ロイ・カー@基礎物理学研究所市民講演会
(2007/12/01)

今年最大のビッグイベントである。 ロイ・カーの講演会に行って、握手もして、ツーショットまで取ってきた!

ロイ・カーといっても知らない人の方が圧倒的に多いだろうが、 ブラックホールの業界では、 1962年にカー解を発見したロイ・カー(Roy Patric Kerr;1934〜)は、 現在の世界では伝説的な最大のビッグネームだろう。 実際、宇宙に存在するほとんどすべてのブラックホールは、 球対称で静的なシュバルツシルト・ブラックホールではなくて、 自転しているカー・ブラックホールだと信じられているのだ。 ぼく自身は扱いの面倒なカー解は修士論文のときを含め数えるほどしか使ったことないが、 教科書などでは素知らぬ顔でカー解をよく知っているような記述をしている(笑)。 ま、とにかく、ブラックホール物理学の分野では、アインシュタインは別格として、 シュバルツシルト解を発見したカール・シュバルツシルトのつぎに 重要な歴史的人物がロイ・カーなのだ。
今回、基礎物理学研究所の市民講演会でロイ・カーが市民向け講演をするのを聞きつけて、 早速申し込んでもらったわけだ(受付番号66)。 もちろんぼくも、れっきとした一京都市民である。 今年は一日も休みが取れないくらい忙しくて、実際、この日も、 午前は仕事していて、カーの講演が終わったら、またすぐ仕事に戻ったのだが (つぎの講演者だった嶺重さん、ごめんなさい)、これだけは外せないと思った。 当日の定員は300人と聞いていたので、イイ席を取るために、30分ほど早めに行ったら、 まだまだ会場の大講義室は疎らで、前の方もがら空きである。 演台の位置などを確認して、最前列のベストポジションをゲット。 午後1時開始の10分ほど前に、カーや司会の佐々木さんたちが到着。 ついに(個人)歴史的瞬間である。

講演の準備をするカー
1934年生まれとあったが、73には見えないしっかりした感じである。
講演半ばの一枚
講演内容は、前半はニュートン重力から一般相対論へ至る話で、 後半はカー解の発見の細かい経緯だった。 話し方は平易だけど内容はきわめて高度で (実際、相対論プロパーの話だと、どうしてもそうなるが)、 前半の話についていけたのは、ほんのわずかだっただろう。 そこらへんは、つぎの嶺重さんがフォローしたのだろうが、 基礎物理の市民向け講演もなかなか難しいものだ。 後半、とくに1960年代初頭のカー解へ至る発見の物語は、 当事者の口が語るだけに生き生きして面白かった。
質問に答えるカー
1時間ほど講演があり、その後、少し質問タイム。 最初は学生から、algebraically specialとはどういうことかと質問。 ストレートな質問でぼくも知りたかったが、 かなり専門的な質問なので、難しいよなぁ。 その後は3人ほど質問があったが、いやまぁ、何というか、 最初から答えられないことが明らかな質問ばかりで、 司会の佐々木さんも四苦八苦な感じ。ほんと大変だ。 ぼくも質問いっぱいしたかったけど(笑)、 この段階では少し控えめに・・・
突撃タイムtoカー
予想通り10分ほど休憩が入ったので、 Thank you very much for your nice and impressive talk. とか何とか挨拶に行く(もちろん事前に作文していて)。 ぜんぜん控えめじゃない(爆)。
ツーショットwithカー
そしてもちろんツーショット。 休憩時間とはいえ、200人ぐらいの人がいる前で、よくやるなぁ。
みんな一緒にwithカー
京都産業大学の学生さんたちと。 もう撮ったもん勝ちである。
みんな一緒にwithカー
こっちは京大の学生さんたちかな。 そうそう、10年後20年後にお宝になるんだよ。
本人の口から聞いた歴史的な経緯はやはり知らないことだらけで、 とくに一番勘違いしていたのは、カー=ニューマン解だった。 自転していて電荷をもっている解としてカー=ニューマン解というのがあるのだが、 ずっと以前は、カーとニューマンの共著論文があるのだと思っていた。 しばらく前に、実はそんな論文はなくて、ニューマン他という論文があることがわかり、 カー解を発展させた解としてニューマンが電荷をもった解を見つけたので、 カー=ニューマン解と呼ばれるようになったのだと思ったし、 本とかにもそう書いてしまった。しかし事実はさらに違っていて、 カー自身が自分の解に電荷を入れた解を見つける一方、 ニューマンたちも電荷をもつ解に自転を入れた解を発見したという、 それぞれ独立の発見だったらしい。 “なるほど!!”