『教職組ニュース』2001年5月9日より
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│リレーコラム 〜こんな授業やってます〜 第4回 │
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│福江 純(理科教育講座) │
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 HP(http://quasar.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/~fukue)見て下さい、って楽したいとこだけど(笑)。それじゃ許してもらえへんでしょうね。

 いささか抽象的だが、まずは授業に対するスタンスから話したい。授業に関しても、3つの“楽”で臨んでいる(つもり)。

【楽問】学問は、本来はすっごく楽しいもののはずだ。研究などでもそうだが、自分が面白いと信じていなければ誰も興味をもたないのが当たり前だ。だから講義などでも、まず自分が面白いと思うテーマについて話す。基礎的な内容の場合も、必ず自分が面白いと思う問題を織り込む。たとえば、数年前までは、天体力学の基本的な話では、スペースコロニーを引き合いに出していた。今年は、新旧カリキュラムの重複を避けるのを言い訳に、「ブラックホール宇宙物理学」を基礎から説き起こしている。

【楽習】学問に王道がないとはいえ、楽しくできればそれに越したことはない。ずっと前は、数値データから星の分類をさせる、いわゆる伝統的な演習をしていたが、こっちも学生もまったく楽しくないし、たいして効果もないので、すぐ止めた。この10年ぐらいは、実験の一部などで、学生自身に関心のあるテーマを探させて、それについて調査・報告・発表をさせている。プレゼンテーションの訓練にもなるし一石多鳥だと思っている。こっちも、毎年、意外な答えが出て楽しいし、学生自身の感想も概ね好評である。

【楽道】苦労は買ってでもしろという話もあるが、楽ができれば、それに越したことはない。講義をはじめた頃は、黒板を何度も消しては大量の板書をして、へとへとになっていた。講義が肉体労働だとは知らなかった。そこまでしんどい目をしても、たいして情報量は書けへんし、だいたい学生はノート取ってへんやんか。そこで、どうしたら楽できるか考えて出した答えが、講義ノートをきちんとした文章と図にまとめ、プリントにして配ることだった。講義中は要点だけ板書して説明し、細かいことはプリント読んどけ、で済む。もちろん、ときどき演習を入れて、さらに運動量を減らすことは忘れない。人数が多いとこの方法は使えなかったが、いまではインターネットに貼ればいいだろう。

 とまぁ、3つの“楽”だが、楽するためには、少しは“苦”もないわけじゃない。たとえば、マルチメディアコンテンツも、非常に有用な手段になったが、これは作成に死にそうなほど手間隙がかかる(でも、絵が動いたりするとめちゃ楽しいが)。新カリで、昨年、『自然科学概論』ちゅう講義を3回ほど担当したのだが、1回生のフレッシュマンだし人数も多いので、はじめてマルチメディアコンテンツを使った。一年ぐらいかけて素材を収集作成し、ハイパーテキストで組み合わせ、ノートパソコンと液晶プロジェクタを持ち込んで講義した。最近の研究会や講演会ではごく普通のスタイルだが、学生にとっては初体験だったようで、驚いたという感想が多かった。また簡単なレポートを課したが、楽道の原理に基づき、メール提出とした。ちなみに、“あなたは誰”とか“どこへ行くのか”という、きわめて哲学的な問いを投げたので、回答を知りたい方は、HPをご覧あれ。

 ところで、“こんな授業やってます”といっても、2回生まで新カリが進行していて、新設科目もあれば担当交替もあり、どんどん変化している。先にあげた、授業に臨むスタンス自体を変えるつもりはないが、内容については再構築している最中だ。実際、今年は、『理科教育内容学』ちゅうもんがはじまるが、これもどうしよう。来年は『総合学習』だっけ、そんな授業もはじまるなぁ。だから、とりあえずは、今年は“どんな授業をやろうか”という未来形で頭が一杯だ。ただ、将来的な希望の一つとしては、宇宙の開闢から地球の誕生そして生命の発生までを、物語にして語りたいと思っている。