宇宙ジェット/Astrophysical Jet

虚空を切り裂いて進む宇宙ジェット(歳差運動によって螺旋状にみえる)
宇宙ジェットastrophysical jet)とは,中心の天体(原始星・コンパクト星・ブラックホールなど)から双方向に吹き出している,細く絞られたプラズマガスの噴流です.宇宙のさまざまな階層で発見されており,重力天体の周辺で生じる激しい天体活動に伴って形成される,かなり普遍的な現象だと考えられています.

宇宙ジェットの種類

具体的には,たとえば,星間分子雲の中で生まれたばかりの原始星の場合, 原始星の周辺から双方向に吹き出す,毎秒10数kmのガス流が発見されていて, 双極分子流(bipolar jets)などと呼ばれている. また,通常の星とおそらくブラックホールからなる特異連星SS~433の場合, ブラックホール(?)の近傍から,驚くべきことに,光速の26%もの速度の プラズマ流が噴き出しており, SS~433ジェット(SS~433 jets)と呼ばれる. そして,クェーサーや電波銀河など,いわゆる活動銀河の場合, その中心核のほんの1光年程度の領域から,銀河本体を中心として双方向に, はるか100万光年もの長さにわたって銀河間の虚空を貫きながら, 電波を放射するプラズマガスが高速で飛び出している ---電波ジェット(radio jets)と呼ぼう.

        宇宙ジェットの中心天体
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種類       中心天体        具体例
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双極分子流    原始星         L~1551
SS~433ジェット  コンパクト星      SS~433, Aql~X-1
系外電波ジェット 超巨大ブラックホール  3C~273, M~87
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宇宙ジェットの起源

星の誕生段階やX線連星そして活動銀河中心核など, 宇宙のさまざまな活動的現場で発見されている宇宙ジェット現象については, あのような細長い形状をどのようにして形作るかという点と同時に, ジェット流をどのような仕組みで加速するかという点も説明しなければならない.

まず,宇宙ジェットを駆動するエネルギー源についてだが,さまざまな証拠から, 宇宙ジェットの中心には重力天体(場合によっていろいろ)が存在しており, しかも中心天体を取り巻いて降着円盤が存在していると信じられている. そして,中心天体が,周辺から供給される物質を燃料として, 重力発電所およびエネルギー転換炉として作用しているのである. すなわち,中心の天体に向かって周辺領域から降り注いできた物質は, (おそらく降着円盤内における転換処理を経て) 中心天体に落下してくる際に解放された重力エネルギーを, 熱エネルギー,放射エネルギー,電磁エネルギーなどに転換している. 大部分の物質は,最終的には中心の天体に落下してしまうだろうが, 一部は排気ガスすなわちジェットとして吐き出されるのだろう.

その際,ジェットを高速に加速するためには,解放された重力エネルギーの一部をジェットの流れの運動エネルギーに転換しなければならない. その転換の方法としては,

などがある. 宇宙ジェットに限らず,外向きの流れを引き起こすためには, 何らかの駆動力(driving force)が必要である.


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