輻射輸送・輻射流体サマースクール2011@北海道大学
$2011/08/18-20

筑波大学の梅村雅之さんと京都大学の野村英子さんとで、 3日間にわたり、輻射輸送・輻射流体のサマースクールを実施した。
日本においては(高エネルギー領域の一部を除いて) 輻射輸送の研究・教育がほとんど途絶えた状態だったが、 詳細なスペクトル観測が進むに連れて、 太陽・星/降着円盤/初期宇宙/系外惑星など、 多くの分野で今後は実用的な研究や計算が必要になりつつある。 したがって、日本の天文学の長期的な視点に立って、 輻射輸送の実用的な研究・教育を復活させたい、というのが最終目標である。

いろいろな機が熟した時期ではあった。
(相対論的)流体や(相対論的)磁気流体は早くから手がけていたが、 (相対論的)輻射輸送は相当に奥が深いので、最後の楽しみに取っておいたのを、 ようよう10年ぐらい取り組み始めて、やはり奥深いことを実感しつつあったこと。 昨年秋に、国立天文台で5日間にわたって、 Robert J.Rutten教授による輻射輸送の集中講義(+実習)を聴いて、 ヨーロッパの伝統を思い知らされたこと。
http://quasar.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/~fukue/TOPIC/2010/101115.htm
この数年、ぼく自身も輻射輸送の講義をエクストラで開催して、 ある程度は経験を積んできたこと。
http://quasar.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/~fukue/TOPIC/2011/110521.htm
そして、梅村さんも長年にわたり輻射輸送・輻射流体の研究・教育を進めてきていて、 サマースクールの開催を考えつつあったこと。などなどだ。

最初は今夏に筑波大学で開催しようという相談をしていたが、 震災後の影響でさすがに難しく、一時は今年の開催を断念していた。 しかし、幸い、8月いっぱいにわたって北大で開催された 滞在型研究会「全天体形成」
http://th.nao.ac.jp/~saitoh/workshops/hokudai201108/
の一環として開催できることになったものだ。 尽力された梅村さんや関係者の方々には感謝したい。

当初は、2,30人ぐらいは受講して欲しいなぁと思っていたが、 最終的には60人もの参加者となり、今回の滞在型研究会のセクション中でも、 最大の規模になった。会場の収容数と参加者数がほぼ同じだったので、 前日になって、急遽、広い会場へ変更したぐらいである。 いかに、この分野の教育が渇望されていたかがよくわかる数字だ。 …まぁ、夏に北海道という魅力もあったかもしれないが(笑)。 実際、よかったし!

5月末に開催が決まってから、資料や演習問題そしてパワポなどの準備を進め、 ようよう、開催数日前に、だいたいの準備が整った感だ (パワポは最後の球対称で力尽きたけど、たぶんそこまで進まないだろうと)。
途中では、数式などをまとめて、参加者用にHPへもアップした。
http://quasar.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/~fukue/educate.htm

プログラムは、午前が輻射輸送・輻射流体の講義で、 午後が演習や関連の研究発表である。 夜セッションも当然あるだろうが、講義があるので、呑みすぎないようにしないと。

サマースクール2011のプログラム

フライト

やっぱりかなりドキドキした。 久しぶりのフライトである。
鉄の船が水に浮かぶのはまだいい。 ヘリウムや熱気球が空を浮かぶのもがまんできる。 しかし、鉄の塊が空を飛ぶのだけは、いまだにわけがわからん。
とまれ、今回も無事に離陸して、雲海の上を巡航速度で飛んでいるところである。

伊丹空港

そもそもが、今回は出張自体が久しぶりだ。 もちろん震災の影響である。 春の天文学会が中止になって以来、この半年、 研究会などもほとんどなく、出張自体も当然なかった。 通常なら、数回は東京その他へ行っている時期だ。 そんなとこへもって、いきなり、数年ぶりの飛行機である。 これは何かの罰ゲームだろうか。

到着の遅れなどなどで、出発予定も1時間近く遅れて、 空港ロビーですでにいっぱいいっぱいだった。

竜の巣のなりそこない

もっとも上がってしまえばこっちのもの(笑)。 忘れていたが、早得の予約時に窓際の座席Aを指定していたんだ。 入道雲がどんどん形を変えていくのがわかる。 最初はもっと“竜の巣”っぽかったんだが、だいぶ崩れてしまった。 盆帰りの子供連れが圧倒的に多くて満席だったが、 隣は大学生らしいカップル(ちょっとむかつく)。

まっしろ。

窓の外は雲海のまっただ中で、真っ白。 おまけに、日の光で画面すごくみにくい。しかも暑い。 しかたないので、ちょうど配り始めた ドリンクのアップルジュースをリクエストしたら、 カップルのお姉さんが中継してくれた。いい人だ(笑)。 飲み終えたカップも笑顔で手渡してくれた。 とてもいい人だ(爆)。 いま山形県上空らしいが、まったくわからん(泣)。

雲の層が上にも下にもあるのがわかる。

前日打ち合わせ

ようやく札幌についた。京都からだと半日がかりだ。 新千歳も広いので結構くたびれるが、 鉄道に関しては接続がいい方だろう。

夜は、今回のサマースクール世話人の 梅村さん(筑波大)と野村さん(京大)と打ち合わせ。 サマースクールの進め方はもちろん、 現在計画中のテキストなども含め、 結構まじめに打ち合わせを長時間やった (もちろん、ぼくは呑みながらだけど)。 北海道は海の幸が美味しい。

ホテルクレスト

前日は12時ぐらいに寝たにもかかわらず、 いつもどおり6時に目が覚めた;というか、 いったん目が覚めたけど寝てしまい、 6時半に設定していた目覚ましで起きた(やばいやばい)。

調べみたら、前回北海道に来たのは2006年だから、5年ぶりだ。
学会などの出張で日本全国あちこち行くが、東京は別にして、 札幌と鹿児島がダントツで多い。 札幌は今回が5回目で、鹿児島もこの秋で4回目ぐらいだ。

前回来たときに気に入ったのが、札幌駅すぐそばのホテルクレスト札幌。 ふだんは朝食なしを選択するが、ここは朝食がデフォルトで、 仕方なしに食べるけど、それがまた滅多矢鱈にいいのだ。
http://quasar.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/~fukue/TOPIC/2006/061127.htm
今回も前夜にかなり飲み食いして食欲なかったけど、 久しぶりに朝から軽く食べてしまった。 今朝は玉子スープが絶品だった。昼抜きでもいいなぁ。

初日スタート

北大の中で迷ってしまい、たまたま広大の植村さんに出会ったので、 何とか会場の5号館までたどり着けた。
広い部屋に変更したのはいいが、 大学院入試などで部屋の調整が難しく、 1日目は、なんと大講堂。でかっ! 

大講堂

途中で人数を数えてみると、56人ほどで、 申込者はほぼ全員参加みたいだ。 輻射輸送・輻射流体のコミュニティが盛んになるといいが。

初日の講義は野村さんが担当で、 輻射量などに関する基礎的な話をしてもらう。 最初は定義的な話ばかりで、取っつきにくいだろうなぁ。 かといって、なかなか、いい方法が思い浮かばない。

夜(夕)の部

サマースクールは5時ぐらいに終わって、少し早めだが、 梅村さんや学生と10人ほどで呑み会へ。 なんか、いつもどおり、莫迦な話ばかりしていたが、 群を抜いて面白かったのが、
ブラックリスト by 富田先生
5点でもトップ by 大須賀せんせ
だった。 さすがに、明日が本番なので、控えめに呑んでいたが、 …それでも、5時半ぐらいから9時ぐらいまで呑んでいた(笑)。 1次会で解散して(うーーん、みんなは2次会に行ったのかな)、 押さえの缶ビールを2本買って、大人しくホテルへ。
いちおう、明日のファイルの点検。 そうそう、今日、大須賀くんに出した宿題:
・太陽コロナは100万Kなのに、なぜ、皆既日食のコロナは乳白色なのか?
・太陽スペクトルで温度がもっとも高いのは、どの波長か
についての、解題ファイルもチェックしておかないと。。。

まさに、その話を、2月に京都産業大学であったスペ研で、していた。 ぴったりのファイルがあった。
明日の朝に、何人が答えられるか、楽しみだ。

中日

めちゃ眠い。
ゆうべは11時過ぎにはバタンキューだったが、 3時ごろに目が覚めて、今日の講義の内容を考え出したら、 もうそのまま眠れなくなった。 そろそろ7時で朝食時間だが、めちゃ眠い。
それでも、TV出演の前なんかよりは眠れた方だが。 みかけより、ぐっとナイーブなのだ …だれも信じてくれないけど。

ともかく、今日の講義はぼくの担当で、 モーメント定式化と平行平板における輻射輸送の予定。 ここらへんまでくると、 太陽のスペクトルや周縁減光など、具体的実例も多く、 少しはわかりやすくなるはずだ。講義次第だけど。

昼休み

もー、完全にへろへろ。 寝不足な上に、さすがに2コマ喋り続けはしんどかった。 外に食べに行く余力は残らないだろうと、 サンドイッチを買ってきて正解。

昼休みの残りはボーとして過ごしていた。 …(昨日は、ゲームをする余力があったのに) 今回のサマースクールは、午前が講義で、 午後に1コマ程度の演習を入れているが、 ときどき質問があるものの、 演習の間もボーとして過ごしていた。 …(昨日はドラクエ本の記事を書く余力があったのに)

それでも合間に、テキストの相談など、 あれこれの用事を片付ける。

さらに3時からは研究発表。 なかなか面白いけど、集中できない(泣)。

夜(夕)の部

え、10時、あれえっ?  今日も10人ほどで6時ごろから飲み始めたが、 さすがに眠くて疲れて1次会でドロップアウトしたのに、 ホテルに戻ったら10時だった。 サッポロクラシックの飲み放題メニューにしたから、 オーダーは時間制限があったはずなのに、 その後も、しこたま、しょうもない話をしていたみたい。 うーん、いくつか思い出したけど、 ホームページには書けない話ばっかりだ。

ケン×ロウタ=HPに書けない話

写真ない 3日目

さすがに夕べはたっぷりぐっすり眠って、元気回復(笑)。 今日は正味に勉強の日だ。
最後のセッションは座長である。 ぼく自身はシミュレーションはやらない人だし、 (ただし、やったことはある)、 学会などのシミュレーションは、パラメータをいじっただけなのが多くて たいていは面白くないが、最後のセッションのシミュレーションは、 さすがにオタッキーで、座長をしながら聞き惚れいた。

写真ない 夜(夕)の部

やっぱり10時?  最終日は、相変わらず男ばっかりだったけど、 東工大の中本さんたちと、 大須賀くんオススメの店でサッポロの夜を堪能。 ホテルクレストの真ん前にこんな美味しい穴場があったとは!!  でも今日は、(R高橋くんの居た)夕べのようなHPに書けない話題ではなく、 中本さんが写真を並べていたとか、大須賀くんの通帳残高だとか、 富田くんが信じられないほど情報通だとか、 なかなか、ほほえましい話が多かったかな。 うーーんと、もう2人いたけど、もう一度会わないと誰だったか。。。 とにかく、もうメチャクチャにオタッキーな会話で終始した気がする。

ホテルバイキング

ホテルクレストは朝食バイキングが豪華で、40品目ぐらいはあったかな、 ほんの一部分しか食べられないのが残念だけど。 さすがに4連続で呑んだ朝なので、ジュースやスープが美味しい。

鉄の塊

さて、ふたたびフライトである。 行きと同じく帰りも満席で、出発が30分ぐらい遅れた。 往路ほどはテンパラなかったのは、ちょっとだけ慣れたの? 

ゼノンのパラドックスで“飛ぶ矢”というのがあるが、 これ静止画だったら、どうみても浮かべないよ。

海岸線

行きと同様に帰りも窓際の席を予約していたので、曇りがちだが、 往路よりは景色がよくみえた。 眼下は津軽海峡から青森に入るあたりだろうか。 道路や街など人間の痕跡があるのは、海沿いのほんの一部なのがよくわかる。

群青

上空は群青、空気が少なくてレイリー散乱が弱い(笑)。 輻射輸送を突き詰めていくと、地球大気の輻射輸送に進むんだろうなぁ、やはり。

なんとか、無事ランディング、するかなぁ。