降着円盤QPO国際研究集会@京都
(2007/11/20-22)

今年の国際会議の第2段目、 降着円盤に絡んだQPO現象と呼ばれるものに関するミニ国際研究集会 YITP Workshop on "Quasi-Periodic Oscillations and Time Variabilities of Accretion Flows" が、 京都大学基礎物理学研究所で開催された。
そもそもの発端は、恩師の加藤先生にとって、 長年のライバルであり共同研究者でもあるMarek Abramowiczが、 この時期に中国へ行くというので、その前後に、 日本でもQPO現象に特化した研究会を開けないだろうかという話が持ち上がったのが、 今年の3月だった。 そして降着円盤の時間変動を研究している京大の嶺重 慎さんと、 数値シミュレーションをしている松元亮二くんたち千葉大メンバーが組織委になり、 ぼく自身はQPO現象はほとんどしていないものの、 近場の弟子でもあるし組織委に組み込まれて、準備が進められたものだ。 そして、会場や基研研究会としての設定などを嶺重さんが手配し、 その他さまざまな準備や実質的な運営を松元くんが行った。 ぼくはMLで回ってくる大量のメールをノホホンと眺めていたのだが、 最後になって懇親会の世話が回ってきたときは、 あ、やっぱそうきたかという感じだった(笑)。
参加者など途中経過はあまり把握していなかったが、 最終的には、海外から10人弱、国内から20数人、 当日飛び入りも含め、全体で40人ぐらいの参加者になったようだ。 また、内容の密度も濃くて、最終日の議論も白熱して延長するぐらいで、 最後は大きな拍手で終わるという、なかなか珍しい風景となった。
またぼくも、記念碑的な会議になりそうだったので、 発表者全員の写真をコンプリートしたり(撮影枚数は200枚になった)、 立場上、2度目?の英語口頭発表をしたり(???)、 充実しきって完全燃焼した会議になった。
初日、基礎物理学研究所
国内の参加者の便を考え、 初日は午後13時からの開催。 一応(笑)、LOC(会議組織委)の一員なので、 12時ごろに基礎物理学研究所へ向かった。 徒歩、4分。
会議の案内ボード
小さい会議なので、基礎物理学研究所の入口に立てられた案内も控え目に。
会場
基礎物理学研究所の2階の会議室が会場。 受付の準備も済んでいるようだ。
開始直前
マイクチェックなどをしている嶺重さん。
開始直後
会議が始まった直後の会場風景。 かなり埋まっている。
Opening Remarks
by Ryoji Matsumoto (Chiba Univ.)
会議冒頭で、歓迎の辞と、今回の会議の主目的などを話している松元くん。
Black Hole Accretion Disks (Plenary Talk)
by Marek Abramowicz (Univ. Goteborg, Sweden)
いわゆる基調講演にあたるPlenary Talkをしている、 今回の会議のメインゲスト、マレク・アブラモヴィッチ。 昔はスーパーマリオに似ていたんだけど、 いまや堂々たる貫禄に圧倒される。
アブラモヴィッチのパワポ
パワポなんだけど、各ページは手書き原稿だというところが、 おちゃめ。
会場風景
アブラモヴィッチの講演のときの会場風景。 この時間帯が、飛び入りも含めて、一番混んでたように思う。
Time Variability of AGNs
by Y. Terashima (Ehime Univ.)
Long-Term and Short Term Periodic Time Variabilities of Black Hole Candidates
by H. Negoro (Nihon Univ.)
QPO from Sgr A*
by M. Miyoshi (NAOJ)
Near-Infrared Intraday Variations in the Seyfert 1 Nucleus NGC 4395
by T. Minezaki (Univ. Tokyo)
Long Term Iron Line Variability of the Seyfert 1 Galaxy MCG-6-30-15
by T. Miyakawa (Univ. Tokyo)
Aperiodic X-Ray Time Variation of X-Ray Binary
by T. Kohmura (Kogakuin Univ.)
初日夜
小さい会議なので、懇親会は日本らしく、 ちゃんこ鍋で有名な百万遍の門で行うことにした。 事前に何度か打ち合わせには出かけていたが、 細かい打ち合わせも兼ねて、初日の夜も門へ繰り出したが、 行楽客で満員状態だった。
翌日からのこともあるので、初日夜は軽く終わったが、 大須賀くんと加藤くんのマシンガン掛け合いトークで、 まわりは口を挟む隙がなかった。
会議2日目
自分の口頭発表や座長や懇親会がある運命の2日目だ。 最初の座長はアブラモヴィッチである。
QPOs, Resonance and Non-Linear Oscillations in Accretion Disks
by W. Kluzniak (Zielona Gora Univ., Poland)
Orbital Models of High Frequencey QPOs
by G. Torok (Silesian Univ., Czech)
Nonlinear Interaction among Oscillation Modes of Accretion Tori
by J. Horak (Astronimical Institute, Czech)
A Disk Oscillation Model of High-Frequencey QPOs
by Shoji Kato (kyoto Univ., Emeritus)
会場風景
加藤先生の講演中の会場の風景。
記念写真
中日の午前が済んだ段階で、基礎物理学研究所の玄関前で記念撮影。 前列の右から、 組織委の松元くん、 会議主催者の加藤先生、 招待者のアブラモヴィッチとクルズニアック、 参加者のダス。
Modulation Mechanisms of High-Frequency QPOs
by M. Bursa (Astronomical Institute, Czech)
Relativistic Radiation Transfer in Accretion Flow around a Black Hole
by Rhota Takahashi (Univ. Tokyo)
Relativistic Variable Eddington Factor
by Jun Fukue (Osaka Kyoiku Univ.)
発表者をコンプリートするために 加藤くんに撮ってもらった珍しい自己発表風景。 でも、目がよその世界を見ている。
英語が苦手だから国際会議はいつもポスターにしているが、 講演内容は会議の主題とは少しずれるものの、 今回ばかりは仕方なく、人生2度目くらいの英語の口頭発表である。 しかも、何と30分も(!)。死ぬかと思った。 一応、頭を振り絞って、最初にツカミを入れたり、 加藤くんの質問で少し笑いを取れたので、 まぁ、いいとしよう。
Behavior of Accretion Flows around Black Holes
by S. Das (Chungnam National Univ., Korea)
しかも午後後半は座長である。 でもまぁ、口頭発表が済んだ後なので、 英語とはいえ、気は楽だった。 ちなみに座長の席からなのでアングルが悪い。
General Relativistic Hydrodynamical Simulations of Standing Accretion Shock Instability
by H. Nagakura (Waseda Univ.)
Steady Models of Black Hole Accretion Disks including Azimuthal Magnetic Fields
by H. Oda (Chiba Univ.)
A New Cellular-Automaton Model for Black-Hole
by Shin Mineshige (Kyoto Univ.)
On Black Hole Mass Estimation from X-Ray Spectra of Ultraluminous X-Ray Sources
by Kiki Vierdayanti (Kyoto Univ.)
懇親会
いよいよ懇親会である。 懇親会係なので、最初はやはりLadies and Gentlemanとかなんとか 挨拶が必要で、まいった。 幸い、乾杯の音頭は加藤先生のお願いできたが。
乾杯
流石に慣れたもので、乾杯の音頭を頼んだら、加藤先生からは、 会議の開催の経緯なども話せてもらえてありがたかった。 ついでにアブラモヴィッチも一言話してくれたので、 懇親会も最初からいい雰囲気。
上座の主賓席近辺
アブラモヴィッチ、夫人、クルズニアック、加藤先生。 アブラモヴィッチは魚介類や海草類にアレルギーがあって、 メイン料理<ちゃんこ鍋>に魚介類は使っていないことを何度も確認したのだが、 当日の懇親会直前に、スープに出し昆布を使っていることを Kakazuさん(何故か個人名)が教えてくれた。 急遽、サラダやステーキなどの単品を別注して事なきを得たが、 ちょっと焦った。
Kluzniak、大吟醸にチャレンジ
懇親会の冒頭で、レストラン門には美味しい特別な日本酒(吟醸酒のつもり)が あることをアナウンスしておいたら(もちろん英語で)、 招待参加者のクルズニアックが試してみたいとのこと。 最初はフルーティなのがいいだろうと思い、出羽桜の大吟醸にした。 Tasting Sake Masterに注いでもらって嬉しそうである。 このまましばらくクルズニアックに捕まってしまい、 小田くんと二人で、日本酒の造りの講義をすることになった。 クルズニアックは吟醸が気に入ったようで、 さらに別の味を試してみたいと言ったので、 少しドライで純米風味の喜楽長を選ぶ。 アブラモヴィッチ夫妻にも試してもらったが、 奥さんが案外と美味しそうに呑んでおられた。
懇親会お開き
懇親会も予定が2時間程度のところを小一時間オーバーしてやっとお開き。 招待客ということで懇親会の最後にクルズニアックに一言挨拶してもらう。 お酒のお礼も言われて、なんだか、懇親会係冥利?
3日目の会場風景
最終日は流石に少し参加者も減った感じだが、 残っている参加者はみな元気で活発に質問も続く。
Magnetohydrodynamic Studeis of Quasi-Periodic Oscillations in Accretion Flows around Black Holes
by Yoshiaki Kato (Tsukuba Univ.)
High Frequency QPOs Excited by Low-Frequencey Disk Oscillation
by M. Machida (NAOJ)
Time Variability and Stability of Radiation-Dominated Accretion Disks
by S. Hirose (Earth Simulator Center)
Simulations of Supercritical (Slim) Disks
by Ken Ohsuga (RIKEN)
Periodic Light Variations from a Supermassive Binary Black Hole with Triple Disks
by K. Hayasaki (Kyoto Univ.)
Chaotic Motion of Charged Particle in a Black Hole Magnetosphere
by M. Takahashi (Aichi Univ. of Ed.)
Lithium Production on a Low-Mass Secondary in a Black Hole Soft X-Ray Transient
by S. Fujimoto (Kumamoto National Col. of Tech.)
Summary and Discussion
会議の締めくくりのまとめと議論の時間である。 多くの会議では、形式的に全体をまとめて終わるのが多いが、 今回の会議は、加藤先生の人柄とも相俟って、 議論の時間を1時間取っていたのに、 1時間半にも延びてしまうという珍しいものになった。
全体のまとめをする松元くん
観測面を中心にまとめる嶺重さん
質問する根来さん。
質問するアブラモヴィッチ。
質問する加藤くん。
コメントするアブラモヴィッチ。
コメントする加藤先生。
コメントするクルズニアック。
LOCへの労いの拍手。 この後、加藤先生が一言挨拶して、 盛大な拍手で会議は無事終了した。
ワンモアピリオド
念のために、一応、作っておいたが、 松元くんの方で用意してくれていたので、 こちらは幻の懇親会案内(笑)になった。

ちなみに、背景の京都の4隅にあしらっているのは、 古都京都を護る四神獣、東の青龍、南の朱雀、西の白虎、 そして北の玄武である。 もともとは、パロディ版『天文月報200号』のために作成したものだが、 ちょっと気に入っているので、あちこちで再利用している。

発表用パワポファイル(3MB)

発表の前まではストレスのかかりまくりで胃が痛くなるくらいだったが、 事前に予想していたほどには上がらずに話すことができた。 緊張はしていたものの、緊張しているのを自覚する程度には自意識が残っていたし、 頭の中が真っ白になって立ち往生することもなく、話し終えることができた。 まぁ、人前で話すこと自体に少しは耐性ができてきたのと、 英語自体は上手でないという点に開き直れたためだろう。
ただ、ヒアリングはもっと自信がないので、 質問が来たらヤダナァと思っていて、 いろいろ想定質問を考えていたので、 加藤くんの質問にも何とか対応できた。