ブラックホールとは?
Who
ブラックホールほど名前のよく知られた学術用語はありません. ところが,その実体はあまり知られていないようです. ブラックホールとはいったいどんな天体なのでしょうか?

<ブラックホールは怖くない>


ニュートン力学のブラックホール

脱出速度

物体が天体の重力を振り切って無限の彼方へ飛び去る速度

打ち上げ動画1/打ち上げ動画2

地球の脱出速度
(第2宇宙速度

11.2km/s


脱出速度
打ち上げ時の運動の勢い vs 天体の重力の強さ
速度が大きければ大きいほど,運動の勢いも大きい 天体の質量が大きいほど,また天体の半径が小さいほど,重力は強い
mv2/2 vs GMm/R

mv2/2=GMm/R
v2/2=GM/R
v2=2GM/R

天体の質量が大きいほど,また同じ質量なら天体の半径が小さいほど, 脱出速度は大きい!


脱出速度が光速に等しくなる天体

光も脱出できない

みえない!

c2/2=GM/R
c2=2GM/R
R=2GM/c2


もし,天体の質量が非常に大きいか,あるいは天体が非常に小さいと, その天体の脱出速度は光速を越えてしまう. すなわち, その表面からは光でさえ脱出できないような天体を思い浮かべることができる.


ブラックホールの模式絵

これがニュートン力学が描くブラックホールのイメージだが, 光は質量をもたないので,このイメージは正確ではない.


アインシュタインのブラックホール

ブラックホールは,一般相対論を用いて, はじめて正しく記述することができる.

一般相対論では,重力の法則は, 時空のゆがみという空間の幾何学に置き換えて考えられる.

曲がった空間

平らな空間
曲がった空間
曲がった空間

曲がり方の度合い

平らに近い 曲がっている 大曲り

重力が強い=時空の曲がりが大きい

光は,2点間の最短距離の経路を進む
(最短距離の経路を進むもの=“光”と定義)

一般相対論では曲がった空間に沿って進むため,光の軌跡も曲がる
(船舶や航空機の最短航路/大圏航路が, 地球表面/球面上では曲線になるのと同じ).

もし,天体の質量が大きくなるか,あるいは半径が小さくなると, 空間の曲がりもどんどん大きくなり,ついには, 光さえもその曲がりの中から逃げることができなくなる.


ブラックホールの模式絵

一般相対論が描くブラックホールとは, このような時空の曲率が大きくなって, 光でさえも脱出できなくなった天体なのだ.



ブラックホールの常識のウソ その1

「ブラックホール」ほど一般によく知られた学術用語はないでしょうが, 一方で,案外と誤解も多いようです.

たとえば,ブラックホールが何でも吸い込むといっても, それはブラックホールのすぐそばまで行った場合の話で, 遠方ではふつうの星の重力作用と変わりません. 実際,太陽を同じ質量のブラックホールに置き換えても, 地球の運動には何の変化も起こりません.

いろいろなブラックホール
天体質量半径シュバルツシルト半径
地球5.98×1024kg6.38×106m0.9cm(1円玉くらい)
太陽1.99×1030kg6.96×108m3km
中性子星1.4太陽質量10km4.2km
ミニブラックホール1012kg10-13cm
典型的なブラックホール10太陽質量30km
超大質量ブラックホール1億太陽質量2天文単位
1太陽質量 = 1.99×1030kg

ブラックホールの世界へ
Go to Top Menu