取材日誌 for スぺ博電波 in 6月

昨年完成した『宇宙スペクトル博物館<X線編>』に引き続いて, 今2000年度は『宇宙スペクトル博物館<電波編>』の制作が, “鬼”監督粟野, 電波原画半田, 同じく原画尾林, デザイナー田島, 雑用AD福江 という体制で行われている.
5月はじめの引越しから1ヶ月経って, 何とか身辺も片付いてきたので, 5月末から制作作業を再開した. で,6月上旬は,たまたま教育実習で講義がいくつか休みになったので, 身のまわりの電波に関する素材を収集するために, 6月はあちこちと取材を敢行することにあいなった次第.
取材が実現した順に,簡単な訪問記を書いておこう.

松下電器技術館
カーナビや携帯について知りたくて, 地元の企業ということで, 松下電器をリストアップ. インターネットで調べてみると, 本社の敷地内に<松下電器技術館>というのがあったので, 6/1(木)に早速電話してみる. 事前に予約が必要だが,見学も取材もOKだった.
予約を入れた6/7(水)の3時過ぎに技術館に出向く. 京阪守口市駅からタクシーでワンメータだが, 松下電器の敷地内を走っている時間の方が長いくらいだった. 大学での会議が長引いてて少し焦っていたが, なんとか定刻に到着.
技術館内では,専門係員の高橋さんがエスコートしてくれる. ええと,大変心地よかった! とても全部は取材しきれないので, 電波と(次回の)可視光に関連するアイテムとして, DVD,カーナビ,パソコン,液晶,携帯,太陽電池などをみせてもらう. 画面と同調する偏向めがねを使った立体映像も面白かった. 標準が1時間程度の見学コースなのだが, 1時間半ぐらいかけて説明をしてもらった. また資料などもいろいろと用意してもらい感動もん.

でも,前の晩あまり寝てない上に, 朝から(大学の健康診断で) それでなくても少ない血ぃ抜かれた後だったんで, もー,へろへろ. おまけに,用意していた取材用のカメラが, 直前になってシャッターが落ちなくなって壊れてしまい, 急遽,使い捨てのカメラを買っていったのだが・・・ 案の定,あまりよく写っていなかった. うーん,も一度,行かんとあかんかなぁ.

任天堂
ゲーム機の赤外線通信を取材しに, 地元京都の企業ということもあり, 任天堂にアタック. (こういう機会でもないと, 任天堂に行けるチャンスはないだろう) 6/8(木)に広報に電話してアポを取る.
6/12(月)午前11時,大学に行く途中で, 京阪鳥羽街道から目と鼻の先の京都本社へ出向く. 広報の豊田さんと,途中から技術の白井さんが, 1時間弱ほど親切に応対してくれる. 事前に簡単に取材の意図を説明しておいたので, ゲームボーイやポケットピカチュウカラーなどの (おそらく雑誌用の)写真ポジを用意しておいてくださった.
そのまま大学に行ってすぐに写真ポジのスキャナかけ. 写真ポジは非常に綺麗なのだが, 本来は光を透過させて使う仕様なので, スキャナにはかかりにくく, 画質調整に苦労する. 結局,午後いっぱいかかってしまった.

大阪国際空港
身のまわりの電波の利用で, 航空レーダーや飛行管制の取材をしようと,かなり悩んだが, 覚悟を決めて大阪国際空港に電話してみる.6/1(木)のことだ. 取材意図を書面で申し込んで欲しいとのことで, 早速,以下のような書面をしたため送った.
大阪空港事務所 総務課殿

レーダーや航空管制など無線関連施設の取材のお願い

拝啓
 私は、大阪教育大学で天文学の研究・教育に従事しているものですが、先日、レーダー
などの取材に関して空港事務所に電話で問い合わせしたところ、書面にて申し込んで欲し
いとのことでしたので、取材の主旨を簡単に説明させていただきます。
 私たちのグループでは、ここ数年、岡山天文博物館の粟野諭美館長を中心とした数人の
天文教育関係者で、天文学の教育普及を目的とした教育用マルチメディアソフト<宇宙ス
ペクトル博物館シリーズ>の開発を進めています。これはインターネットブラウザで閲覧
できるスタイルを取っており、パソコンがあれば誰でも簡単に使えるソフトをめざしてい
ます。その成果については、日本天文学会で発表したり、裳華房の方からCD書籍として
一般に出版されています。すでに出版されているX線天文学の紹介『宇宙スペクトル博物
館X線編:見えない星空への招待』については、サンプルが、
http://quasar.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/~fukue/Spectrum_x/top.htm
に貼られていますので、ご覧下さい。
 さて、今年は、X線編に続き、電波で観た宇宙の姿を紹介するソフト<電波編>の開発
を行っているのですが、電波というのは目に見えない電磁波であり、なかなか一般の方に
はわかりにくいものです。そのため、ソフトでは、いきなり宇宙電波の紹介に行く前に、
身の回りの電波として、ラジオ・テレビ・携帯電話・カーナビなど、電波を利用した製品
の仕組みを説明するページを設けています。その身の回りの電波の例として、ぜひ、レー
ダー(管制)についても紹介したいと考えて、取材を申し込ませていただいた次第です。
 具体的には、航空管制用のレーダー本体・レーダー画面画像・管制室など、レーダー関
連設備の写真撮影および上記ソフトへの掲載許可と、さらに、レーダーを中心とした航空
管制などの仕組みに関する資料の提供をお願いできればと思います。
 私たちのグループでは、現在の理科離れ・科学離れに対しても危機感を抱いており、天
文学を紹介しながらも、身の回りの科学技術にも少しでも興味を持ってもらいたいという
考えもあって、ソフトの中では、動画なども使いながら天文学以外の科学技術も紹介して
います。以上のような観点での取材の主旨をご理解いただき、ご協力いただければ大変あ
りがたく存じます。
敬具

2000年 6月 2日
福江 純

勤務先 〒582−8582
    柏原市旭ケ丘4−698−1 大阪教育大学天文学研究室
    Tel   0729−78−3387  
    FAX     0729−78−3388
    email  fukue@cc.osaka-kyoiku.ac.jp
    WWW     http://quasar.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/ fukue
空港の取材は,ハイジャックなどの保安上の問題があるので, とくに不特定多数が見る可能性があるマルチメディアコンテンツだけに, かなり難しいだろうと思っていた. しかしながら,大変ありがたいことに, 教育的な素材である点を理解していただけたようで, 取材に対して前向きに検討してもらえるようだ.
ということで,まずは,取材が可能なもの無理なものについて, 細かい打ち合わせをするために, 6/13(火)に大阪空港事務所まで出向いた.
#結構ドキドキ
予定より早く1時過ぎに着いたので, はじめて展望デッキというものに出て, ジェット機の離着陸を眺めるが, なかなか面白いものだったりする. さて約束の2時が近づいたので,事務所まで行くと, おりょりょりょりょりょぉ!!  事務の方に加え,管制官の方々,総勢5人がおられ, 内心,うわぁ,えらいこっちゃ状態. もうもう緊張しまくりだったが, 持参のVAIOで演示したり,スペ博のCDを渡したりして, 一所懸命に趣旨説明をする. ・・・うーん,学会の発表よりきつかったぞ.
まずは,(ぼくがあまりにも無知であり), 空港レーダーも含め管制業務を理解するために見学をさせていただく. 滑走路の向こう側にある第一レーダーASR/SSRを皮切りに, 管制業務のブリーフィングや管制室の見学など, 2時間近くみっちり説明を受けた(頭パニック状態). でも,ほんと,ドキドキ体験だった. 4時過ぎに撮影したい絵の相談をして空港を辞去する. いやぁ,これだけ本格的に対応してもらうと, こちらもリキ入れて作らにゃならん!!

余談だが,見学の合間に, 映画の『ダイハード』の話になった. 『ダイハード2』だったかで, 空港システムをのっとったテロリストが, 計器着陸の地面をごまかすシーンがあったが, あんなことはできないらしい. ぼくらが『アルマゲドン』でいっぱいウソを見つけるように, やっぱり専門家がみるといろいろウソがあるようだ. まぁ,映画は映画として楽しむものなのだろう. ちなみに,ぼくはダイハードもアルマゲドンもどっちも面白かった.

さて,いよいよ6/21(水)に取材決行. 自慢じゃないがカメラの腕はまったく自信がないので, メンバーに助っ人を頼み, 田島くんと元ちゃんも来てくれる. DV,デジカメ2台,カメラという, 万全の態勢で臨む.
当日は,あいにくと朝から雨模様(梅雨だもんな). 南展望デッキで待ち合わせをして, 2時に空港事務所へ.
簡単な打ち合わせ後,まずは第一レーダーの撮影から. 嬉しいことに天気はかろうじてもっている. 第一レーダーを撮ったあと, 滑走路のまわりをぐるっと一周してくれたので, 前回見れなかったILSグライドパスなども間近で見れた.
引き続いて,管制訓練室や管制塔の取材撮影. あれやこれや撮らせてもらって,結局, 4時ぐらいまでかかった.

取材後,空港の喫茶室で今後の処理の打ち合わせをして, さぁ,ここは一杯!といきたかったが, 後処理もあるので,(内心泣く泣く) この日はまっすぐ帰った. くっそー,また打ち上げやるぞぉ!!

ワコール
赤外線のサーモグラフィが欲しい. どこにあるやろ!? インターネットで調べて,しばし考えた末,6/19, 地元の企業で下着メーカーのワコールに電話する. いや,決して,インターネットの下着画像に目がくらんだわけではない.
最初,文化事業部に電話したら,広報に回されて, そこで事情を説明したら, 拍子抜けするくらいあっさりと協力していただける模様. 郵送でもいいような雰囲気だったが, そこはそれ,筋を通すために,いちおう,取材に行くことにする.

さて6/26(月)午前,大学に行く途中に, JR西大路駅のすぐそばのワコール本社へ伺う. 広報の近藤さんが対応してくれる.
最初の自己紹介のときは,いつもどおり, 天文学会御用達の裏に天体写真が印刷されている名刺を出すと, “じゃ,M31をもらいます!”と近藤さん. おりょりょ,おぬしなかなか知ってるな?? よく聞けば,昔は天文少年で,いまも子供を連れて, 近くの天文施設へ行ったり,遠く佐治天文台まで脚を延ばしているらしい (佐治天文台は出不精なぼくはまだ行ったことない). しばし,話が弾んだ.
ところで,この天文学会御用達の天体名刺は, 出始めのときから愛用しているが,とても重宝している. (初対面の相手が天文ファンでなくても) 堅苦しい初対面の挨拶が一挙になごむことになるのだ. 出始めの当初ころこそ,半分(学会への)寄付のつもりで注文していたが, いまではすっかり愛用品だ.
もちろんサーモグラフィのデータについては,あっさりと,それも, ワコールの研究所から届いたばかりのマザーディスクを貸していただけた. 下着を着けていないときと着けたときとの保温効果の違いがよくわかるサーモグラフィだった.

ところで,余談だが, ワコールって英語っぽいが, 実は設立当時の和江商事から付けた名前だったのね. わかりやすいわ.

NHK大阪
電波と言えば,やっぱり,ラジオ・テレビ・衛星放送だろう. ということで,6/1(木)に地元のNHK京都に, TVアンテナやシステムを取材したいと電話した. したらば,NHK大阪の方が設備などが整っているといわれ, NHK大阪に改めて電話したところ, 書面で提出して欲しい言われ,書面で取材申し込みをする.
NHK大阪放送局広報
井上幸彦殿

テレビ放送の送信システムなどの取材のお願い

拝啓
 先日は電話で失礼しました。私は、大阪教育大学で天文学の研究・教育に従事している
ものですが、テレビ放送のシステムなどの取材に関して、改めて、取材の主旨を簡単に説
明させていただきます。
 私たちのグループでは、ここ数年、岡山天文博物館の粟野諭美館長を中心とした数人の
天文教育関係者で、天文学の教育普及を目的とした教育用マルチメディアソフト<宇宙ス
ペクトル博物館シリーズ>の開発を進めています。これはインターネットブラウザで閲覧
できるスタイルを取っており、パソコンがあれば誰でも簡単に使えるソフトをめざしてい
ます。その成果については、日本天文学会で発表したり、裳華房の方からCD書籍として
一般に出版されています。すでに出版されているX線天文学の紹介『宇宙スペクトル博物
館X線編:見えない星空への招待』については、サンプルが、
http://quasar.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/~fukue/Spectrum_x/top.htm
に貼られていますので、ご覧下さい。
 さて、今年は、X線編に続き、電波で観た宇宙の姿を紹介するソフト<電波編>の開発
を行っているのですが、電波というのは目に見えない電磁波であり、なかなか一般の方に
はわかりにくいものです。そのため、ソフトでは、いきなり宇宙電波の紹介に行く前に、
身の回りの電波として、ラジオ・携帯電話・カーナビ・レーダーなど、電波を利用した技
術の仕組みを説明するページを設けています。その身の回りの例として、ぜひ、テレビや
BS(放送)についても紹介したいと考えて、取材を申し込ませていただいた次第です。
 具体的には、テレビ電波の送信施設、送信・受信など放送の仕組み、BSの仕組みなど
など、テレビ放送関連設備の写真撮影および上記ソフトへの掲載許可と、さらに、テレビ
放送などの仕組みに関する資料の提供をお願いできればと思います。
 私たちのグループでは、現在の理科離れ・科学離れに対しても危機感を抱いており、天
文学を紹介しながらも、身の回りの科学技術にも少しでも興味を持ってもらいたいという
考えもあって、ソフトの中では、天文学以外の科学技術も紹介しています。以上のような
観点での取材の主旨をご理解いただき、ご協力いただければ大変ありがたく存じます。
敬具

2000年 6月 2日
福江 純

勤務先 〒582−8582
    柏原市旭ケ丘4−698−1 大阪教育大学天文学研究室
    Tel   0729−78−3387  
    FAX     0729−78−3388
    email  fukue@cc.osaka-kyoiku.ac.jp
    WWW     http://quasar.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/ fukue
さてさて,その後しばらく不安だったんだが, 2週間ほどした6/16(金)になって, 技術部の大門という方から連絡があり, できるだけ協力したいとのことであった. その後,先方で放送アンテナの写真などを用意してくださり, 7/24(月)になって馬場町のNHK大阪放送局まで伺うことになった. 忙しい中,技術部副部長の大門さんが応対してくれる. 一応,取材終了!!
しかしまぁ,このところ連日38度近くの猛暑で, この日も体が蒸発しそうに暑かった. 大学からNHKへ回り,取材を終えた後, 別のアポのために,夕方,ヘロヘロになって天王寺まで辿り着いた. でも,このときのオサケは殊のほか美味しかった!! 誰と呑んだかはナイショ.


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