ブラックホールの蒸発と未来 Evaporation and Future |
---|
ブラックホールの蒸発とはいったいどんな現象でしょうか?
ブラックホールの未来はどうなるのでしょうか?
|
■6■ブラックホールの生涯
【生涯】
ブラックホールが誕生した後の進化には、蒸発と成長と、二つの方向がある。一つはケンブリッジの物理学者ホーキングの唱えたブラックホールの蒸発だ。古典的な理論では真空に置かれた単独のブラックホールは、永久に存在する。しかし量子力学的な場の理論では、真空は無ではなく、そこでは仮想的な粒子・反粒子対が常に生成消滅を繰り返している。ブラックホールの地平面の近傍でこのような仮想粒子対が生成すると、それらが消滅する前に、片方の粒子(反粒子)がブラックホールの地平面内に落ち込み、もう一方の反粒子(粒子)が遠方へ逃げ去ることがある。これを遠方からみると、まるでブラックホールから粒子が出てきたように見えるだろう。このような蒸発によって、ブラックホールの質量はだんだん減少する。ただし蒸発の割合は質量が大きいほど小さく、ふつうのブラックホールでは蒸発は無視できる。
さて、質量の大きな星の死と共に誕生するふつうのブラックホールの場合は、どんな一生を送るのだろうか? はくちょう座X−1などに代表される、ブラックホールと比較的質量の大きな星からなる連星系の場合で考えてみよう(もちろん、ブラックホールが誕生する際の超新星爆発で、連星系が壊れずに生き延びなければならない)。 ブラックホールが誕生した後、何百万年か経つうちに、相手の星も進化して膨らむので、ブラックホールは相手の星の外層大気をはぎ取って吸い込み、次第に成長していく。ブラックホールが相手の星を吸い込んでいる間は、吸い込まれる途中にブラックホールの周辺で高温になったガスのために、きわめて激しい活動が起こっている。これがX線源はくちょう座X−1の現在の姿だ。やがて星は吸い尽くされてしまい、後には、だいたい星の質量分だけ重たくなったブラックホールが残るだろう。その後は、基本的には成長はストップする。もちろんわずかに存在する星間ガスを少しずつ吸い込んだり、ときには他の星やブラックホールと出会ってそれらを食べて少しだけ太ることもあるかもしれないが、いずれはまわりに吸い込む物質もなくなり、長い年月にわたり変化は起こらなくなる。そして膨張宇宙が未来永劫続くのなら、遥かな、ほんとに遥かな未来に、いずれは蒸発する運命にある。 |
ブラックホールは太るだけ! ブラックホールは永遠不滅? ↓ ブラックホールは蒸発し, はるかな未来には消え去る! |
---|