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大阪教育大学を含む14か国の研究者からなる国際研究グループは、地球から約35億光年の距離に位置する活動銀河核 OJ 287 の継続的な観測から、その中心部に存在する約180億太陽質量の超巨大ブラックホールにおいてブラックホールの無毛定理が成立していることを観測的に検証することに成功しました。
ブラックホールとは、アルベルト・アインシュタイン博士の重力理論である一般相対性理論によって予言された、いかなるものも脱出できない暗黒天体です。ブラックホールの候補とされる天体は、これまでいくつも見つかっていますが、実はそれらが一般相対性理論から導かれる「真のブラックホール」であることはこれまで検証されたことがありませんでした。つまり、それらは「ブラックホールに似て非なるなにか」である可能性が常に残されているのです。一般相対性理論の基礎方程式によって記述されるブラックホールであれば、その特徴は、質量、自転、電荷の3つのみで決まり、ブラックホールの個性はそれら以外では区別できないことが示されています。これは「ブラックホールの無毛定理」として知られています。逆に言えば、ブラックホールの候補とされる天体において、ブラックホールの無毛定理が成立していることが示されれば、一般相対性理論の正しさが検証されることになります。しかし、この定理を実際に検証するためには、極めて強大な重力場の存在が必要とされ、現実の宇宙に存在する天体で実証された例はこれまで存在しませんでした。
ブラックホールの無毛定理が成立していることを検証したことにより「真のブラックホール」が現実の宇宙に存在していることが史上初めて明らかとなりました。さらに、同天体がナノヘルツ重力波の放射源であることを示しました。この研究成果は、故スティーブン・ホーキング博士達によるブラックホールに関する先駆的な理論的研究を立証することになりました。研究成果の詳細については、別添資料をご覧ください。
松本 桂 (大阪教育大学 天文学研究室)