SS433


特異連星SS433のモデル

SS433は、わし座の領域にある14等級の特異星で、肉眼ではみることができないが、中口径の望遠鏡でも十分見える比較的明るい天体である(写真参照)。1977年にステファンソンとサンドゥリークが作成した輝線星のカタログ(彼らの頭文字を取ってSSカタログという)の433番目の登録天体であることからSS433と呼ばれている。


特異連星SS433とその周辺

多数の非常に強い輝線を出している上に、1978年、それら輝線が奇妙な振る舞いをすることがわかって、俄然注目を浴びるようになった。もう20年近く前だが、当時の業界は、SS433フィーバーとも言うべき、興奮の坩堝に叩き込まれたものだ。

このSS433の実体は、コンパクト星(おそらくブラックホール)と通常の恒星(おそらく表面温度の高い星)からなる近接連星系で、コンパクト星周辺から0.26光速もの速度でプラズマガスの噴流が吹き出ている、という描像が、現在ほぼ確立している。


特異連星SS433の描像

特異連星SS433の描像
(ページの裏がちょっと透けてる)

もっともジェット形成の仕組みが完全に解明されたわけではない(宇宙トーラスのファンネル内で形成・加速される、というのは一つの考え方←少し謙遜)。

このSS433で、伴星からコンパクト星に向かって流れ込んだガスがコンパクト星のまわりでどのような形状をしているかは、ジェット形成の機構にとって非常に重要な問題だが、これもいまだ決着していない(コンパクト星のまわりに幾何学的に厚いガストーラスができている、というのも一つの考え方←すげー謙虚)。

ともあれ、極めてユニークな天体だ、ということは業界人の誰も異存ないだろう。

ところで、ぼくたちはSS433系を斜めから見ているために、主星と伴星がお互いに隠し合う現象(「掩蔽」とか「食」と呼ぶ)が起こり、その結果、SS433を観測していると、連星の公転周期(13.1日)で明るさが変動することになる。実際の観測例を下の図に示す。2回ほど食がわかるが、3回目の食に当たる部分でフレア(急激な増光)も起こっているようだ。

特異連星SS433の光度曲線
(横軸は連星周期を単位にした時間,縦軸は明るさの変化)

一方、主星はコンパクト星を取り囲む幾何学的に厚いガストーラスであり、かつ伴星はロッシュローブを満たした早期型主系列星であるというモデルに基づいて、トーラスと伴星がお互いを隠し合う際の光度曲線を数値的に計算することができる。具体的な計算例を上の図に示す。

実際に数値シミュレーションしたCG画像についてはこちらをみて欲しい。主なモデルパラメータは、連星の質量比、伴星の表面温度、そしてトーラスの厚み形状である。モデル光度曲線を観測された光度曲線と比べた結果、質量比が1(コンパクト星はブラックホール)の場合も4(コンパクト星は中性子星)の場合も、トーラスが比較的厚く、また伴星の表面温度が17000K程度のモデルが観測によく合うことがわかっている。現在も、いろいろな要素を考慮しながら、モデルの精度を高めているとこだ。


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