観測の流れ

X線の観測に限りませんが, 天体の観測は一般的に,
   1. 電磁波(光)などで天体からの信号を受信し検出する(検出
   2. 信号を処理して有意なデータを取得する(整約
   3. 取得したデータを画像やグラフなどに表現する(表示
の3段階に大きくわけられます. またしばしば,
   4. 観測結果を解釈し天体現象のモデルを作る(解釈・モデル
などの段階が続きます.
検出

天体からやってくる微弱な電磁波(光,X線,電波など)を, 観測装置で捉えることを,(信号の)検出(detection)といいます. 業界用語では,(信号が)受かったともいいます.

透過性の高いX線にはふつうの望遠鏡や光検出器は使えません. 特別な観測装置と検出器を設計します.

整約

観測して得られた生データを役に立つデータに処理する過程を, データの整約(data reduction)と呼びます. 最初に,観測装置による器差を補正したり, 背景の余分な光を差し引いたり, その他の不要なノイズを除去したりします. そして目的天体の位置や明るさを精密に測定し, 生データは定量的で有効な情報になります.

検出するのは難しいX線も,デジタルデータにしてしまえば, 基本的な整約処理は可視光などの観測とそんなに変わりません. ただしX線は一般に非常に微弱なので(X線光子が一つ一つ数えられるぐらい), 有意なデータを取得するためには十分な統計処理が必要です.

表示

観測の目的に応じて,取得した有意な観測データを, 画像に表したり,時間変化を示したり,スペクトル図を作ったりします. 画像に加工するときの色の着け方のような表現方法(presentation) は,従来はあまり重要視されていませんでしたが, 観測の一つの大事な段階だと考えられます.

データの上手なプレゼンテーションは,X線でも可視光でも同じです.

解釈とモデル

観測して得られたデータから, 天体のサイズや温度やガスの組成などを導くことができます. ただし一般的には,得られるデータはそれだけでは不充分なことが多いので, 多くの場合はなんらかの仮定を立ててデータを解析(analysis)し, 妥当な結果を導きます. さらに画像や時間変化やスペクトルなどのデータを物理的に解釈(interpretation)して, 天体の構造や変化を推測したり,隠された法則性を調べたりします. またしばしば,枝葉末節を切り捨てて描像を単純化したモデル(model)を立て, そこで起こっている天体現象の本質を突き止めます. そのようなモデルが普遍性や予測性をもったときに, そのモデルは理論(theory)と呼ばれます.


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