まだまだ古いぞ,国立天文台!

日本の天文学研究の総本山である国立天文台では, 「国立天文台ニュース」という小冊子を毎月発行している. ぼくのところにも送ってもらえているので, 天文学上の新しい発見や<すばる>望遠鏡の進展などを, 毎月パラパラと楽しく見ている.

ところで最近受け取った1月1日号に, 編集長名で面白い“お詫び”が載っていた. どうやら,2ヶ月前の11月号の「ハワイから」という記事に, 個人への中傷的表現が含まれていたらしく, それについての“お詫び”ということらしかった. お,こりゃ,どんな内情が暴露されているのかと, 慌ててバックナンバー(11月号)を見返したもんだ. (あ,ぼくは天文台ニュースのバックナンバー, 大事に取っているんですよ.えへん)

ところがところが,全然,期待はずれ,じゃなくって, 件の記事を一所懸命読んだのだが, どこをどうひっくり返しても, 特定の個人を中傷するような部分は見あたらない. 一般論として,ダメな上司の話は書いてあったが, 著者と編集者が細心の注意は払ったようで, 別に中傷的表現になるような部分はまったくない.

ま,おそらくは,件の記事を読んだ国立天文台のエライさんの中に, 身に覚えのある人がいて,記事にカーッとしたあまり, 編集長に“お詫び”を出させる騒ぎになったのだろう. それがために,(ぼくのように) もともと気づかなかった人間の注意まで大喚起している, というのが,なかなか興味深い (あまつさえ,ホームページのネタにまでしている). 実際,あの程度の記事にすら目くじらを立てて, 編集長に“お詫び”を出させてしまう,というその事実にこそ, 問題の根元が端的に現れているように思う. すなわち,もともとの記事は,まったく一般論として書かれているのに, その記事の指摘がまったくもって事実“有根”だと, 声を大にして証明しているようなもんである. “墓穴を掘る”とは,こういうことを指す.

国立天文台は,日本の天文学界の総本山であるが, 総本山であるが故に,昔から,妖怪変化の住処でもある. もちろん大多数の人は,天文台としての研究や業務に, 日夜努力していると思うが, 政治的な問題や社会的なイジメが存在するのは否定できない (日本の天文学者の世界は狭い世界なので,長年暮らしていると, いろいろな噂が耳に入ってくるものだ). もちろん,国立天文台に限ったことではないが, 天文学者の世界も,人が作る世界だから,社会の縮図なのである. 権力に楯突く人間や,歯に衣着せずに物言う人間にとっては, 住みにくいときもママある. まぁ,そうそう“悪い人”がいるわけじゃないが, エライさん/年寄りの中には, よく言えば“クソ真面目で融通が利かないヤツ”, 悪く言えば“ケツの穴の小さくて視野の狭いヤツ”が少なくない, ように思う. 組織の上に登っていって権力をもつほど, 器も度量も大きくなって欲しいものだが, 蒙昧だけが増加する人間が少なくない. 困ったもんだ.

ぼくのような在野の人間でも, <すばる>には大きな期待を寄せているし, 国立天文台の動向には常に関心を寄せているのだ. 日本の天文学の悪しき伝統や旧弊な体質は脱ぎ捨てて, 血の通った組織にしていって欲しいし, 天文学の将来を担う若い人には, ケツの穴をおっぴろげておいて欲しいものである. また,「国立天文台ニュース」には, これからも内部批判の記事をどしどし掲載して欲しい. 堂々と声高らかに内部批判ができる組織こそ, 新しい国立天文台の目指すべき姿だろう.

あ,珍しく真面目な意見を書いてしまった. こんなこと書いたから, もう「国立天文台ニュース」送ってやんない, なんていう“イジメ”はなしね!


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