ブラックホール天体 はくちょう座X-1

−観測とモデル光度曲線−

1997年度 卒業研究 上園美穂

はくちょう座X-1(Cyg X-1)は,最初に発見されたブラックホール天体です. はくちょう座X-1は, O9型の超巨星HDE226868とブラックホールからなる, 公転周期5.6日の近接連星です. 超巨星の質量は約30太陽質量で, ブラックホールの質量は10太陽質量程度だと見積もられています.

左:はくちょう座X-1(大阪教育大学)

はくちょう座X-1の要素
可視光天体(伴星)O9.7Iab/V=9
距離約2.5kpc
連星周期5.6017日
視線速度振幅約75.0 km/s
質量関数約0.241太陽質量
軌道傾斜角約27°
離心率0.1未満

はくちょう座X-1のVバンド光度曲線(1997年10月10日)

はくちょう座X-1のIバンド光度曲線(1997年10月10日)

はくちょう座X-1のX線光度曲線(大阪大学北本俊二氏 提供)

X線光度曲線のパワースペクトル

はくちょう座X-1のアニメーション
はくちょう座X-1は, 太陽の約30倍の質量をもつ青色超巨星(青い方)と, 太陽の約10倍の質量のブラックホール+周辺のガス降着円盤(赤い方)が, 共通重心のまわりを5.6日の周期で公転しています. 相手の星を隠す食現象は観測されておらず, 軌道傾斜角(連星の公転面に垂直な方向と視線のなす角)は, 約30°程度だと推定されています. 降着円盤は周辺部では温度が低いのですが, 中心に近づくにつれ温度が高くなっていて, ブラックホールの近傍では (ブラックホールは図のスケールでは見えません), ガスの温度は1千万度もの高温となり強いX線を放射します. このX線が,はくちょう座X-1から放射されるX線の正体です. また降着円盤の中心付近から放射されるX線は, 降着円盤の周辺部分や超巨星の降着円盤側の面にあたって, その領域のガスをさらに暖めます(照射効果).


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