今年の夏に引き続き、三度の鹿児島である。 今回は「連星・変光星・低温度星研究会」が鹿児島大学で開かれた。 いや、もちろん、「連星・変光星・低温度星研究会」への参加発表が “主な”目的ではあるが、鹿児島での開催がかなり決定的だったかも。 実際、「連星・変光星・低温度星研究会」に出るのも10年ぶりぐらいだが、 いつの間にか、名前が微妙に変わっていたりする。 それはともあれ、一ヶ月ぐらい前から期待でワクワクドキドキ状態だった。 | |
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さて、まずはフライトであるが…。
鉄の翼で空を飛ぶのが怖くて、30代半ばまで飛行機に乗らなかった人間が、
ようよう空の旅が楽しめるようになってきて、いまや前方席の窓際指定までする。
今日は、曇り日和だが、大阪市街へ伸びる天使の梯子が見事だ。 写真は鹿児島で撮ったものだけど、あまり綺麗ではない。 最近は輻射輸送に関心があるため、雲を抜けるときがとても面白い。 可視光での光学的厚みが0に近い透明な下界から、 光学的厚みが1の領域を通して、雲中に入ると不透明で無彩色の世界になる。 水滴による不透明度はたしかに波長依存性がないgrayだとよくわかる。 そして雲を突き抜けると、対流圏上部の圏界面に地平線まで拡がる雲海だ。 でも、一瞬、そうかと思ったが、圏界面はだいたい10kmのはずだが、 どうみても10kmもなくて1kmぐらいしかないように思える。 10kmに達するのは積乱雲や巻雲で、層積雲など低層雲は1kmぐらいらしい。 また、たしかに雲のアルベドはきわめて高い。真っ白な雲海だった。 残念ながら最前列1Aの席でキャビンアテンダントのお姉さんに見えるので、 見事な雲海は撮影できなかった。 離陸をたっぷり堪能した後は、ノーパソを開いて小仕事し、 午後の日差しを浴びた桜島を眺めながら着陸もまた堪能した。 |
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夏に招待されたときに宿泊した城山観光ホテルがすごくよかったので、
市内からは少し不便だが、今回もそこへ宿を取った。
ネットにつないで少し仕事していたら、あっという間に夜になって、
ホテルレストランへ。
城山ブルーワリーのベルギーホワイトという地ビールが 何かのコンテストで金賞になったというので、頼んでみたら、 評判がよくて生憎と品切れ状態だった。 代わりに同じラインナップのスタウトやグラスビールを飲んだが、 それらはそれらで美味しかった。 (写真で思い出したが、このスタウトも銀メダルを取っている)。 さすがに鹿児島というか、やっぱりどこでも“西郷どん” (と最近は“篤姫”)ばっかりだった。 和食レストランにもA4で表裏パウチした、 <お食事を待たれる間のミニミニ講座>西郷さんってどんな人?、 というのが置いてあって、なかなか読ませてくれる。 明治維新のころの本はいろいろ読んでいるので、 それなりに知っていると思っていたが、まだまだ奥が深かった。 |
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食後にホテルバーに行って尋ねてみたら、
こっちはホワイトビールがまだ残っていて、
たしかに、超美味なホワイトだ。
説明を読むと、桜島小ミカンの皮で柑橘味を付けているらしい。
ドイツなどではたしかオレンジピールとかで風味を付けるが、
小ミカンの風味がすごく合う。
つぎにお勧めのカクテルを尋ねたら、焼酎のカクテルを勧められた。 焼酎はそれほど飲まないけど、お湯割りかロックと思っていたので、 カクテルにビックリ、なかなか美味しさに再度ビックリした。 ピアノの生演奏を聴きながら、マンガの好きな首相みたいに、 ホテルナイトライフをエンジョイする。 |
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朝は寝坊してしまい、そもそも食欲もなくて、
楽しみにしていたホテルのコンチネンタルはパスして市内へ下りる。
乗り換えの中央駅前などでコンビニを探したけど、
駅前にはあまりコンビニを見つけられず、
おまけにミニスコールみたいのが降ってきて、結局、
市電に乗って鹿児島大学郡元(こおりもと)キャンパスまで来てしまう。
運良く、美味しそうなパン屋を発見して、美味しそうなパンをゲット。
キャンパスは市内中心部なのにかなり広い(北大を思い浮かべてしまう)。 また、やはり南国、シュロの木?の並木道である。 真っ黄色に色づいた銀杏並木が直交して存在しているのも興味深いところだ。 |
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いよいよ研究会初日。
初日の午後が高密度天体のセッションで、
最近のX線連星の観測レビューが面白かった。
とくにXMMニュートンのX線スペクトルのフィッティングからは、
降着率がエディントンの1万分の1しかないのに、
円盤が存在しているらしい証拠が出てきている。
通常の“理論”では、質量降着率がエディントンの100分の1にもなれば、
いわゆる高温のADAF的降着流になると思われているので、
もし本当なら理論がひっくり返る話だ。
そのつぎが、自分の話。 最近しばらく関心をもっている、“相対論的輻射輸送”がらみで、 ブラックホール周回星やケプラー降着円盤など、 相対論的運動体の観測的特徴について紹介する。 一応、20分ほど、お仕事タイムだ。 「相対論的運動体の観測的特徴」 PDFファイル(2MB)
つづいて、阪大の高部さんのレーザー宇宙物理。 高部さんもいろんなとこに顔を出している。 高エネルギー領域の話は主にこの部分だけで、 後は比較的低エネルギーで観測的な話が多かったが、 ふだんあまり聞かない分野なので少し新鮮だった。 |
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そしてお待ちかねの夜セッションは、
まず研究会の懇親会がマリンパレスかごしまで開催された。
懇親会の会費は大学生協並みの値段だったが、
その割に、会場はもちろん料理もなかなか豪勢な内容だ。
やっぱり南国はいいなぁ。
世話人の今田くんの司会進行で、 この分野の最長老、竹内峯さんの乾杯でスタート。 学会の懇親会(最近あまり出ない)と違って、 美味しい料理がふんだんにあって、 デザートも何種類ものケーキがあり (おなか一杯でほとんど食べられなかったけど)、 とてもコストパフォーマンスがとてもいい。 |
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2次会は当然“天文館”(繁華街)へ繰り出す。
懇親会で最後あたりに呑んだ焼酎
(レントという黒糖焼酎らしい)が、
焼酎とは思えないほどフルーティで、
ちょっと飲み過ぎたかも。
噂によると2次会では、何度か飲んだことのある九大山岡研の
何とかクン(いつも酔っているときなので名前覚えられない、
仕方ないのでネットで調べたけど、研究室のHPが見つからなかった)に、
いろいろ説教したらしい。
2次会からは記憶が途切れ気味だけど、
野上大作は2次会会場前で脱落したらしいから、
まだましかなぁ(目くそ鼻くそ!?)。
ずっこけた野上大作が手にしているのが、 世話人の用意したレント。 名は秘すが、レントを飲んだ女性が千鳥足で歩き去るのを、 ぼくも含め何人もの参加者が目撃した。 焼酎おそるべし。 |
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研究会2日目。
結構、アルコールが残っていたが、何とか早起きして、鹿児島大学へ。
市電の写真のタイムスタンプは9時12分。
一番面白かったのが(いやいや他の発表もそれなりに楽しんだけど)、 大島さんのデフォーカス法の話だった。 天体のピントをわざとぼかして、 CCDの100ピクセルぐらいで長時間露光することで、 カウント数を通常の100倍くらい稼ぎ、 ミリ等級単位の測光精度にもっていけるらしい。 これはぼくでもわかるぐらいスグレモノの方法だと思う。 早速、うちへの土産にできそうである。 |
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午後は、VERAの入来局へのエクスカーションだったが、
ぼくはホテルへいったん戻り、部屋で論文を書いたり申請書を書いたり、
それに飽きたらカフェテラスで桜島を眺めながら論文を読んだり、
ホテルで“優雅に”小仕事タイム。癖になりそうだ。
中日が快晴で、ホテルに戻ったときは午後の日差しを浴びていて、 この日の桜島が一番よく観望できた。 |
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ちょっと連日の疲れが出てきて、ホテルでごろごろしておきたい気持ちもあるが、 そういうわけにもいかない。 “情報交換”をするために、夕方、ふたたび市街へ下りて、 天文館で入来局から戻ってきた参加者と合流し、 夜のセッションへ。 朝から晩まで動き回る研究会の参加には体力が要るなぁ。 今晩はできたら一次会だけで帰ろう。。。 |
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・・・と思って下界へ下りたけど。。。
一次会では、なかなかよさげなお店で郷土料理。
コースで来たので食べきれないのは隣の学生へ移動。
でも、昨日の今日で、少しおとなしめに呑んでいたので、
結局、二次会へ行くことに。
黒じょかで出てきた村尾という焼酎。 地元の学生クンの話では、高いのでふだんは呑めないけど、美味しいらしい。 こういう呑み会でこそ(みんなで割るんだから)注文するんだ、 それも舌が痺れないうちに、と最初に注文した。 |
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しかし、この二次会がブレイク。
鹿大の何とか君の突っ込みがすごくて、
天文業界でも知る人ぞ知る重鎮、あの“蜂巣”さんの過去が赤裸々に暴露された。
いやぁ、何というか、あの“蜂巣”さんが、ここまで恋愛談義をするとは、
天文業界の誰一人として想像できないと思う。
この一次会のテーブルの一番奥が蜂巣さん。 |
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最終日、7時に起床、すごく眠い。
夜のフライトまで、時間があるので、桜島の溶岩を見に行くが、まさに自然の驚異だ。 実は、桜島が九州と地続きになったのは、ほんの90年ほど前、 1914年のことらしい。 大概“博識”のぼくも知らなかった(笑)。 自分の足下の広い大地が、90年ほど前にできたと思うと、 あるいは火口から何キロも吹っ飛ばされた巨大な火山弾の重なりを目の当たりにすると、 大地のダイナミックな変動を肌で実感できる。 ちなみに、桜島を下辺とする錦江湾の北部全体が、 約2万5千年前の姶良大爆発でできた姶良カルデラだそうだ。 |
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いかんいかん、結構真面目な“学術レポート”になってしまった。
鹿児島空港へ行っても、まだ時間がたっぷりあまって、 しばらく小仕事したけど、とうとう軽く食事へ。 レストランの窓から眺めると、 夕暮れ/夕焼けがなかなかにグラデーションしている。 少し前にだいぶ調べたけど、 レイリー散乱のもとで夕焼けの輻射輸送を解いた例が見つからない。 古典的な問題だから誰かがやっていて当然だが、 気象と光学の狭間なためか、教科書などにも書いていない。 そのうち解いてみたい。 あ、いかんいかん、またアカデミックになっている。 |
今回の研究会は鹿児島大学の今田くんが世話人の取りまとめで、 鹿大の学生もよく動き、全体に目配りのきいた、 なかなか至れり尽くせりの、楽しい研究会だった。 |