ブリティッシュ作戦
−コロニー落としの力学−

『機動戦士ガンダム』
『機動戦士ガンダム0083』
『機動戦士Zガンダム』
『機動戦士ガンダムZZ』
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』

人類が宇宙へ住み始めた宇宙世紀
アースノイドとスペースノイドの対立
スペースコロニーを地球へ落とす
“コロニー落とし”

コロニー落としの歴史
宇宙世紀事件結果備考
UC0079 地球連邦政府に宣戦布告したジオン公国が, 南米の連邦軍本部ジャブローを直撃するために, L4のサイド2の第8号コロニー,アイランド・イフィッシュを落とす. 宇宙空間での戦闘で劣化していたコロニーは, アラビア上空で崩壊してしまい, コロニー前半部はオーストラリアのシドニーに落下し, 他の部分は四散して各地に被害をもたらした. 「ブリティッシュ作戦」
◆1
UC0083 ジオン軍残党のデラーズフリートが, 再生計画中のアイランド・イーズを略奪し, 北アメリカの穀倉地帯に落とす. コロニーはカナダ地区に落着し, 穀倉地帯は壊滅的な打撃を受ける. 「星の屑作戦」
◆1 ◆2 ◆3
UC0087 連邦軍治安維持部隊ティターンズが, スペースノイドとエゥーゴに打撃を与えるため, 月面都市グラナダにコロニー落しをかける. コロニーの核パルスエンジンを動かして進路を変え, グラナダへの落下を回避できる. 「グリプス戦役」
UC0088 ハマーン率いるネオ・ジオンがダブリンに落としている 「ハマーン戦争/第1次ネオ・ジオン抗争」
UC0093 シャアを総帥とするネオ・ジオンによって, このときに連邦軍本部のあったチベットのラサに, 5thルナが落とされる. ラサ潰滅. 「シャアの反乱/第2次ネオ・ジオン抗争」/「地球寒冷化計画」
UC0093 地球寒冷化計画の完遂のために, ネオ・ジオンが小惑星アクシズの落下を試みる. νガンダムの働きにより回避. 『逆襲のシャア』

コロニー落としの軌道力学は?


スペースコロニー

◆基本的な要請:地上に近い居住環境

  1. 重力は1G(=9.8m毎秒毎秒)程度.
  2. 空気の成分,気圧,気温,湿度なども同じ.
  3. 自然な太陽光による昼夜がある.
  4. 陸地や水圏を持つ.
  5. 景色や生態系なども地球に似ている.

◆スペースコロニーの構造
オニールの提唱した島3号モデルは, 2つの底面に半球をかぶせたような円筒形で, 円筒の直径は6.5km,長さは32kmという非常に巨大なものである. 中心軸のまわりを114秒に1回自転することで, 内壁での遠心力加速度がほぼ地表の重力加速度に等しくなる.
円筒の側面は6分割されていて, 交互に「陸地」(居住部分)と「窓」(採光部分)になっている. 島3号の「陸地」の部分の総面積は,およそ325平方kmほどで, ここに1000万人が住める見込みである. 「窓」の部分の外側には,3つの細長いモザイク鏡がつけられていて, コロニーの軸に平行にやってきた太陽光線を反射し, 「窓」とは反対側の「陸地」を照射する.
以上のような巨大なスペースコロニーの総重量は, 3000万トン以上と見積られている.

■ラグランジュ点■

◆スペースコロニーの設置場所:ラグランジュ点
コロニーには地球からの重力と月からの重力そして回転に伴う遠心力が働く. その結果,地球−月系のまわりの空間には, 3つの力の釣り合った力学的な平衡点が5つ存在し, 「ラグランジュ点」と呼ばれている.

ラグランジュ点のうち3つは地球と月を結ぶ線上にあり, 地球と月の間を第1ラグランジュ点L1(サイド5ルウム), 月の裏側の点をL2(サイド3ムンゾ/ジオン公国), そして月からみて地球の裏側の点をL3(サイド7ノア)と呼ぶ. 残りの2つのラグランジュ点は,地球と月の公転軌道面内で, 地球と月を頂点とする正三角形のもう1つの頂点の位置にあり, 月からみて公転軌道前方をL4(サイド2ハッチとサイド6リア), 公転軌道後方をL5(サイド1ザーンとサイド4ムーア)と呼ぶ.
L5(エルファイブ)などに設置されたコロニーは, 実際には地球と月以外にも太陽からの力も受ける. その結果,地球,月,太陽,そして(質量の無視できる) スペースコロニーの相互関係は,制限4体問題に帰着する. この制限4体問題は解かれていて, コロニーはL5のまわりを楕円に近い軌道を描きながら, 89日の周期でゆっくりとまわることが知られている. この軌道の全長は80万kmもあるので, 軌道上には数千基のコロニーを建設できるだろう.

落下するコロニーの軌道

◆コロニーの運動方程式

地球−月の共通重心を原点とし,月の方向をx軸とする

(x,y):コロニーの直角座標
(u,v):コロニーの速度のx,y成分
1:地球の質量
2:月の質量
f:質量比(=M2/M1=0.0123)
1:共通重心から地球までの距離
2:共通重心から月までの距離
a:地球と月の距離(=a1+a2
r:原点からコロニーまでの距離
1:地球からコロニーまでの距離
2:月からコロニーまでの距離


◆運動方程式の無次元化

長さの単位=地球と月の距離 a(=3.8×105km)
時間の単位=月の公転角速度Ωの逆数 1/Ω(=4.3日)
速度の単位=月の公転速度 aΩ(=1.03km/s)

ただし
f=0.0123,a1=0.0122,a2=0.9878

具体的には

無次元化した初速度の大きさ=0.3
x方向から測った初速度の方向=320.1°

月の裏側を通る軌道はよさそうだが, 残念ながら,地球に落下するまで17日もかかってしまう.

無次元化した初速度の大きさ=0.7
x方向から測った初速度の方向=310.29°

この場合もまだ時間がかかりすぎる. ブリティッシュ作戦は6日で終了させなければならない.

▼未解決の問題▼

落下時間を短くするためには初速度を大きくすればいいが, あまり大きくすると,月に落下したり,あらぬ方向へ飛んでいったりする.
微妙な計算ではあるが,初期条件として, 実際は,ラグランジュ点をまわる軌道上からスタートすべきだろう. またブリティッシュ作戦では,核パルスエンジンによる加速など, 微妙な軌道調整が行われたはずである.


参考文献:
『宇宙翔ける戦士達/GUNDAM CENTURY』(OUT9月号増刊)みのり書房(1981年)
O'Neill, G.K. 1974, Physics Today, Sept., 32.
ジェラルド・K・オニール『宇宙植民島』(木村絹子訳)プレジデント社(1977年)
ジェラルド・K・オニール『スペース・コロニー2081年』(小尾信彌訳)PHP研究所(1981年)
『機動戦士ガンダム大事典 一年戦争編』(ラポートデラックス)ラポート株式会社(1991年)
『機動戦士ガンダムMS大図鑑【PART.1 一年戦争編】』(EB.1)バンダイ(1989年)
『機動戦士ガンダム戦略戦術大図鑑〜一年戦争全記録』(EB.39)バンダイ(1991年)
『機動戦士ガンダム0083』角川書店
『一年戦争史』ホビージャパン(1997年)
横尾武夫編『新・宇宙を解く』恒星社厚生閣(1993年)37節


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