国際天文学連合(IAU)第23回総会 in 京都



後半:メインディッシュ

8月26日(火) 分刻みのヘビーな一日

わりとゆっくり寝て,少しだけ元気ヒーリング. さぁ,もう一週間!
会場には1時過ぎに着いたので,まずSidereal Timesをゲットして, ついでにロゴ入りTシャツも色違いをゲット.


T-shirt of 23rd IAU General Assembly

ポスターも3巡目に入り,急いで見て回る. おう,もう2時だ,午後の講演が始まる.慌てて会議室へ向かう.


One of Posters

さて第二週の今週は,
S186 "Galaxy Interactions at Low and High Redshift" (銀河の相互作用に関するシンポジウム)
S187 "Cosmic Chemical Evolution" (宇宙における元素形成に関するシンポジウム)
S188 "The Hot Universe" (X線でみた熱い宇宙−X線宇宙像−に関するシンポジウム)
の3本立てだ.
このうち,シンポジウムNo188は,X線で観測した宇宙, すなわち高温プラズマのさまざまな天体現象に関するシンポジウムで, 日本が打ち上げてきたX線衛星,とくに現在も観測を続けている ASCA衛星の成果をバックボーンとしたシンポジウムである. ぼくの関係するポスター発表も多いので, 後半の今週は,シンポジウムは一本に絞ることにする. しかし,このS188(シンポジウムNo188)と並行(裏番)で, ブラックホールまわりの面白トピックが満載の JD18(ジョイントディスカッション)が開催されている.

しばし悩んで,とりあえず,JD18を聴きに, 2階のRoom B2へ行ったら,目当ての講演はキャンセルだった. そこで,急いで,1階のS188をやっている筈のRoom Dへ降りたら, 何と部屋割りの変更で,S188は2階のRoom A! 再び,2階へ上がって, S188 "Hot Universe" のオープニングにかろうじて間に合った. でも,もうヘトヘト.
X線で観た宇宙の概観や,太陽X線衛星Yohkoh(陽光)の成果の講演に続き, 国立天文台の柴田一成さんの磁気流体力学的ジェットに関するレビュー. いつもながら,よくまとまっていて,わかりやすいトークだった.


Dr. Kazunari Shibata

3時半から30分ほどの休憩時間に, チェルパシュチュク氏や理化学研究所の河合さん,小谷さんたちと, メインエントランスで待ち合わせて,滞在の打ち合わせ. Cherさんは,スケジュールについては安心したようだが, 旅費などについてまだ少し心配している. この前に会ったときに,国際会館から大阪教育大学まで, そして次の日に新大阪まではちゃんと連れていく, またその間の滞在費はぼくの方で面倒をみる, と言っておいた(言い換えれば,その後は知らない,ということ). 東京の方の滞在は,理化学研究所や国立天文台でやってくれるのだろう. Cherさんは,大阪から東京までの新幹線代を払ってくれるかと, 河合さんに聞いている.ぼくは知らん顔.河合さんも聞こえないフリ. ちょっと面白かった.

4時からは,ふたたびJD18 "High Energy Transient" で, ブラックホールがらみの話を聴きに行く. おっと,その前に,夜の接待の予約を入れなくっちゃ.
さて,ブラックホールだが, いまはもう,宇宙にブラックホールがあるかないかは問題ではなく, ブラックホールがいくつあるかが議論されているのが,印象的だった. 講演をいくつか聴いたら,もう次の待ち合わせの時間.
もう5時過ぎだが,時ならぬ夕立.久しぶりの雨である.


A Sudden Shower

イベントホールへちょっと寄って,ちょっと頼み事をし, 三鷹光器の交替で来た新人さんにも挨拶してくる.
ああ,メールを覗く暇がない. 今日はもう,ほんとに分刻みの移動で,ほとんどガス欠状態.

5時半,最後の待ち合わせ. ターナーさん,ワンブスガンスさん,梅村さん一家,嶺重さんたちと, メインエントランスでランデブー. 6時頃,総勢6.5人がタクシーに分乗し, 百万遍近くのオサケと料理の美味しい居酒屋へ向かう. 京大の学生さんも人数に勘定して予約を入れておいたのだが, ブラックホールに関する招待講演の方を聴くことにしたようだ (ぼくも超有名人のNovikovの講演は聴きたかったのだが…). 善哉ぜんざい. ちょっと堕落に走った大人の方は, 明日は離日するターナーさんを囲んで,接待,接待!
みんな,専門用語は詳しいんだが, “はもおとし”だとか,“なす田楽”だとか,“エビ茶蕎麦巻き”だとか, “イワシの梅香揚げ”だとか,料理の説明が全然できない. とりあえず,チャレンジとかトライとか言って,勧めるわけだ. “どじょう柳川”なんかもOKだったみたい.
ターナーさんは,大の日本びいきで,日本食も好きなんだが, ワンブスガンスさんも気に入ってくれたようで,まずはよかった. またターナーさんは相撲も大好きで,相撲談義に花が咲く. 相撲の対戦のルール(組み合わせ)がよくわからずに,みんな?状態. (同部屋では当たらないけど,東同士とかは当たるよね? 星が先行したもの同士をぶつけたりもするよね? やっぱり,“面白く”がルールかなぁ) 結局,相撲協会に聞かんとわからん,ということになった.


Dr. Wambsganss and Prof. Turner in front of Dojyo-Yanagawa

8時過ぎに居酒屋をお開きにして, “うちのカミさん”とミーちゃんは帰宅,残りは近くのレストランで, コーヒーを飲みながら議論をする. ビール,2杯も3杯も呑んだ後なのに, X線衛星ASCAのプロポーザルとか, すばる望遠鏡をどう使うかとか,まっとうな議論! 京大の院生が書いている論文も,真っ赤に添削されている. みな,なかなか元気だ.

10時頃,やっと,ヘビーでファインな夕べが終わった.
昨日から連ちゃんだし(明日も続くので), 今日はビールだけにしていたのだが, なんだか,アルコールの分解ペースが落ちているような気がする(^^;.

朝の3時頃,ネットにアクセスしたら,メールが入っていた. やや雲があったが,卒論用の観測を始めているようだ. ぞのちゃん,すとーちゃん,頑張ってね. ウニくんよろしく.

8月27日(水) バンケット

今日はゆっくり起きて,珍しく昼ブロに入る (夕べはさすがにしんどくて,入る気になれなかった). さあ,いよいよバンケット(晩餐会)の日だ. 今回のIAU総会に付随する行事の中でも最大のイベントが, 今夕のバンケットなのである (もっとも,晩餐会と言っても,こういう国際会議の晩餐会は, たいていは立食パーティがふつうである). 場所は,えらく張り込んで,京都でも最高級(お値段も最高)の都ホテルだ. 月曜日から3連ちゃんだが,さすがにバンケットは外せない.
昼間は家でたまった仕事をしていて,国際会館へは行かなかったので, 時間がはっきりわからない. とりあえず,少し早めに出て,6時に都ホテルに着いて, 受付で尋ねたら,やはり始まるのは7時半からだった. ロビーでゆっくりしようかと振り向いたら, 学生とばったり会った. 都ホテルのラウンジでお茶がしたいという希望(=命令)が下って, 少し時間をつぶすことにする.
7時になったので,もうそろそろと思って会場に行くと,もう,人の渦. 一瞬,しまったと思ったが,あはは,料理はまだで,食前酒のタイムだった. しかし,さすがに1000人規模になると,すごいの一言. もー,人がうじゃうじゃいて,何がなにやら,どこがどこやら状態.


Banquet at Miyako Hotel


Kagamiwari - Opening of the Banquet


Shishimai - Entertainment in the Banquet

今日は,ワインに走る. バーでワインを頼んだとき,ハウスワインの赤を勧められるが, 冷やした白の方が好きなので,最初は白にしてしまった. しかし赤の方がコクがあるという話を聞いて, 2杯目は赤をもらったら,確かに美味しい. ワインの味はあまりわからない方だが,それでも美味しいと思った. 結局,その後はずっとハウスワインの赤ばっかり呑んでた.


Catch the Big Names


Yumi, Yuki, Dr. Sawa


Prof. Spruit, Prof. Kato, Yumi, Yuki, Mr. Manmoto


Dr. Taniguchi (LOC) and Mr. Takeuchi


Yumi and Director Kuroda at Nishi-Harima Astronomical Observatory


Yumi, Masao, Gen-chan, Kahoru-san


Yumi and Dr. Tsunemi (LOC)


バンケットも終盤,テーブルに積んである枡を持って帰っていいのか, と聞かれたので,うん,ああいう枡はお土産だよと, まわりのテーブルからかき集める. ついでに,(都ホテルの)スプーンとかももらって帰ったら?と, 少し集めてきたけど,それはいいと断られた.みんな行儀がいい.

10時頃,流れ解散.
今日は,女の子の指令で(男の子の)院生が料理を取ってきてくれた (ほとんど狩猟時代のノリ). ぼくもその側で獲物を失敬して楽をするが, 料理は全体的に炭水化物系が多かったようだ. というのも,全体の予算は1200万ぐらい (一人あたり1万円程度)だと聞いたが, 都ホテルで1万円程度だと,あんまり期待はできないわな,そりゃ. だけど,デザートのプチタルトとワインの赤は,絶品に美味しかったので, よしとしよう.

8月28日(木) 天文教育国際フォーラム

今日は,京都駅前の京都コンピュータ学院で, 天文教育に関する国際フォーラムが開かれる日である. IAU総会に来日した各国の教育関係者と, 日本の教育関係者の交流を深めようという企画だ.
京都で行うということで関西在住の天文教育関係者, うちの横尾さん,西はりま天文台の黒田さん,西成高校の半田さん, 大阪府科学教育センターの小林さん,京都コンピュータ学院の作花さん,  …まぁ,いつものメンバー… が実行委員になって準備をしてきた. ぼくも,いつのまにか実行委員の末席に名前が入っていて, 気づいたらポスター発表まで割り当てが入っていたりする. (でも何の仕事もしていないので,今日は身体で払わないといけないかな)

もともとIAUの直後に開催するという話だったのだが, フタを開けたら,きっちりIAU期間にダブルブッキングして (ここらへんは,いつものことだが,非常にアバウト), ええー,話が違うよ,とブチブチ言いながらの参加となった. 実際,IAUの方のポスター発表は,ぼくは4巡目で, 今日がポスターの張り出し初日だったりする. 仕方ないので,ポスター貼りは人に頼んだ (2日前のちょっとした頼み事がそれ).
ゆっくり出ていこうと思っていたのだが, 昨日のバンケットで,“(明日は)2時頃にでも行くよぉ”と,言ったら, 即座に“そんなの許せません!”と一蹴されてしまった. ちょっと怖かったので,少し早起きした. (でも,どうせ午前中は役に立たないんだけど).

11時頃に会場の京都コンピュータ学院に着いたら, 受付の設営などは済んでいた. そこで,受付を済ませた後,5Fのポスター会場の部屋へ上がって, 自分のポスター発表をセットアップ. (といっても,資料のコピーは頼んでいたので, 用意してあるパソコンにCD-ROMを突っ込むだけ. 1分で終わった.)
日本で作成した天文教育用マルチメディアソフトの紹介,ということで, 日本天文学会と日立アプリケーションシステムズで作った "StellarLab" という Win95 用のCD-ROMソフトを演示する.


Multimedia Software for Astronomical Education: StellarLab

講演会は午後からなので,その前に手伝いの学生たちと食事に行っておく. 朝も食べずにかけつけたので,天ざるを張り込んだ.

午後1時,京都コンピュータ学院6Fのメインホールを使い, 東京学芸大学の水野天文教育普及研究会会長や, 国立天文台の磯部IAU天文教育委員会委員の挨拶に続き, トロント大学の J.R. Percy IAU天文教育委員会委員長の講演で, フォーラムがスタートする.


International Forum for Astronomical Education at Kyoto Computer Gakuin


Yumi, Makiko, Miho

予想では,100人も集まればいいか,という程度で, あんまり少ないと,広い講演会場が寂しいなと言っていたのだが, 100部用意した予稿ファイルは早々になくなり, 200部用意したプログラムも出きってしまう. 期待以上の盛会で,磯部さん,めちゃ嬉しそう.
間にポスター発表用の休憩を挟みながら,5時過ぎまで講演が続いた.


Poster Session

さてぼくは,講演の冒頭は聞いていたのだが,眠くなりそうだったので, もう少し役に立つために,穴の開きそうな受付のバックアップへ回ることにする. (実行委員の性格をよく知っている, つまり穴が開きそうな所をよく知っている) 大阪市立科学館の嘉数くんも応援に来てくれる. 実際,受付に行ったら,フォーラムに参加する外国人が着いていたり, 用意したプログラムが品切れになっていたり,予想通りのパニック状態. 受付を手伝ってくれた女の子たちと話すためだとか,邪推しないように. (まぁ,ちょっとは話していたけど).


Shiho-chan, Kotowa-chan, Mieko-chan with Yokoo-san

横尾さんの分だけ載せるのもフェアではないかな,やっぱり. ぼくも一緒に写りましたです.


Mieko-chan, Shiho-chan, Kotowa-chan with me
なお,受付のバックが違うのは,フォーラムの開始に合わせて, 受付を玄関から6Fメインホール入り口へ移動したため. どうでもいいけど,気になる人もいるだろう.

さあ,6時,懇親会だ. 懇親会は,京都コンピュータ学院の6Fラウンジで. ここはいつ来ても眺めがいい. 今日も快晴で,ビールを呑みながら地平線に沈む夕日を眺める (昨日のワインがあればもっとグーだった).


Sunset in Kyoto

7時過ぎに懇親会をお開きにした後は,後かたづけをして, スタッフを中心に慰労会.人数は30人ぐらいいたろうか? 京都駅東のビアホールですよ,と言っておいたのに, 年輩の人間の多かった(したがって厚い財布の多かった) 先頭集団はどっかに消えてしまう.ヒドイ. でも,逆に言えば,後ろの方は!?,これはこれでOK.
ビアホールでは,いくつかのテーブルに別れて座ったが, ゲンちゃん,ベストポジション,両手に花束状態. 一方,ぼくのテーブルは,世話人の一人の半田さん, OBで高校の先生をしている渡辺くん,有本くん,そしてぼくが, 手伝いの女の子たちを囲んで,しっかりオヤジ状態.

9時過ぎにお開きになって帰宅したが, テレビを観ているうちに,前後不覚に寝てしまった. でも,2時には目が覚めたりして. だけど,さすがに今日は,仕事をする気力が出ない. そこで,久しぶりにやりかけのゲームをしたが, 2週間ほどやらなかったので,やりかたを忘れている. すぐ死んだ.

8月29日(金) 祭り is オーバー

IAUシンポジウム自体は明日まであるのだが, 個人的には今日をラストにする. 午前中に聴きたい講演があったので, 10時頃に死ぬ思いで起きる. でも,ちょっと時間がやばい. 頭寝たまま通りまで出たらMK(タクシー)が来た.やた!

11時から,銀河系内の相対論的ジェットの話や,X線星の話. そして(最近の降着円盤の業界では)大流行の advection-dominated accretion flow (降落円盤)について, ナラヤンNarayanさんのレビュー.

昼になった.国際会館の食堂があまりにコストパフォーマンスが悪いので, 7人ほどで近くのレストランへ. カール・セーガン原作のSF映画『コンタクト』が, 9月半ばからロードショーなんだが, IAU総会の会場で試写会の招待状がもらえたらしい. 惜しいコトした. 見に行きたいよぉ(一人では寂しいけど).

午後もホットユニバースの会場で, コーヒーブレイクの時間まで講演を聴く. 今日は写真撮るのも忘れてた.

午後の後半は,ポスター発表の4巡目を見るために,イベントホールへ. とぉ,イベントホールの入り口で立ち往生. なんと,ロゴ入りTシャツ,1500円から1200円にディスカウントしてる!! ええ”っ.この前はディスカウントしないって言ってたのにぃ. でも,気を取り直して,空色をもう一枚ゲット.

フリーで配っていた NASA の CD-ROM もゲット. デモ画面を見ただけだが,なかなかタダモノではなさそう (いや実際,後でみたら,凄すぎる代物だった). 山のように置いてあったが,タダなので,あっと言う間になくなった.


The High-Energy Astrophysics Learning Center (NASA)

だいたい見るべきものは見たので,院生と5人ほどで談笑していたら, だんだんIAUの反省会(?)の様相を帯びてきた. 会場を後にして,そのまま夜の部へなだれ込み, 終電ぎりぎりまで,とことん本音トークの日になってしまった.

いろいろな意味で,長い長い2週間が終わった.

8月30日(土) 

一日中ごろごろしていた (HPを作成したり,ちょっとだけ仕事もしたけど).

8月31日(日) 

何してたんだろう,まったく覚えていない.


デザート&コーヒー

9月1日(月) ロシア人,来る

今日は件(くだん)のロシア人を大学に案内する日である. 京都国際会館の宿泊施設に泊まっていたのだが, 10時にチェックアウトとのことで,迎えに来てくれという. でも,そんな“早い”時間に迎えに行ける自信がないので, 出迎えだけ,無理言って人に頼んだ.


Prof. A. Cherpashchuk in front of Osaka-Kyoiku University

京大の近くでチェルパシュチュクさんと合流した後,途中で昼飯を挟み, 京都から3時間ぐらいかかって,1時過ぎぐらいに大阪教育大学へ到着した. とりあえず,研究室で一休みしてもらう. (自宅のある京都から大阪の大学まで)毎日通っているのか?と尋ねるので, いやいやまさか,大学へ来たら,一泊してるなんて四方山話に花が咲く.
さて,チェルパシュチュクCherepashchukさん,前にも触れたが, モスクワ大学(附属の)Sternberg Astronomical Instituteに所属しており, 近接連星系を専門とする観測家(兼,解釈家とは本人の弁)である. 今回,よく聞けば,天文台の Director (台長)だという. んじゃぁ,日本で言えば,国立天文台の台長のようなもんか!? ええ,そんなエライ人だったん? 知らんかった. (昼飯は,ウドン定食じゃなく,カツ定食にしておいてよかった.) 天文学では,仕事/研究を通じて人を知るので, 肩書きとかはあまり気にしないために,たまにこんなことがある.
ちなみに,Sternberg は星の街という意味かと尋ねたら, 確かにドイツ語では stern=星だが, 実は初期の台長に Sternberg という人がいて, その人の名前から取ったとのこと.ちょいと予想が外れた.

結構,ポリティカルな話もした. 旧ソ連時代,モスクワ大学は,ウズベキスタン,カザフスタン, ウクライナの3カ所に天文台を有しており, チェルパシュチュクさんはそれらの天文台の建設に半生を費やしたそうだ. しかし旧ソ連の崩壊による各民族国家の分離独立に伴って, ウズベキスタンとカザフスタンの天文台は,モスクワ大学の所属を離れ, さまざまな折衝の結果,ウクライナのクリミア天文台だけが, かろうじて手元に残った,というような話も聞いた. また共産主義から自由主義への移行に伴って, 給料は1/5ぐらいになったらしいが, それなりに自由を謳歌しているような感じだった. しかし,こんなに長く英語で相手をしたのは初めてだが, ま,とにかく元気でよく喋る人だし,ネイティブではないので, 案外,気が楽だったもんだ.
そして,ついに出たぁ,ファーストネーム攻撃. チェルパシュチュクは長いし呼びにくいので, (自分のことを)ファーストネームのアナトールAnatolと呼べと言う, じゃ,こっちもジュンと呼べということになる. ファーストネームで呼び合うのは,頭ではわかっていても, やっぱりちょっと気恥ずかしい.


Tadahiro, Masao, and Anatol in Tea Time

そのうちに,三々五々,学生も集まってくる. うち(大阪教育大学)での予定は,はっきり決めてはいなかったが, 折角なので,特異星 SS433 の最近の観測について, 講義をしてもらうことにした. 簡単に30分程度で,ということでお願いしたのだが, 話に熱が入って,1時間30分におよぶ熱演に相成った. 最後はさすがに(聴く方も)疲れてきたが, 内容的には(SS433に関する)20年にわたる観測の集大成で, 非常にグレートな結果の目白押しだった. (ぼくも含め)講演の内容を咀嚼するのは時間がかかりそうだ.


Commemorative Picture after Lecture*

講演の後,大学の観測研究施設を見学してもらううちに, もう夕暮れが迫ってきた. となれば,とーぜん,夜のセッションがはじまる. 手分けして買い出しに行って, 研究室でウエルカムパーティとなった…いつもと一緒という話もある. たまたま居合わせた茨城大学の学生さんも含め, まだ夏休みだというのに20人近くも集まってきた. 学内会議が終わったばかりの横尾せんせが, ロシア民謡のメドレーを披露して,順繰りに唄が回った後は, “アナトール”が滔々たる大音声でロシアの唄を披露. こういう時は,みなノリがいいのでありがたい. ここらへんまでくると,ぼくの手を離れて, 勝手に盛り上がってくれるので,ゆっくり楽しめた.


Party Scene 1


Party Scene 2


Russian Kanpai (Cheers) with Mai


Singing Yokoo-san


Russian Kanpai with Yokoo-san*

パーティの後, チェルパシュチュクさんを大学のゲストハウスへ案内したときに, ステキな学生さんたちだ,とっても楽しかった,日本はいいところだ, とたいそう喜んでくれた. まぁ,喜んでいただいたのは欣快に堪えないことではあるが, テンションの異常に高い大阪のノリだという点で, (日本に対する根本的な)誤解が残らなければいいのだが.

9月2日(火) ロシア人,去る

今日は,理化学研究所へ移動するチェルパシュチュクさんを, 新大阪まで見送らなければならない.
朝10時(めちゃ眠い), チェルパシュチュクさんをゲストハウスまで迎えに行く (大学は迷路みたいなので,とてもじゃないけど, 初めての人は,ゲストハウスから研究室まで辿り着けない). 研究室に戻ったら,院生の田鍋くんが来ていたので, 車で大学前駅まで送ってもらうことにした.
(チェルパシュチュクさんに)乗り継ぎの仕方を説明したり, (東京に着いてから必要な)カード電話のかけ方を実地訓練したり, 天ざる定食を食べたりしながら新大阪駅へ向かう. そして13時17分発のひかり40号,堅い握手を交わして見送った. とぉ,オイオイ,座席番号5のDは通路側と言ったろうが, なに窓側の席に座ってんねん! (よーするに,通路側という英語が全然伝わってなかった訳ね?)
新幹線の窓を叩いたが,(チェルパシュチュクさんは) 嬉しそうに手を振っている. 仕方ないので,発車間際のひかりに飛び込んで, "this seat!!" と教えて飛び出たら,列車の扉がしまった. 最後まで,スリリングで楽しいゲストだった.



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