国立天文台で5日間にわたって、太陽の専門家で、
オランダはユトレヒト大学とノルウェーのオスロ天体物理学研究所所属の、
Robert J.Rutten教授による輻射輸送の集中講義(+実習)があった。
事前のアナウンスでは受講者は院生でも研究者でもいいとのことだが、
ただし、実習にはIDLをインストールしたノーパソが必要とのこと。
このIDLというのは、主として太陽分野でよく使われる画像処理が得意な言語だが、
なにせかなり高いソフトだし、太陽関係でもないので、もちろん手元にはない。
しかし、講義プログラムや講義資料をみると、講義内容は本格的なものだ。
さてどうしよう??? 長年にわたり、相対論・流体力学・電磁流体力学などの手法は一通りやって、 最後に取っておいた分野が、輻射輸送・輻射流体力学である。 そして、この数年というか10年近く、ついに輻射輸送にも取り組み初めて、 ブラックホール降着流やブラックホール風に関連して、 相対論的な輻射輸送および相対論的輻射流体力学を調べてきている。 そして自分自身で輻射輸送の講義までしているのだが、 現在の日本では輻射輸送の専門家は、一世代前はリタイアしていて後継者がおらず、 この分野はほとんど壊滅状態で、こっちもほとんど独学だった。 そのため、今回の講義内容の前半あたりは知っているし理解もできているが (これは後にウソだとわかった)、 後半あたりは知ってはいるものの十分には理解していない。 分野的には太陽物理に偏ってはいるものの、役に立つ内容もとても多そうだ。 また、この際に、数値的な手法も勉強しておきたい。 そこで、わざわざこの講義のために馬鹿高いIDLを購入して、 (というか、貧乏な天文分野で、なんで、IDLがOKなの?)、 4日間ほど受講してきた(最終日はすでに別件の講演が入っていた)。 しかし、この歳になって集中講義を聴くことになるとは思わなかったが、 しかも先週はこっちが大阪市大で集中講義を実施してきたばかりだし(笑)、 でも、久しぶりに、学生に返ったつもりで、(昼は)しっかり勉強してきた。 参考までに、講義プログラム: Morning lecture hours: hour 1: 09:00-09:45, hour 2: 10:00-10:45, hour 3: 11:00-12:00 Afternoon excercises 13:30-17:00 Monday: basic stellar spectrum formation hour 1: solar continua hour 2: Fraunhofer lines hour 3: examples: coronal lines, nebular lines, wind lines afternoon: numerical excercises SSA1, SSA2 Tuesday: LTE stellar spectrum formation hour 1: radiation quantities, transfer equation hour 2: LTE continuum and line formation hour 3: examples: HOLMUL, inversion, magnetic bright points afternoon: numerical exercises SSA3, SSB1 Wednesday: resonance scattering in stellar spectrum formation hour 1: Einstein coefficients, bb rates, 2-level scattering hour 2: partial redistribution, bound-free scattering, hot-star continua hour 3: examples: VAL3C continua, VAL3C energy budgets, NLTE masking afternoon: numerical exercises SSB2, SSB3 Thursday: numerical solution schemes hour 1: Lambda operator, Feautrier hour 2: ALI and other tricks hour 3: examples: 1D case studies afternoon: numerical exercises SSC1, SSC2 Friday: chromospheric line formation hour 1: summary of solar spectrum formation, fads & fallacies hour 2: shocks, non-E ionization, cloud modeling hour 3: examples: 2D-3D case studies afternoon: numerical exercises SSC3 |
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国立天文台
まだしっかり紅葉していないが、なかなか綺麗な感じである。 |
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コスモス会館
集中講義の会場はコスモス会館会議室とあった。 コスモス会館は食堂や宿泊施設のある建物だが、 会議室があるとは知らなかった。 初日は一番乗りだったので、会議室を探してウロウロしたが、 すぐ目の前にあった。 |
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準備万端
一番乗りの特権で、スクリーンが見えやすい場所に陣取って、 ノーパソも立ち上げ、講義資料も印刷してきて、準備万端の状態。 |
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Ruttenさんと世話人の末松さん
いやぁ、まじでハードだった。とに! まずは英語。 完全にさび付いていて、おまけにRuttenさん、早口だし、 しゃべくりマンザイのペースで話すから、まいった。 とりあえずは、耳が慣れるのまで大変だ。 さらに、集中講義で、そういう講義スタイルなのか、 いっぱい質問ぶつけてくるけど、 質問内容がわかりませ〜ん(笑)。 しかし、前半の内容はだいたい知っていると思っていたが、 いやぁ、初日ですでに“目ウロコ”の話がたくさんあった。 ほんとに輻射輸送について、何も理解していないことがよくわかった。 さすがに、餅は餅屋である。 初日から目一杯の内容で、頭もパンパンになる。 |
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濃い実習
講義は午前中の9時から12時過ぎまでで、 さらに午後は1時半から5時過ぎまで実習だ。 最初はスペクトル分類のきわめてインストラクティブな実習。 これはいいなぁ。あちこちで使えそう。 実は受講生の中では、ぼくが一番良くできて、 (一カ所だけ前後を間違えた)、ご褒美のチョコをいただいた(笑)。 しかし、その後、うん?、いきなりIDLを使えと(?)。 えっ”、何したらいいの(意味不明状態)。 幸い、世話人の末松くんが同級生(爆)だったので、 あれこれ聞き倒して、何とかなったけど。 でも、こんなに勉強したの、まじで院生時代以来かも。 |
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チャンチャン焼き
初日からほんとにハードだった。6時過ぎまで、 ほんと、5時間ぐらい、ぶっとおしで実習した後に、 ようやく、Y・エロ・加藤くんと呑みに行った。 でも、IDLの実習は、加藤くんのおかげで、ずいぶん助かった。 |
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2日目の実習風景
2日目ももちろん一番乗り。まじめな受講者だ(笑)。 もっとも、朝は早くに目が覚めるし、ホテルにいてもすることないし、 一番乗りとは言ってもゲームしてたりするけど。 いやぁ、2日目も目ウロコで学んだことがてんこ盛り。 |
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居残り学習
課題ができなくて居残り学習してたわけじゃない(笑)。 2日目の午後後半は太陽関係の談話会があり、 ぼく以外は太陽の関係者でそちらに参加したため、 ぼくだけが会議室に残って予復習をしていたもの。 この日、ラインプロファイルはもちろん、 ちゃんと成長曲線まで描けた。感動的である。 もちろん観念的には知っていることだったが、 徹底的に実用的な実習で、めちゃくちゃ役立ちそう。 2日目の実習までは、何とか、予定通りこなせたけど… |
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3日目
今日も一番乗り(笑)。 しかし、昨日もホテルに戻ってから予習をしたり呑みに行ったり、 また夜中に予習したり、最近は、こんなに勉強したことないが、 さすがに寝不足が続いて、ふらふらだ。 なんとも、予想以上にハードだが、期待以上に充実している。 しかし、今回の集中講義、受講者が10人ぐらいでは、 もったいなさすぎる内容だ。 ビデオ撮りをしているので、ビデオだけでも、広く公開されるといいなぁ。 とにかく講義内容が実践的で実用的だし、講義資料も豊富で、 あとあとまで役立ちそうだ。 また講義スタイルそのものも、インタラクティブでジョークが豊富で (笑えないのがツライけど)、とても勉強になった。 |
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実習風景
院生の受講者が少し減ってきた。 たしかに輻射輸送は難しい分野なので、 なかなか面白さはわからないだろうけど、 こんな素晴らしい講義、もったいない! 昨日の予習の段階からIDLのファイル読み込み部分で躓いていて、 今日ようやく加藤くんのアドバイスで解決した。 パッケージを自動でインストールしたため、 デフォルトでファイル格納のフォルダが設定されていたものだった。 その後は比較的スムーズに進められたが、 今日の実習は膨大な量があって、やってもやっても終わらない。 5時の段階でも半分ぐらいしか終わらなかったが、 もう頭が働かなくなってギブアップ。 大量の宿題が残りそうだ |
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4日目
昨夜も5時間ぐらいしか寝ていないけど、熟睡したようで眠たくはない。 ただ、体力的に、ほとんど限界の感じだ。 明日が休めない用事のため、今日は帰らないといけない。 最終日が聞けないのがすごく残念だ。 |
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ばっちりショット
午前の講義が終わったところで、 今日帰らないといけない旨、挨拶などした。 もちろん、当然(笑)、一緒に写真を撮ってもらった (photo by Y. Feroo Kato)。 |
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ご褒美2
Ruttenさんは、サービス精神満載の人で、いろいろプレゼントを用意してきており、 加藤くんとぼくが割と実習ができていて、京都からわざわざ受けに来たから、 というような流れ(だと思う)、学生のお土産用にチョコをいただいた。 可能なら、5時ぐらいまで実習を頑張って、 夜遅くに帰京するつもりだったが、 連日のハードなスケジュールで、 体力はもちろん知力も尽きてしまった。 頭が働かなくなったので、3時ぐらいに諦めて、脱落したが、 昨日の予想通り、山盛りの宿題が残ったなぁ。 こりゃ、復習も合わせると1年はかかりそうだ。 しかし実用的な実習ができたので、 これから先はなんとか自力で身につけなければならないだろう。 |