少しずつ減らすことにした。 ええーーん、完売しても元が出ないよぅ。 またふだんの出張では必ず携帯するショルダーバッグなども置いていくことにした。 夏場だったし、ふじ丸船内で洗濯もできるということで、 衣服を極度に減らせたのは幸いだったが、それでも、かなりの大荷物になった。


ネットで手に入れたふじ丸のパンフレットに載っていた船内マップ

さて今回参加した『2009年 皆既日食クルーズ』は、 豪華客船ふじ丸−関係者間では通称「黒田丸」−で、 7月20日(月)に姫路港を出港し、 22日(水)には皆既日食帯中心線の 最大食近傍で皆既日食を観測して、 25日(土)に帰港する、5泊6日のロングクルーズである。 皆既日食はもちろんだが、こんな客船クルーズも初体験だ。
もともと出不精で旅行は苦手なタイプ(典型的なインドア派)で、 飛行機にはじめて乗ったのも30代半ばになってからぐらいだが、 それでも昔からなぜか洋上クルーズには憧れがあった。
乗船してパンフレットをもらってからでは時間が惜しいので、 事前にネットで船内マップを手に入れ、 どこでどう楽しむかをイメージトレーニングしておく。 パーカーやスラックスや帽子なども新調し、 もてる用のクルーズ装いもばっちり(妄想)である。
…やはり、ただの妄想だった(笑)。 ただし、ふじ丸は期待以上だった。 航海中にも参加者と話したものだが、 8階建てで500人宿泊できる超一流ホテルが、 たまたま海に浮かぶ船になったものだと考えればいいだろう。

7月20日(月) クルーズ第1日目

13:30〜14:30乗船受付
15:00姫路港 出港
15:30〜17:00オリエンテーション
17:30〜19:30ウェルカムディナー
各種イベント
22:30〜23:30お夜食

届いた日程表をみて、意外ではなかったものの、いわゆる観光旅行とは違って、 豪華客船クルーズというものは、朝から晩まで食べまくる旅行のようだ。 初日は午後からだから目立たないが、2日目からは壮絶である。 しかし、ネットでは、ふじ丸の料理はとても美味らしい。 量は食べれないだけに、質が楽しみではある。

旅客船ターミナルに停泊する、ふじ丸

さて、当日の朝は慌ただしい中、 大荷物を抱えて何とか姫路まで辿り着いた。 早めの昼食を取ってタクシーで姫路港の旅客船ターミナルへ向う。 おおっ! ふじ丸、でかいぞ、人、多い!!
長い列を並んで何とか受付を済ませて乗船し、やっと部屋へ落ち着いた。 思いの外に設えのいい部屋である。さすがに豪華客船だ。 結構へとへとだが、少し休んで、まずは船内探検に出かける。

いろいろなイベントが行われる「ベランダ」; 重たい荷物を抱えて到着した直後ですでに疲れている(笑)
アフタヌーンティーの飲めるラウンジ・バー「エメラルド」; 写真通りにかなり広いスペースだがお茶の時間は人で一杯になった
静かに談話するサロン「桜」; この部屋は打ち合わせで一度だけ使ったぐらい
全体のイベントを行うメインホール「パシフィックホール」; 500人は座れる体育館のようなホール
メイン・バー「琥珀」; ちょっと寒かった

そうこうするうちに、出港セレモニーが始まり、 乗客の多くは4階で船を取り巻くプロムナードデッキへ鈴なりになった。 埠頭では海上保安庁(?)の吹奏楽や和太鼓の演奏があったり、 乗客にはシャンパンやジュースなどが振舞われたりする。 そしてふじ丸のクルーが乗客にテープを配って回る。 そっか、テレビなどでは見たことあるけど、 大きな客船の出港のときは、ホントにテープを投げるんだ。 動き回り詰めのイキナリで草臥れたけど、面白い体験だった。

吹奏楽隊と和太鼓
風に舞う色とりどりの紙テープ

そして、まず最初の公式イベントとして、 メインホールのパシフィックホールでオリエンテーションである。 乗船者は、ツァー参加者500人+クルー130人超で、 総勢600人を大きく超えるものらしい。 日本旅行の総合案内やふじ丸の乗船案内に続いて、 日食観測アカデミック・ツーリズム・プログラムの開校式が行われた。 今回のツァーは、正式には、兵庫県立大学公開講座の一環なのだ。

海部さんや森本おぢさんたちゲストとスタッフ一同

そして17:30からは、ダイニングルームの「ふじ」でウェルカムパーティである。 ネットなどで紹介があったとおりに、ふじ丸の料理はたしかに美味しい。 種類も多くて、とてもすべてを味わい尽くせなかった。 さてさて、最初は大人しくしていたのだが、 呼び出しをいただいて、「黒田本舗」の宣伝に出向いて、 かなり恥ずかしい一方、とても楽しく騒乱状態になってしまう。 (ちょっと恥ずかしすぎて、写真は載せられない)

ウェルカムパーティのメニュー;種類が多すぎて全部の試食は無理だった

十二分にディナーを満喫した後に、部屋に戻って一休みしてから、 20:00からが最初のイベントで、世界天文年の日本委員会委員長、 元国立天文台長の海部宣男さんによるミニ講演である。 世界天文年の簡単な紹介の後に、お題は、星座と七夕のお話であった。 写真も撮影したのだが、パシフィックホールが大きすぎて 演台からの距離が遠く、残念ながらちゃんと写っていなかった。

昔の旧暦の七夕(8月)は、必ず、上弦の月だった。 というのも、七夕はそもそも七日目の夕方なわけだ。 だから、半月が沈むと真夏の星空と天の川がみえる。 つまり、月と星と天の川を楽しめたのが旧暦の七夕だったんだ。 旧暦にことなどは知っていたが、七夕の詳しい話までは、 恥ずかしいことにぼくも知らなかった。 いやいや、さすがに海部さんである。

ちょっとメインバーで一杯ひっかけているうちに、 つぎのイベントタイムの21:30になる。なかなか忙しい。

各種イベントはタイプの違うものがパラレルで複数組んであって、 ピアノ演奏の福田さんには申し訳なかったけど、 森本おぢさんの出演するサイエンストークの方に参加する。 いつも相も変わらず、の森本トークであった。

森本さんに続いて、明珍宗理さんが、自身で製作されている、 澄み切った音色のする火箸の話をされた。 5代前まではミョウチンと言えば、甲冑を作っていた家系らしい。 伝統的な技を残すために、 刀匠にのみ供給する玉鋼で火箸を作ることを考えたそうだ。 たしかに、玉鋼で製作した火箸や風鈴は、 とても高音ながらも耳に痛くない柔らかい何ともいえない音色がした。 余韻も奥深く残る素晴らしい音色だった。 また、チタンで鍛造した、ぐい飲み、も紹介された。 これまたさまざまな音色で残響がずっと残る、 心にも残るデモンストレーションだった。

「シアター」で行われた第1回サイエンストーク

今日は少し飲み足りなかったし、 小腹がすいた人のために夜食の用意もあったが、 トークの終った23:00前には体力の限界に達して、 いまからバーで呑むというおぢさんの誘いを泣く泣く振り切って、 部屋に戻った。 おぢさんたち、元気だなぁ。。。。

7月21日(火) クルーズ第2日目

06:30〜07:00朝の体操
06:30〜07:30モーニングコーヒー
07:00〜08:30ご朝食
09:00〜10:30公開講座 T
11:30〜13:30ご昼食
14:00〜15:30公開講座 U
15:30〜16:30アフタヌーンティー
各種イベント
17:30〜20:30ご夕食
各種イベント
22:30〜23:30お夜食

昨晩は興奮してなかなか寝付けず、今日は今日とて、 興奮して5:00過ぎには何となく目が覚めてしまう。 朝は6:30からモーニングコーヒーやモーニングストレッチがある。 出てる人、いるんだろうなぁ。でも、とりあえず、朝風呂に入ろう。 風呂は疲れるから苦手で、家でもたいていシャワーだけが多いけど、 海の景色を見ながら朝風呂なんて、最初で最後かもしれない贅沢である。 またストレスからか最近は朝を抜くことが多いのだが、 クルーズでは7:00からの朝食にはちゃんと“参加”して、 久しぶりに朝飯もきちんと食べた。
…クルーズ中も毎日毎日しっかり食べたが、 クルーズから戻ったら、また朝は食べられなくなった(泣)。

昨日のウェルカムパーティから期待したとおりに、 かなりいいクラスのホテル並みの朝食だった (美味しさは、パンとオムレツとコーヒーが決定)。 しかし同じテーブルに朝から三膳も御飯のお代わりをしてるおじさんがいる。 今回のクルーズは年配の人がかなり参加していたのだが、 全員に共通しているのは、年齢以上にタフで健康そうな点だった。

2日目の朝食;パンなど毎日焼いているんだろう

食後、ちょっとデッキに出てみたり荷物の片づけをしたり一休みする間に、 兵庫県立大学公開講座パートIがはじまる9:00が近づいてくる。 最初は公開講座はサボって、どっかで仕事するつもりにしていたけど、 公開講座のすぐ後に、明日の日食の予行練習があるということで、 練習用に耐熱シートやデジタルビデオなども持参して、 公開講座を聞きながら、内職で仕事することにした。
とは思ったものの、実は、ほとんど仕事にならない。 今回は一週間近い長さなので、日食教材の作成や、執筆中の本の推敲や、 直前に依頼された日食紀行文など、大量の仕事を持参してきた (研究関係はさすがにその気にならないと思って片づけてきたが)。 しかし、なんともかとも、気分的にどうにも仕事をする気にならないなぁ。 やっぱ、出張扱いにしなくってよかった。 とりあえず、ホームページの文章などを書いておくことにしよう。
第1回目の公開講座は、 黒田さんの「皆既日食とその観測」および 先山准教授の「父島の地質」だったが、 あれ、写真撮ってないや。

いよいよ日食の予行演習だが、風がかなり強いので、 耐熱シートを拡げる演習はなしになり、現場の見学だけになる。 大型の客船だが、船上で空に向かって開いた場所は、それほど多くはない。 上から、
・見晴らしはいいけど狭い8階のトップデッキ、
・ちょっと中途半端な広さの7階のサンデッキ、
・一番広い6階のスポーツデッキ、
・6階から4階までの前部デッキ、
などにわかれて観測する予定らしい。 部屋番号などで機械的に割り振れば簡単だが、 ある程度は知り合い同士が一緒になれるようにとの配慮から、 自由度の高い割り振りになっているので、 場合によっては、デッキによっては、 込んだり空いたりのバラツキが出そうだ。 大部分のお客さんは指示に従ってデッキに出て行ったが、 何人かは勝手に見て回る客もいて、 他のデッキの混み具合を報告していた (自分たちのことだが)。

雨こそ降っていないが、強風の曇り空で、 明日が心配される

予行演習の後は11:30から昼食タイムである。 500人もの大人数なので、昼食と夕食は、 前半後半にわかれてテーブルに座るシステムになっていて、 クルーズ前半は、前半タイムに割り当てられていた。 2日目の昼食は掻揚げうどんや鰆の照り焼きなどの和食コースになっていた。 初日のウェルカムディナーで食べ過ぎになる人が続出することを考慮してだろう。 今日は朝食もきちんと食べたので、ほとんどお腹は空いていないのだが、 ビールの助けも借りて、そこそこには食べれるものだ。

2日目の昼食;うどんの汁も上品に美味しい味だった

前半タイムで昼食を終え、食事タイムには、 いつも真ん中のテーブルで目立っている森本おぢさんにも挨拶をした。 さぁ、いよいよ「黒田本舗」の開店である。 事前に目星をつけておいた、フリースペース的な3階「ベランダ」で、 最初の店開きをした。 それほど期待はしていなかったのだが、 通りがかりの人などがメインだが、 案外とお客さんがぽちぽちあって、 予定していた14:00までの2時間弱の間に、 たいした量ではないが、それでも予想以上にはグッズが売れた。 もちろん船内にショップもあるのだが、 日食記念グッズはないので、記念に買う人が出たようだ。 とくにTシャツは、5、6着も売れればいいだろうと思って、 10数着しかもって来なかったのだが、 初開店のこの時間だけで、7、8着も出てしまい、 このままだとTシャツは完売の雰囲気である (実際、他のグッズはだいぶ売れ残ったけど、Tシャツは完売した)。

黒田本舗メニュー; Tシャツは最初から在庫僅少である(笑)

グッズ販売が面白いながらもかなり草臥れて、 14:00からの公開講座IIは最後あたりにちょこっとだけ出て(笑)、 15:30からのアフタヌーンティーにはきっちり参加。 ほんっとに、ふだん以上に朝から晩まで食べてばっかりである。 その後でようやく、夕食までの短時間だが、 事前に是非こうしようと思っていた、 “空と海を眺めながら”の書斎モードに入る。 2日目ともなると、船内の実際の様子もわかってきて、 居心地のよさそうなテーブルもチェック済みである。 今日は生憎の曇り空で太陽は見えないものの、 ああ、やっぱ、至福のひとときだ。 これで、ネットが繋がって、旅費がかからなかったら(ここ大事)、 このままず〜〜っと、ここに居たいよお。 …後から考えると、ネットが繋がらない方がストレスがなくていい。。。

“マイ”テーブルにVAIO type Pを広げたところ;手前の封筒は一応いつでも販売できるように用意した黒田本舗の“行商セット”

さて、初日の夕食は美味しい立食だったが、 前半後半にわかれる2日目の夕食からは、 テーブルについてのフルコースらしい。 17:30からの前半部で、あまりお腹は空いていないものの、 ぼちぼちとダイニングルームへ向かう。 ああ、しかし、昨日からの期待どおりに、 美味しい料理がつぎつぎに運ばれてくる。 ふじ丸、アルコールは種類が少なくてイマイチだが (個人的には唯一惜しかった点である)、料理の味は絶品である。 もう、最初からフルコースすべては無理なのが明らかで、 ステーキはパスするつもりで、コースを進めた。

2日目夕食のメニュー
フルコースらしく口直しの氷菓もあった
森本おぢさんたちのゲストテーブル;ここは豪華にシャンパンか何かを空けている

夕食フルコースの後は、さまざまな各種イベントに混じって、 西はりま天文台のミュージアムショップ、ツィンクルが開店するタイムがあり、 こそこそっと(笑)黒田本舗も店を広げた。 ツィンクルでは、西はりま天文台のオリジナルグッズに加え、 海部宣男さんの新刊本や、寮美千子さんの本など、 なかなか品揃えが豊富である。 その一方、日食限定絵はがきとかクリアファイルはなくって、 案外と、商品はかぶっていない。

昼間ほどではないが、ちょびっと販売できて、 2日目の夜が幕を閉じた。 スカイラウンジで一杯だけ飲んで、12時ごろに就寝。

西はりま天文台ツィンクルの出店エリア;背後の壁にかかっているのは、大西(ひげ)さんの天体写真
反対側のテーブルで開店している黒田本舗;まだ商品展示の思案中
同じベランダではTシャツコンテストも開催中;海部さんご夫妻も熱心に眺めていた
ベランダ全体の様子

7月22日(水) クルーズ第3日目 <皆既日食当日>

06:30〜07:00朝の体操
06:30〜07:30モーニングコーヒー
06:30〜08:00ご朝食
各種イベント
09:00〜13:00メインイベント『皆既日食観測』
12:00〜13:30ご昼食
各種イベント
15:30〜16:30アフタヌーンティー
各種イベント
17:30〜20:30ご夕食
各種イベント
22:30〜23:30お夜食

皆既の朝、みな興奮して早く目覚める。 この2日間の曇天で風が強かった天気が、一転、 風は凪ぎ晴天となった。 空は青く、海はもっと青い。 すっごく睡眠不足だが、疲れも吹き飛びそうで、 ふだんならとうてい食べられないはずの朝食も、 ついつい食べ過ぎてしまう。

7時過ぎの海景色
北硫黄島(だと思う)
3日目の朝食(和食タイプ); これ以外に目玉焼きやベーコンもあった

そして、8:30に参加者全員がパシフィックホールに集結して、 日食観測の準備にかかる。 黒田さんが登場すると、今日の快晴を祝して、全員が拍手喝采である。 そして、諸注意の後、スタッフに誘導されて、 さまざまな観測場所へ全員が行儀よく移動する。

ぼくたちはもっとも広くて200人ほどが展開できる6階船尾のスポーツデッキへ。 みな譲り合いながら十分なスペースを取って、 9時過ぎには観測場所を確保して一段落した。 これから、部分食が始まる第一接触まで約1時間、 6分間ほど続く皆既日食まで約2時間半、 晴れた代わりに猛烈な暑さの中、 かなりの長丁場だが体力がもつかなぁ。

おおまかなタイムテーブルとしては、ふじ丸の観測地点である、
北緯25度18分
東経142度01分
においては、
・第一接触(部分食の開始):10:00ごろ
・第二接触(皆既食の開始):11:26ごろ
・第三接触(皆既食の終了):11:33ごろ
・第四接触(部分食の終了):12:55ごろ
の予定である。 観測中に時刻などの読み上げはあったのだが、 ちゃんと記録するのは忘れてしまった。 皆既の継続時間は、
6分39秒
程度だったはずである。

観測スペースごとに集まったパシフィックホール
観測準備中のスポーツデッキ;9時ごろだが日差しはすでに強烈
ピンホールテスト;ネットにあったデータから丁寧に作成したボード
ピンホール像(9:00ごろ);ボードの孔が揃っているので綺麗なピンホール像になっている フルサイズ
観測スタイルA;白の長袖パーカーが役立った
観測スタイルB;船のバスタオルも役立った
観測機材;ドリンクは2本分ぐらい飲んだ

しかし、スポーツドリンクで水分を補給したり、 ときどき1階下の自室に戻って休憩したりしているうちに、 汗びっしょりの中、いつの間にか第一接触の時間になった。 (観測していた6Fスポーツデッキに一番近い階段を下りたとこに、 自室が位置していたのは、ホントにラッキーだった)

第一接触(部分食の始まり)のここらへんから第四接触(部分食の終わり)まで、 およそ10分おきぐらいに、 “TOTAL SOLAR ECLIPSE”と孔を空けた「かず茶」作のボードを使い、 ピンホール像を撮影しているので、 まずそれらをまとめて並べておく。 ただし、完全にタイムを計ったわけではなく、 またデジカメのタイムスタンプの記録なので、 記録時間には数分の誤差がある。 このピンホール像はとても目立ったようで、 気がついた近辺の参加者たちが写真を撮りに来ていた。

ピンホール(10:17ごろ);そろそろ部分食は起こっているはずだが フルサイズ
ピンホール(10:30ごろ);もう太陽像の右下が欠けているのがはっきりわかる;ピンホール像なので実際の太陽は左上の方が欠けている フルサイズ
ピンホール(10:40ごろ) フルサイズ
ピンホール(10:50ごろ) フルサイズ
ピンホール(10:58ごろ) フルサイズ
ピンホール(11:12ごろ) フルサイズ
ピンホール(11:26ごろ);皆既日食に入る第二接触の直前;太陽はかなり細くなっている フルサイズ
ピンホール(11:43ごろ);皆既日食の終わる第三接触の少し後;月が通過した後で、今度は反対側が欠けているのがよくわかる フルサイズ
ピンホール(11:50ごろ) フルサイズ
ピンホール(12:00ごろ) フルサイズ
ピンホール(12:10ごろ) フルサイズ
ピンホール(12:14ごろ) フルサイズ
ピンホール(12:25ごろ) フルサイズ
ピンホール(12:40ごろ) フルサイズ
ピンホール(12:50ごろ);部分食の終わりごろ フルサイズ

またピンホール像については、もう一つ面白い実験をした。 円形や星形など形の違う穴を開けたボードを使うと、 投影面にボードが近いときには穴の形がそのままみえるが、 投影面からボードを離すとピンホール像になって、 どれも同じ欠けた太陽の形になってしまうのだ。 これはビデオで動画も撮影したが、ネットに貼るにはファイルが大きすぎた。

形の違う穴も フルサイズ
ピンホール像は同じ形になる フルサイズ

そして部分食が進むにつれ、 次第に欠けていく太陽は肉眼のちら見でさえわかる (危ないから勧めないが、食分が0.5ぐらいまで進んだとき、 一瞬だけ太陽を目にしたら形がはっきりわかった)。 さらに三日月ぐらいまで細くなると、気温の低下も体で感じられる。 そして皆既日食の始まる第二接触の数分前には、 船尾方向から皆既日食帯の暗さがわかりはじめる。 ここは少し説明が必要だろう。

今回の皆既日食では、小笠原諸島近海では 皆既日食はおおざっぱに北西から南東に向けて移動する。 そしてふじ丸も、少しでも皆既日食時間を延ばすために、 皆既日食帯のほぼ中心線に沿って、 皆既日食の進行方向である東南方向へ微速航行している。 ただし、皆既日食の進むスピードの方が船の航行速度よりはるかに速いので、 皆既日食の領域は船尾側から船に追いつくことになるのだ。 そしてスポーツデッキは船尾にあるため、 船尾方向から暗い領域が近づくのがはっきりわかるのだ。 すなわち、皆既日食の少し前ぐらいになると、 船首方向はまだふつうの空の色と明るさなのに、 船尾方向は青黒い色に染まっていくのである。

地上で観測する場合には地面に凹凸があったり、 地面の色合いがさまざまだったりして、 皆既日食帯の進行がわかりにくい場合もあるだろう。 今回の観測は海上だったために、 海面の凹凸は皆無であり、色合いも青一色なので、 船首方向と船尾方向の違いはもちろん、 船首方向から船尾方向へ変化する色合いも明瞭に見て取れた。 船体の7階と8階の構造物だけが、 6階のスポーツデッキから船首方向にみえる唯一の障害物だったが、 スポーツデッキのもっとも船尾側に陣取ったので、 船体部分も思ったほどには邪魔には感じなかった。

上の星型ピンホールの直後(11:06ごろ); 空はすでにかなり暗い青だが、天頂の方が暗く水平線はまだ明るいという、 みたことのない色合いである; 遠方の船影は、敵船だったか味方船だったか? フルサイズ
第二接触(皆既日食開始)の数分前のスポーツデッキ; 9時ごろの写真と比べるとスポーツデッキがすでにかなり暗いのがわかる
同じころの太陽と青くない空; 周囲の空が暗いのがはっきりわかるが、 皆既日食中と比べるとまだ少し青味が残っている フルサイズ
比較のために後日(8/4)に大学で撮影した太陽と青空; ふつうのデジカメだから自動調節しているが空の色合いがまったく違うのがわかるだろう フルサイズ

いよいよ、お待ちかねの皆既日食タイム!
金星や水星が見え始める中、ついに黒い太陽がその姿を露わにした。 何というか、まさに筆舌に尽くしがたいとはこのことだろう。 五十余年生きてきて、いろいろな経験をしたが、 その中でも一二位を競う素晴らしいセンス・オブ・ワンダー体験だった。
まずは、皆既日食中にだけ肉眼でもみえる太陽コロナ。 予想外だったのは、太陽を取り巻くコロナが意外に明るいことだった。 満月ぐらいとは聞いていたものの、実際にはもっと明るい気がした。 コロナをしっかり見たければ、直前の10分程度は、 アイマスクなどをして暗順応しておいた方がいいと聞いていたが、 いろいろ撮影しているうちに皆既になってしまった。 しかし十分に最初からコロナは見えるぐらい明るかった。 双眼鏡で見たコロナも絶品で、コロナルストリーマーがはっきりとわかった。
また、皆既日食の直前と直後に一瞬だけ現れるダイヤモンドリング。 これは予想外の衝撃だった。 とくにダイヤモンドリングの出現を動的に肉眼で追いかける感動は、 写真からは決してわからなかった(わかっていなかった)。 コロナももちろん綺麗だったが、それ以上に、 ダイヤモンドリングは超絶的に綺麗だった。
そしてマイ極めつけは全天周ランドスケープ。 これも話には聞いていたが、おそらく写真も見たことあるだろうが、 頭上に黒い太陽と星空が拡がる中、 360度全方位を取り巻く水平線がすべて、 まるで夕焼けのように赤くなっているのである。 そこには地上(海上)の景色とは思えないような、 とても奇妙な風景が拡がっている。 まるで別の世界に放り込まれたような感じだった。

皆既日食中のスポーツデッキ(11:33ごろ); かなり暗いのがわかるが実際にはもう少し暗かった
皆既日食中の太陽と黒い空(11:36ごろ); ふつうのデジカメは露光を自動調節するのでコロナの光がにじんでしまうが、 黒い太陽は中心に少しわかる;また太陽周辺の空には青味はなくなっている フルサイズ
水平線の景色(11:34ごろ); 太陽は頭上にあるのに…異様な光景である フルサイズ

わっはっは、ここで告白しておかなければならないが、 あまりに興奮してしまい、 その赤い水平線をぐるりと撮影したはずのビデオ、 ボタンを押し間違えたのか写っていなかった(爆泣)。 皆既が終わった後に、何だか変だとビデオをチェックして、 あれぇ〜と、しばし呆然となってしまった。 まぁ、自分の目にはしっかり焼き付けたのでいいとしよう。
後日振り返っての反省としては、 映像的には皆既日食自体のビデオ画像は使えなかった。 というのも、ふつうのデジカメと同様に、用意していたホームビデオでは、 露出を自動で調節するので、コロナの光がにじんでしまうためだ。 上のデジカメの写真のように、ズームアップすると中央に黒い部分がわかるが、 黒い太陽とコロナがきちんと写らない。 少しでも拡大できるように、事前にわざわざワイドコンバータまで用意したのに、 根本的な部分で十分に理解が足りていない。 露出時間の設定ができる一眼レフタイプのデジカメや、 同様な機能をもったビデオが必要である。 …というような初歩的な準備不足であった。 ただ、音声的には、“赤い水平線がみえます”とか、 “向こうには敵船がみえます”とか、 スポーツデッキの大騒ぎなど、 皆既中に実況中継していたのが残っていなくて残念である。

皆既日食が終わると、まだ部分食は続くが、 次第に日差しと暑さが戻る中、参加者はつぎつぎと撤収していく。 ちょうどランチタイムとなって、今回の大成功を祝って、 あちこちのテーブルで乾杯の声が上がっていた。 冷やしそうめんなどの和食風だが、一口フィレカツがとても柔らかくて美味しかった。

いまこの行を打っているのは、 皆既日食終了から2時間と少し経った時点である。 すでに青空が戻り、見渡す限り青い海が広がる中、 日本国内や他の地点での観測がどうだったのか不明だし、 そもそも日本がどうなっているのか存在しているのかさえ不明だ。 一つの村に匹敵する600人以上の人々を乗せたまま、 興奮醒めやらぬふじ丸は、日本へ向けて舵を切った。

第三接触(皆既日食終了)直前の太陽と青暗い空(11:38ごろ); まだ皆既中なので太陽と空は同時に写っている;金星か何かも写っている フルサイズ
同じころのスポーツデッキ(11:38ごろ); 多くの参加者はデッキに横になって眼視で皆既日食を楽しんでいた
第三接触(皆既日食終了)直後のスポーツデッキ(11:41ごろ);すでに多くの人が起きあがっている

3日目昼食のメニュー
もちろんぼくたちも乾杯
青い空と青い海;選ぶのに苦労した
午後には船上結婚式も開催された; TVでも放映されていたらしいが新郎新婦は奥尻島から参加したらしい; もちろん司会は黒田さん

午後のアフタヌーンティーの後、 第一接触(部分食の開始)から第四接触(部分食の終了)まで3時間以上、 スポーツデッキで撮影を頑張った同行者たちが午睡を取っている間に、 撮影した全部のデータを集約整理したり、 またそれらの中からぼくたちのパーティのベストショットを選んでみた。 残念ながら、ぼく自身が撮影したショットは入っていない(泣)。


●黒い太陽とコロナ(11:23:44ごろ); これは露光調節が可能な一眼レフで撮影したもの; 解像度を高くすると保存に少し時間がかかるので解像度は低くしてあるが、 その点がデジタルカメラの欠点かもしれない● フルサイズ

●直前のダイヤモンドリング(11:23:20ごろ); ここらへんは秒単位で変化が起こっている● フルサイズ

●赤い水平線(11:30ごろ); 写真以上に異様な風景だった; よくよくみると水平線には島影が写っているがこっちが北硫黄島かなぁ● フルサイズ

●魚眼レンズで撮像した全天(11:25:38ごろ); 露出時間の違うものが何枚かある中でもっとも実際の状況に近いと思ったもので、われわれのグループでのベスト・オブ・ベストかな● フルサイズ

●魚眼レンズで撮像した全天(11:13:06ごろ); 部分食ははじまっているがまだ明るい全天も比較のために載せておく● フルサイズ

●ワースト・オブ・ワースト(11:25ごろ); 左側の人物はビデオカメラをもって右往左往しているが、 このときにはすでにビデオは回っていない、 かなりお間抜けな絵●

そしてディナータイムの後には、21:00からまたまた、 ツィンクルと一緒に黒田本舗の開店である。 ただ、この夜は、パシフィックホールで、 「(自分はこんな写真を撮りました)フリートーク」大会なので、 お客さんはさすがに出足が鈍い。 それでも、姫路の「ひなの」ちゃんのお手伝いもあって、 そこそこの売れ行きであった。

この2晩ほど4、5時間しか寝ていないので、 さすがにこの日はベッドに入ったとたんに爆睡だった。

3日目夕食のメニュー
和食のフルコース;ふじ丸はメニューもよく工夫してあって、クルーズ半ばで胃が草臥れる今日あたりに昼も夜もさっぱりした和食がセットされている
ディナー中に撮影した夕日
開店準備中の黒田本舗; VAIOの画面には午後に選んだベストショットがスライドショーしている
呼び込み中の黒田本舗

7月23日(木) クルーズ第4日目

06:30〜07:00朝の体操
06:30〜07:30モーニングコーヒー
07:00小笠原 父島二見港 入港
07:00〜08:30ご朝食
各オプショナルツァー
11:30〜13:00ご昼食
各オプショナルツァー
15:30〜16:30アフタヌーンティー
各種イベント
17:30〜20:30ご夕食
18:00小笠原 父島二見港 出港
各種イベント
22:30〜23:30お夜食

もう何日も乗っていたようなクルーズもようやく後半である。 あまりにも深く熟睡していたためか、 たった4時間ほどでぱっちり目が覚めてしまった。 ナポレオンは毎日3時間ぐらいしか睡眠を取らなかったというけど、 しっかり熟睡すればそんなもんかもしれない。

大浴場は6:30からだが、もういいかと思って6:20ごろ行ってみたら、 一番乗りだった。 やっぱりすごく運動がいいのか、朝から珍しくお腹も空いて、 ベーコンやウィンナーも含めたっぷりの朝食を摂取。

4日目の朝食; 毎日の朝食は和風セットと洋風バイキングの両方が用意してあるのだが、 パンがとにかく美味しいので毎朝バイキングを選んだ

夕べ一晩、父島二見港沖に停泊していたふじ丸は、 7:00ぐらいには二見港へ入港している。 ただし、二見港の水深が浅いのだろう、 ふじ丸のような大きな客船は直接には接岸できないので、 通船(つうせん)に乗り換えての上陸となる。 オプショナルツァーのある人もない人も、 ほとんどの参加者は父島へ上陸したようだが、 午後のオプショナルツァーや後のことを考えて、 午前は上陸せずに体力の温存を図ることにする。 そしてお気に入りのテーブルで海を見ながら、 まずお客さんは入らないけど(笑)黒田本舗を開店しつつ、 これを書いたりしている。 いまからは、データの整理をしたり、お仕事モードに入ろう。


●およそ10分おきに並べた画像; 皆既日食前後の5枚の間隔はもっと短い; そうそう、一応、念のために書いておくと、 部分食の間はフィルタを装着して撮影されており、 皆既前後の5枚はフィルタなしで撮影されている● フルサイズ

●上の画像をつないで作成した速成アニメーション●

●魚眼レンズの画像をつないで作成した速成アニメーション●

ふたたび昼には豪華な昼食だが、 朝食をたっぷり食べたので、あまり入らない。 あっさりと食べて、通船で父島へ渡る。 小笠原はたしかに暑い。 小笠原の土を踏むことはもう二度とないだろうと思いながら、 汗まみれになりつつも少しだけ二見港を散策。 そして14:00の定刻になったので、マイクロバスで オプショナルツァーのVERA小笠原局の見学に出かける。 業界の人間としては、ここまで来たなら、 やはり視察しておくべきだと考えた、一応。 VERAへのツァーは午前と午後と4回ぐらいあったようで、 海部さんは午前中に行ってきたらしく、 午後の同じ便には森本おぢさんが一緒だった。 帰りは、スコールの中をふじ丸へ戻る。 行きの汗まみれよりは、ちょっと楽しい体験だった。

4日目昼食のメニュー
4日目の昼食はイタリアン風だったが半分も食べられなかった(泣)
メモボードの宣伝;いろいろあって面白かった
父島の埠頭から撮影したふじ丸; ぼくたちが泊まった547号室は 救命ボートが釣ってあるあたりの階層の右舷側少し船尾よりに位置していた
二見港の様子;停泊しているのはおがさわら丸
VERA小笠原局の電波望遠鏡;どのアングルから撮っても画角が足らない
業界の人間としてここは記念写真を撮るとこだろう
森本おぢさんと記念写真を撮る技術員のお兄さん; 今回のためにわざわざ水沢から出張ってきたとのこと


●おまけ;父島上空の彩雲● フルサイズ

一休みしながらデータの整理をしているうちに、 二見港をふじ丸が出港するアナウンスが流れる。 ふじ丸と二見港を結んでくれた通船のお見送りがあるので、 4階プロムナードデッキまでどうぞというアナウンスである。 ビデオとデジカメを手に出てみたら、 5、6隻の船が見送ってくれた。 別れを惜しむ参加者もおり、なかなか感動の演出であった。

通船のお見送り
二見港の入り口まで送ってくれた

今日も盛りだくさんの一日で、なんだかひどくお腹が空く。 最近はふつうではありえない状況だ(笑)。 今晩のディナーからは、食事パートは後半部になり、 食事開始は19:15分からである。 最終日のプレッシャー(お仕事)はあまり考えないようにしながら、 データを整理したり、ホームページを作成したりして、時間をつぶした。

そしてふたたび、豪華なディナーだが、和食なので助かる。。 牛肉の胡麻焼きというステーキも付いたが、肉がとても柔らかいので、 何年かぶりにステーキを食べてしまった。 さすがに眠くて夜は10:00ごろには爆睡してしまう。

ところで、毎食毎食何も考えずに美味しく食べていたが、 戻ってからよくよく考えてみると、これってすごいことじゃなかろうか。 というのも、毎食毎食、500人からの船客にフルコースレベルの料理が出るのだ。 最初の方で、一流ホテルが海に浮かんでいるようなものだと書いたが、 500人ぐらい泊まれる大きなホテルでも、泊まり客全員が ホテルのレストランで食事をするわけではあるまい。 またホテルやその他の大きなレストランでも、 結婚式などで500人のコース料理を出すことはあっても、 毎食毎食いろいろ違った組み合わせでとなると相当に大変だろう。 豪華客船の厨房には、トップの総料理長のもとに、 各分野での一流のシェフが何人もいるんだろうなぁ。

黒田本舗のTシャツは最後の一枚になった; 最終日のサイエンストークはまだ内容を決めていないけど、 とりあえずパワポの日食祝賀画面だけは作ったとこかな
4日目夕食のメニュー
4日目の夕食; 昨日の一口フィレカツも美味しかったけど、今晩の牛肉の和風ステーキも柔らかくて、 久しぶりに肉料理を食べてしまった
小さいがプールのある8階トップデッキ
6階スポーツデッキから眺めた7階および8階のスカイラウンジ「アクアマリン」;アクアマリンでは結局2日目の夜に一杯呑んだだけだったなぁ

7月24日(金) クルーズ第5日目

06:30〜07:00朝の体操
06:30〜07:30モーニングコーヒー
07:00〜08:30ご朝食
各種イベント
11:30〜13:30ご昼食
各種イベント
15:30〜16:30アフタヌーンティー
各種イベント
17:30〜20:30ご夕食
各種イベント
22:30〜23:30お夜食

夕べは10:00ごろには寝てしまったので、3:00過ぎには目が覚めてしまう。 どこまで興奮しているやら。 夕べも熟睡はしたようで、あまり眠くはないけど、身体、もつかなぁ。

4:30ぐらいから日の出を撮影しにデッキに出たが、 生憎と曇り空で、あまりわからなかった。 昨日の小笠原も天候が悪かったし、 皆既日食の日だけ、奇跡的に晴れた感じである。 2日目あたりには日の出がみえたようで、 グリーンフラッシュをみた人も何人かいたらしい。 ぼく自身は残念ながら水平線からの綺麗な日の出や日没の写真は撮れなかった。 この日以外も日の出の時間には目が覚めてはいたのだが、 身体がもう動かなかった(泣)。 でも、この日も、日の出の時間帯のデッキには案外とたくさんの人が出ていて、 なかにはジョギングしている人さえいる。

さらに6:00ごろには、前日からアナウンスのあった孀婦岩(そうふいわ)周遊。 これは何千メートルかの海底から海面に100mほど突き立っている岩らしい。 やはり最初で最後の出会いだろうか。

そろそろ日の出のころだが…
孀婦岩
違うアングルの孀婦岩

ちょうど大浴場の開く6:30になったので、 今朝も海を見ながら朝風呂に入る。 毎日もう天国のような生活だ。 3:00から起きているので、お腹も空いて、7:00から朝食へ。 またしっかり食べてしまい、やや食べ過ぎ感が爆発状態。

最初からも書いているが、ふじ丸のパン(“ふじ丸パン”とあった)は、 デニッシュ風のものも食パン風のものも、とてもいい味をしている。 クルーを合わせて630人分ぐらいのパンやクッキーは持参できないから、 交代制であろうクルーの賄い分まで含め、毎日何度か焼いているのだろう。 基本の味がいい上に焼き立てで、しかも毎回少しずつ違うのが出てくる。 これはたまらない。
最初のころ、食べ残したのを部屋にもってかえっていたが、 夕方までには誰かが食べてしまうぐらいだった。 最終日前日にも、おやつ用にたくさんもち帰ったけど、 食べ切れなくって、そのまま京都までお土産にした。 焼いて食べたら、これがまた美味だった。 帰宅後、28日(火)の朝にふじ丸パンの最後の一切れを焼いて食べた。

朝食後の8:30ごろには、現在では無人島になっている鳥島を通り過ぎる。 ゆっくり眺望できるように船の速度は落としてあるようだ。 またまた船首まで撮影しに行くが、そうか、 船の中を歩き回るから運動量がめちゃ多いわ。

5日目朝食のメニュー
5日目の朝食
鳥島;写真ではわからないがまだ火山が活動中で左側に少し噴煙がみえた
鳥島の住居跡;双眼鏡でみた人は電信柱もあると言っていた

今日も船内各所で盛り沢山のイベントが企画してあるのだが、 今日こそはゆっくり静養しようと思う、間もなく…
毎日発行される船内新聞で、10:00から操舵室自由見学が可能との記事。 やっぱりこれは行かねばと思い、客船の操舵室というものを じっくりみせてもらうという、またまた新しい経験をした。 7階前部にある操舵室はかなり広い部屋で、 種々の計器や実際にひいた海図などを丁寧にみることができた。 レーダーにも、通常のレーダーと波頭レーダーの2種類があるそうだ。 たしかに、船のてっぺんには2つのレーダーが回転していた。 詳しいしくみを知りたかったものの、レーダーのそばには人が群がっていて近づけず。 計器やレーダーの写真も解像度が低ければ載せていいとは思うけど、 一応、止めておく。

操舵室を出ると、ふじ丸のスタッフで顔見知りになった インフォメーションデスクのプリティなお姉さんが道案内をしていたので、 ツーショットを撮らせてもらった(!)。 いや、顔見知りとはいっても、 数日前に船室のトイレットペーパーがなくなって、 インフォメーションへもらいに行ったら、 そのお姉さんが対応してくれたぐらいだが。 ただ、トイレットペーパーがとても欲しかったので、 入手できたのがあまりにも嬉しくて、ついつい、 Thank you pretty girl! と言ってしまったけど(笑)。

この後、ついでに、船をぐるりと取り巻いている4階のプロムナードデッキを一周して、 周囲すべてが海ばかりであることを実感した。

ふじ丸の操舵室;かなり広かった
2本のレーダー
この後、逆光ではない写真も撮った、もちろん

朝から動き回ったので、その後は例によって、 お気に入りのテーブルに陣取り、 『数学セミナー』誌から頼まれていた日食紀行文の仕上げなどをする。 日食がどうなるかわからないし、 そもそもどれくらい時間があるかわからなかったので、 紀行文は仮の写真と文章でだいたい書いてきておいたのだが、 皆既日食を経験した後は、大部分破棄して大幅に書き直すことになった。 その作業自体は日食直後に興奮した状態でやったのだが、 書き直し文の推敲をして、帰京したらすぐに送稿できるよう、 仕上げやPDF化や図の整理などを行った。 その間に、同時開店していた黒田本舗にも、 お客さんがポチポチ来られて、なかなかに忙しい(笑)。 書きかけ中の本の推敲や抱えてきたその他の仕事は、 もはや完全にあきらめた。

そしてまたまた昼食タイム。 ほんと食ってばっかりな気がする。 後半部で13:00ぐらいにダイニングに入ったので、 結局またまた、そこそこに食べてしまった。

航海の初日からスタートしたTシャツコンテストは、 投票締め切りも間近になり、 展示場所を3階ベランダから、 人通りの多い2階の食堂前に移して、 投票を呼びかけている。 最終的には14点の応募があったらしい。 エントリーナンバー1と2がわれわれのパーティが出したもの。

黒田本舗開店中;販売への熱意はあまり感じられない(笑)
5日目昼食のメニュー;メニューを撮るのも習慣になった
5日目の昼食;皆既日食の乾杯以来、昼にもビールを飲むのが習慣になった
Tシャツコンテスト最終局面

昼食を慌ただしく済ませた後は、13:30から、 明日のサイエンストークの打ち合わせを、 サイエンストークを司会する大阪産業大学の真貝さん・理研の望月さん、および、 同じくトークをする毎日新聞の国枝さんと行う。 そう、こいつが最終日のプレッシャー(お仕事)である。 今晩発行される船内新聞に掲載するため、 トークのタイトルや簡単な説明文を決めて、 小一時間で打ち合わせは終了した。

今回のツァーでは、公開講座など公式行事とは別に、毎日、 ストレッチ、マジック、シャンソン、ピアノ、お茶席、琵琶、 写真教室、ショップ、フリートーク、サイエンスショー、 ナイトシアター、ソング、ロープワーク、チェンバロ、 Tシャツコンテスト、そして観望会など、 実にさまざまなイベントが、 朝の6:30から夜中の23:30まで、 それはそれはびっしりと企画されている。 世話人も演者もみなボランティアらしい。 NHKテレビで放映されたそうだが、船上結婚式まであった。 ちなみに、その新婚さんもさきほど記念グッズを購入してくれた。
そのような企画の一つで、 ほぼ毎日、2人の話者が約30分ずつ話す、 「サイエンストーク」というイベントが組んであるのだ。 事前に、黒田さんから、 謝礼は出ないけど日食ツァーでちょっと話をしてね、 と頼まれていて、何も考えずにハイハイと答えていたのだが、 (何の準備もせずに何も考えずにやっているだろう−それができる −森本おぢさん以外は) 結構みんな事前に入念な準備をして真面目にトークショーしてる。

やばいぞ、これは。
何の準備もしていない点までは、森本おぢさんと同じだけど(笑)、 少しぐらい考えておかなくちゃ。

とりあえず、昨日はツカミネタとして、 皆既日食の写真だけは即席で加工しておいたが、話の中身はどうしよう。 高校生相手の話はよくするし(たいていブラックホールネタ)、 天文に関心がある聴衆も比較的やりやすいが、 今回のツァーは、コアな日食ファンやごく一般の人が大部分で、 これはやりにくいなぁ。 ふつうはブラックホールネタで話すけど、 今回の参加者だと、かなりすべりそうだ。 おまけに、黒田さんの采配で、最終日のトリに回されてしまった。 真貝さんや望月さんからも、最後に上手にまとめて欲しいと言われるし、 ますますプレッシャーがかかる。 さらに、初日は100人ぐらいで一杯になる小さなシアターが会場だったが、 昨日あたりからは、参加者全員が入れる最大のパシフィックホールに 会場が変更になっている。 壇上から話すのは、ますます足が竦みそうである。 ううう、もう泣きそうだけど、また後で考えることにしよう。 ぼくの泣きそうな気持ちを反映してか、 窓の外も一転して荒れ模様の海である。 ネット世界から一週間も切り離されたのは、 インターネットが生まれて以来、2度目か3度目くらいだろう。 明日にはまた、ネット世界や現実世界へ戻らなければならないと思うと、 その意味でも少し悲しくなってくる。

睡眠超不足な上に満腹度が高いので、ときどき意識が飛びそうになるけど、 そろそろ15:30からのアフタヌーンティーの時間が迫ってきた。 このふじ丸、パンやおかずや毎回の食事だけでなく、 コーヒーもケーキやクッキーもとても美味である。 一流ホテル以上にほんとに美味だと思っていたら、 さっきイベントスタッフの人と話したとき、 クルーズ船としては一二位を争う旨さらしい。 船のクルーやスタッフのサービスも満点で、 完全にふじ丸ファンになってしまった。
船内新聞が毎日発行されることからもわかるのだが、 ふじ丸には簡単な印刷設備もあるようだ。 そして、朝昼晩の食事などはもちろんのこと、 アフタヌーンティーなどでさえ、 テーブルの上にはその日のメニューが立ててある。 細かいところまで行き届いたサービスだと思った。

アフタヌーンティーの後に、一応、それなりに真面目に、明日の下見をしようと、 今日のサイエンストークの時間にパシフィックホールを覗いてみたが、 海部さんの時間だからか、200人ぐらいは埋まっていそう。 プレッシャーレベルを上げただけで下見は終わってしまい、 すごすごとマイテーブルへ戻って荒れた海を眺めている。 黒田本舗への客足も途絶え、一人黄昏状態へ移行。

ホワイトボードが増え、 思い思いにメッセージが書かれはじめる
ぼくも一言メッセージを残したら、ググリますとすぐにアンサーが入っていた

今日はボーっとしていて、あまりお腹が空かないが、 夕食は後半部なので、そのころには食べられるかなぁ。
船上で最後のディナーは、やはりフルコースだったが、 美味しいので、肉料理をスキップしただけで、 結局、すべて食べてしまった。。。

5日目夕食のメニュー
5日目の夕食

そして、20:30からは、最後の大イベントのTシャツコンテストだ。 ずいぶんと多く−14点−の出展があったようで、 1時間の枠でコンテストタイムが取られた。 エントリーナンバーのNo1とNo2は、 黒田本舗専属デザイナーの「かず茶」制作の作品だ。 わざわざ1時間の枠が取ってあるので、 これは出展者のスピーチ付きだろうと推測して、 デジカメはもちろんビデオも用意して会場に入り、 ベストアングルなポジションに陣取った。 コンテストの結果は、参加者の投票(一人1票)と、 5人の特別審査員の投票(一人30票)で決まるらしい。 トップバッターのかず茶、最初にも関わらず、 堂々たるコンセプトスピーチだった。いいぞ、かず茶。 実際、その後のプレゼンテーションをみても、 (身贔屓を差っ引いても)おそらく素直でピカイチのアピールだった。 …やっぱ、身贔屓かなぁ(笑)。

さて、長時間の念入りな審査の結果、 最優秀賞は一番リキの入っていた小川さんのデザインに決まった。 やはりTシャツを販売していた人で、 Tシャツ前面と背面の両面に多色刷りで印刷したTシャツを、 サイズもSやMやLなど他種類を揃え、3000円で販売していたらしい。 黒田本舗の開店中にも来て、 “売れてますかぁ〜”と敵情視察(笑)していた。 うちは遊びなんで原価で売っているから、 完売しても利益でないんですよぉ、と答えたら、驚いていたけど。 小川さんのTシャツも完売したようで、 メッセージボードに追加注文受け付けますと出ていたけど、 送料込みで3000円でOKとあったから、 両面フルカラーだと利益でないだろうなぁ。

というわけで、最優秀賞は逃したが、 各特別審査員による審査員賞が5作品に授与されて、 幸い、エントリーナンバー1のTシャツがアクアマリン賞をもらえた。 この特別審査員賞を配慮するのに選考時間がかかったようである。

壇上の特別審査員の方々; 左からさすがに疲れ気味の黒田武彦さん、海部宣男さん、 ピアニストの福田直樹さん、琵琶師の片山旭星さん、 音楽ユニットアクアマリンのお二人
会場の様子
選考中の特別審査員席

7月25日(土) クルーズ第6日目

06:30〜07:00朝の体操
06:30〜07:30モーニングコーヒー
07:00〜08:30ご朝食
10:00〜11:00修了式
11:00姫路港 入港
11:30〜13:00フェアウェルパーティ
13:30下船開始

昨晩もベッドに入るや否や爆睡だったが、 やはり4時間ほど寝たら目が覚めてしまう。 そのままベッドにごろごろしながら、 今日のサイエンストークの話など、 考えているうちに、外が明るくなってきた。 でも日の出を撮影しに行く体力気力はなくて(笑)、 そのまま大浴場が開く時間までごろごろしていた。 結局、この5晩ほどはすべて、4時間程度、 レム睡眠2回分しか寝ていないが、 黒田さんなんかはほとんど寝ていないだろうなぁ。 … 実際、最終日に黒田さんが挨拶していたとき、 主宰者用にいい部屋とベッドを用意されていたけど、 そのベッドで寝たのは一晩だけだと言っていた。

荷造りなどをして、軽く&しっかりと朝食を摂って、一休みしたら、 いよいよ、8:30からのサイエンストークの時間が近づく。 準備のために8:00過ぎにパシフィックホールへ向かう。 まもなく定刻となり、望月さんの司会のもとで、 まず毎日新聞記者の国枝さんが記者生活の話をし、 そして最後に、ぼくが「ちょうどよい宇宙」というタイトルで話した。 200人弱の聴衆を前に壇上から話すので、 まぁ、いつものごとく、完全にてんぱってしまい、 何を話したやら(?????)。 最後のイベントであるサイエンストークがようやく9:30に終了。

6日目朝食のメニュー
6日目の朝食
サイエンストークがはじまったころの会場
トーク中
熱演中(笑);でも、てんぱってる

前の日に用意したパワポのPDFファイル; 日食や魚眼レンズの像の一部はアニメーションにして貼り付けてある; このアニメーションの部分では会場から歓声があがった

10:00からは、同じくパシフィックホールで、 公式行事である公開講座の修了式が行われた。 これには500人全員が出席して、パシフィックホールが埋まる。 参加者全員を代表して、米寿の参加者に修了証が授与され、 黒田さんの挨拶や、旅行会社の事務連絡などがあって、 修了式は滞りなく終わった。

長くて短いクルーズもフィナーレとなった。 11:30からは、ふじ丸で最後の食事、 フェアウェルランチの時間となる。 プログラムからはわからなかったのだが、 初日のウェルカムパーティや 最終日のフェアウェルパーティは、 どうやら、主催者の組むイベントではなく、 乗船者に対するふじ丸自身の感謝イベントのようだ。 フェアウェルランチでも料理やアルコールがふんだんに振る舞われ、 ビンゴゲームで盛り上がり、主催者や船側など関係者の挨拶もあり、 おもてなしの心に満ちた、とても楽しいパーティだった。 13:00過ぎから名残を惜しみながら下船が開始される。

フェアウェルランチのメニュー
船長の挨拶
乾杯
フェアウェルランチ;どれも美味しいプチケーキが6種類もあるのは国際会議でさえ滅多に経験したことない
ふじ丸特製のビンゴボード
盛り上がる盛り上がる
景品も残り少なくなりみな必死
黒田さんやボランティアスタッフ; ほんとにご苦労さんでした

16:00には無事帰宅。 完全にネットから切り離されていた一週間で、 何百通も溜まってはいないかとメールを開くのが怖かったが、 公式アドレス(56通)と個人アドレス(30通)合わせても 100通に満たず、ほっと一安心した。 明日からは現実世界に戻らないといけないが、 すでに世界は以前と同じではなくなったのも事実である。


最終日に配られた航路図 フルサイズ

後始末

例によって、大きなイベントの後は、後始末が大変であった。
・ホームページの作成
事前準備などはクルーズ前から書き始めていて、 クルーズ中もずっとリアルタイムで書き進めたが、 写真などを貼ると大幅に書き足す必要もある。 もちろんデジカメデータの整理やビデオデータの保存なども必要。
・紀行文
クルーズ直前に『数学セミナー』誌から日食紀行文を頼まれていて、 クルーズ中に仕上げて、帰宅翌日に送稿した。
・皆既日食報告
皆既日食があまりに劇的だったので、『数学セミナー』誌以外にも、 『天文月報』誌と『天文教育』誌に皆既日食の報告記事を書くことにした。 もっとも、同じ内容というわけにもいかないので、 『天文月報』誌へは観測状況や赤い水平線など研究よりの話を、 『天文教育』誌へはクルーズの紹介やピンホール像の実験など 読み物的で教育よりの話を書くことにした。 …また余計な仕事を増やしてしまった。
…そして山のように溜まっていた事務仕事。。。

幸いにして、そこそこの写真も得られたので、 とりあえず、この夏に予定されているさまざまな行事:
・堺市認定講習
・地学野外実習
・ひらめき☆ときめきサイエンス講座
・天文教育普及研究会総会
・免許更新講習
・SPP授業
などでは、毎回、皆既日食ネタが出せるなぁ。 にしても、行事の多いこと(泣)。

皆既日食翌日に、写真をトリミングして粗いアニメは作ったが、 帰京後、同じパーティメンバーが、 より精度のいいトリミングしてくれたので、 アニメーションはもう少し綺麗になった。

第一接触から第四接触まで(短いステップ);これはサイズを小さくしてある

●第一接触から第二接触まで●
●第二接触から第三接触まで●
●第三接触から第四接触まで●

●第一接触から第四接触まで(短いステップ)●
●第一接触から第四接触まで(中ぐらいのステップ)●
●第一接触から第四接触まで(長めのステップ)●
●第一接触から第四接触まで(かなり長いステップ)●

後日談 パート1:黒田本舗収支決算

ちなみに、とっても遊べた黒田本舗の収支決算だが。 もともと黒田丸ツァーを盛り上げるための遊び企画で、 利益も出ない価格設定にしていたが(しかも持参しきれなかったし)、 全然売れないのは寂しいなぁ、と思っていた。 幸いにも予想外に売り上げがあって、 投資した額のほぼ半分が回収できたという成績だった。 絵はがきセットやクリアファイルはだいぶ残ったけど、 Tシャツは数も少なかったし自分たちの記念用以外は完売した。
…ちなみに、大特典グッズ「ステキな本3冊セット」の該当者はお一方だけおられた。

うーん、そうだなぁ、これを読んでいる人の中で、 絵はがきやクリアファイルが欲しい人がいれば、 送料別になるけど8月中くらいは通信販売 をしようかしら。 気になる人はメールで連絡下さい。

後日談 パート2:クルーズのお値段

皆既日食当日にも、いろいろアナウンスがあって、 敵船やら味方船やら、おもしろい話もあったのだが、 当日、同じ海域には以下の5隻の大型客船が遊弋していたらしい。

ふじ丸(日本チャータークルーズ;2万3235トン)/500人/5泊6日/約140000円
ぱしふぃっくびいなう(日本クルーズ客船;2万6518トン)/500人/4泊5日/約200000円
おがさわら丸(小笠原海運)/460人/5泊6日/80000円
飛鳥II(郵船クルーズ;5万0142トン)/11泊13日/850000円
イタリア船 コスタ・クラシカ(コスタ・クルーズ)/

乗客数や泊数や最低料金などは、 ネットやその他の情報を集めたものだが、 まぁ、クルーズの一つの目安として欲しい (ふじ丸は今回は通常2人部屋を4人使用した)。 一般的には、いい目のホテルに泊まってフルコースを食べるぐらいのお値段のようだ。 飛鳥IIの世界一周クルーズは100日ほどで、 最低料金が400万円ぐらいのようだ。

後日談 パート3:行動記憶リセット

また後日というか、帰宅2日後の27日の月曜日に大学に行ったときのことだが。

人間、とてつもない体験をすると、相当なリソースを使ってしまうらしい。 長期的な記憶になっているはずの、日常習慣的な段取り記憶が落ちていた。
たとえば、大学の教員養成棟はC1棟とC4棟と外見が似た2棟がある。 生協から戻るときには、C4棟をスルーしてから、 自分の研究室が3階にあるC1へ入る。 この日も生協に行って戻ってきたつもりが、 1階や2階の廊下の様子が少し違うのを不審に思いつつ、 3階まで上ってから間違ってC4棟に入ったのに気づいた。 以前に一度だけ間違って入ったことはあるが、大ボケである。
また帰り際にも、1階まで降りてから、 いつもソファに放り投げているジャケットを忘れたことに気づいて、 3階まで取りに戻る始末だ。 同室の松本くんにも“記憶がリセットされてますね”とまで言われた。
ふだんは別のことを考えながら歩いていても、 無意識に判断して行動している部分が、 相当に抜けてしまったみたいだ。 この日はこんな誤動作が数々あったり、 あるいは、あれ、つぎは何するんだっけ、 と考え込む場面も多発した。 他の人も同じだったんだろうか。

後日談 パート4:幻の企画書

戻ってからツァー関係のものを整理していたら、 “黒田丸 お祭 企画書”と表記された大学ノートが出てきた。 1ページ目には、
Kuroda Factory Project 08' 0907
黒田様ファンクラブ 京都総本部企画
とある。 そうそう、最終的には「黒田本舗」という形にまとまったが、 もともとは1年ほど前からの黒田様ファンクラブ京都総本部企画だったんだ。

2ページ目からは、
・絵葉書
・Tシャツ
・クリアファイル
・原画注文販売
・黒田検定
・レコード
・サイン入り素敵な本4冊セット
などの企画が書いてある(3冊じゃなくて4冊だったんだ)。
残念ながら(笑)実現しなかったが、 「黒田検定」というのは、そのままの意味である。すなわち、
“くろだたけひこは、(1)黒田武彦、(2)黒田丈彦、(3)黒田多毛非古”や、
“KTの誕生日は、(1)、(2)、(3)”などから、
“KTの髪は、(1)自毛、(2)染めてる、(3)カツラ”
“KTの口髭はいつから、(1)中学、(2)大学、(3)**年前から”
“KTの初恋、(1)小1、(2)中1、(3)**”
“KTの好きな髪の色、(1)黒髪、(2)ブロンド、(3)赤毛”
“KTの好きな服、(1)和服、(2)洋服、(3)メイド服”
などなど、25問くらいまでは考えていたようだ。 黒田さんにインタビューして正答を聞いておかねばと思いつつ、 流れた企画である。
「レコード」は、 A面が「スターゲイザー(黒田さんを讃える歌)」で、 B面(カップリング)が「クロダヌキ音頭」と、 タイトルまでは決まっていたのだが、 残念ながら、作詞や作曲そしてレコード会社が間に合わなかった(笑)。

また準備物としては、
・腕章
・幟(のぼり)
・名刺
・名札
・スカーフ
・揃いのTシャツ
・ワイン、電気ブラン、リースリング
・(レコード用の)ギター
などのメモがある。 腕章や幟やスカーフは、襷(たすき)に一体化した。 ふじ丸は唯一の欠点というか、ワインの種類が少なかったので、 物理的に可能ならワインは数本持参したかったな。

他にも、ノートにはないが、そういえば、
・日食エンブレム
というのも考えている。 太陽と月と地球をモチーフに、いろいろなデザインを検討しているが、 どれも基本が円なので、エンブレム(紋章)にデザインしにくく、 時間もなくて、結局は見送られた。

よく遊んだ

おわりに

冒頭にも書いたように、皆既日食だけは、 実際に体験しないと、どういう意味があるのかわからないと思う。 ぼく自身がそうだったし。 だから、チャンスがあれば、是非、日食ツァー(+α)に行くことを勧める。

ぼく自身がとくに日食フリークだったわけではなく、 もともとはクルーズ目当てで日食は見えればめっけもんのつもりだった。 そして、期待以上にふじ丸のクルーズは素晴らしくて、 予想通りに「クルーズ病」には罹ってしまった。 帰ってからも即座に、ふじ丸のつぎのクルーズ予定や、 飛鳥IIで世界一周のクルーズをしたらどれくらいかかるとか (約100日で、400万程度)調べたりして、 貯金を全部はたけば行けそうだけど、 100日も休んだらクビになるなぁ、とか思ったりしたものだ。

一方、初日のオリエンテーションで、黒田さんが、 “みなさん、きっと日食病に罹りますヨ。 これはお医者さんでも治せないので、 船の医務室にいっても無駄です…” などと、参加者を笑わせていて、 ぼくもワハハと笑い流していたのだが。 職業柄、太陽の画像なんて飽きるほどみているし、 最近ではひので衛星の詳細なムービーを講義でみせたりもしていて、 まさか、「日食病」などと思っていたわけだ。 しかし、自分の目でみた“黒い太陽”は、 まったく違うものだった。 ものの見事に「日食病」に罹ってしまったのである。

美味しそうな料理の写真をみることと、 実際に美味しい料理を食べることとは、まったく違う。 皆既日食の写真はたしかに綺麗だが、あくまでも綺麗な写真でしかない。 やはり本物はまったく違うということだ。 ダイヤモンドリングが変化するときの光の躍動や、 赤い水平線の不思議な色彩は実際にみないことにはわからないと思う。 自分たちを取り巻く自然界のセンス・オブ・ワンダーは、 やはり自分自身の五感で捉えるのが一番大事である。 ほんと、何とかチャンスをみつけて、ぜひ皆既日食を体験してみて欲しい。 おそらく人生観が大きく変わるだろう。

すでに現実世界に戻って、雑用書類の山に埋もれているけど、 以前とは世界の見方が変わってしまっていることもわかる。 自分の世界がとてもちっぽけなものだったと思うし、 世事にあれこれと悩むのがあほらしくなって、 多少のことはどうでもいい気になってきた。 つぎに日本で皆既日食がみられるのは2035年の9月2日、26年後である。 80歳かぁ、少しやばいなぁ、まだ何とか生きているかなぁ。 クルーズ船は出るかなぁ。 などと、先のことを調べながら、 2012年11月13日のオーストラリアを、 一度は見ておきたかった南天の星空と併せて、 いまは本気で考えている。