Princeton Diary 1


Blue sky above and white cloud below

9月20日(金) フライト

10:00 起床.
 #いつもより1時間くらい早いのでごっつ眠い.

12:16 京都駅発関空特急はるかに乗車.
 #京都駅はまだ改築中で,相変わらず迷路状態. 京都ホテルや京都駅の高層化は,古都の景観をぶちこわしにするもので, まっとう(?)な京都市民としては腹に据えかねている. おまけに京都駅の外観は,こりゃ何だ,だんだん異様になってきているぞ. それにしても早う工事終わってほしい.


14時頃 関空到着.
 搭乗手続き(チェックイン)に入る. といっても,新大阪からはるかに搭乗してきたM氏の後をついていくだけ. とってもラクチン.
 #でも,手荷物検査でゲートをくぐったとき,いきなりpーと鳴り出す. 脇へよけさせられてボディチェック. 金属探知器がコカンのあたりでピーピーなるのでちょっとアセアセしたが, 引っかかったのはベルトのバックルだった.

16時頃 Northwest(NW)航空70便,デトロイトへ向け関空を出発.
 定刻より30分ぐらい遅れただろうか.


The left engine of NW70

 #乗客が遅れたようなアナウンスをしていたが, 定刻あたりはまだ左主翼下のエンジンをいじっていたぞ. 思い出してみると,このときいやな予感がしたのだった (いや,ただ予感がしただけで,飛行機は無事に飛んだけど …伏線にもなにもなっていない).

おお,ゆれるゆれる! 台風接近の影響か (後で聞いた話だが,翌日は欠航が相次いだらしい). 雲を抜けても眼下は雲海で,なーんも見えん. おまけにすぐ夜. ぜんぜんおもろない.
 #ただ,アラスカ近くを通過しているときに, 北の空が青緑白色に明るかった. オーロラか? オーロラに違いない.そう信じておこう.
 #それから,アメリカの中西部を飛んでいるとき, 眼下の大地が碁盤目に区画整理されていて, それが見える限り地平線まで広がっていた. なかなかすさまじいまでの風景だった. 昔,フランスからの帰りに中国の奥地の上空を飛んだとき, まったく人の手の入っていない砂漠や荒れ地が広がっているのを 見たことがあるが,それと対比して面白かった. いずれにせよ,どちらも日本では存在しない風景だ.


The land of America

 でも,後はただただ退屈なだけの, (とりあえず)デトロイトまで13時間のフライトだった.
 #NW航空のスッチーは,お○はんばっかりやったで> Kん,話がちゃうやんけ.

26:00 デトロイト到着.
 現地時間は午後3:00ぐらいでまわりは明るいが, 日本時間では午前4:00過ぎで通常の就寝タイムになり,さすがに眠い.
 #おもろかったのは,着陸のときはすごくいい天気で, デトロイト市街の上空に一定の高度まで, 茶褐色のスモッグが広がっているのが見えたこと. ほんと,はっきりくっきりした“きれいな”スモッグだった.
 #デトロイトでも金属探知器に引っかかる(怖そうなおばさんだった). 今度は,ベルトのバックルと,腕時計と,ポケットに入っていたガムの銀紙の3つ. めちゃ敏感. そーいえば,以前,錠剤のケースの銀紙に引っかかったこともある.

16:50(現地時間) NW286便,ニューアークへ向けデトロイトを出発.
 デトロイトでは成田から飛んできたU氏,Tくんと合流して, (デトロイトまでの)ジャンボに比べ小さい飛行機に乗り換え, (ニューヨーク近郊の)ニューアークNewarkへ飛ぶ.
 #ニューヨークでも,逆転層にできた雲と市街の 間のスモッグがよくわかった. 写真撮ったけど写ったかなぁ.


Smog above New York

18:30(現地時間) 日本時間で朝の6時,ニューアーク到着.
 受け入れスタッフのエド・ターナー氏(Edwin Turner)と 息子のダニー(Daniel; Danny)が, 空港までワゴンで出迎えにきてくれている. 車でプリンストンまで1時間半ぐらいだが, ワゴン広いし,もーラクチンラクチン.
 #このダニーって子が11才の元気なかわいい男の子で, ターナー氏は目の中で遊ばせてる感じ (ダニーも見るからにパパっ子だ). あんまりかわいいんで,車の中で挨拶替わりに,
 "I like boys, but like girls much more."
とかなんとかいったら,思いっきり引いていたような….


Danny, me, Ed

まず宿舎のパーマーハウスPalmer Houseへチェックインに行くが, 場所がぜんぜんわからず,1時間くらいウロウロする. とうとう電話で聞いたら,一度通ったところだった. プリンストン大学のゲストハウスのようなところみたいだが, あまり宣伝していないようで,U氏はもちろんターナー氏も 知らなかった. もっともゲストハウスといっても,なんか時代物で古風な, ぼくらの感覚からしたらすごいデラックスなとこだった.


Back gate of the Palmer House

Lounge of the Palmer House

Guest room of the Palmer House

その後で,遅い?早い?食事を取りに行ったのが, 現地時間で夜9時近かっただろうか?
 #(事前の話では)着いたらおそらくエドの自宅へ 連れて行かれるだろう,という話だったが, この日は,みなで中華料理へ行った. 聞けば,いまwifeがいないとのこと. すわ,別居か!何かかと耳ダンボにしたが, 長男の大学入学で西海岸へ行っているらしい (9月が新学期だ,そういえば).なんやぁ.
 #さきほどの挽回をしようと,ダニーに, (車の中では野球はショートだとか聞いたが), ゲームとか好きか,と聞くと,セガが好きらしい. お,やったね,ここで意気投合,のはずだったが…, やはり言葉の壁は厚い.


Shin, me, Tohru, Danny, Ed, Masayuki

11:00(現地時間) 日本時間では昼の12:00,就寝.
 #日本からもってきたLibretto20が (アメリカの)電圧110Vで動くかどうかやや不安だった (トーシバの技術サービス,ぜんぜんつながらへん,サービス悪いわ; そりゃ国外では保証せんと,書いてあるけどね). 動作確認のために,寝る前に30分ほどゲームをしてみる. 電源まわりがちょっと熱っぽいような気もするが, なんとか元気に頑張ってくれるみたいだ. どーにもこーにも眠くなったので,寝る.

長い1日だった.


9月21日(土) メッカ訪問

5:00 起床.
 もー目が覚めてしまった. ゆうても日本時間では夜の6時か. ちょーどいい. 2時間ほど入力.
 でも,着いていきなり週末. なんて素敵なスケジュール.

8:30 朝食.
 朝食はコンチネンタルスタイル(と言われてもよくわからんが), よーするにセルフサービスのビュフェ形式らしい. ←これオオウソ. パンとドリンクだけの軽食がコンチネンタルで, オムレツとかいろいろおかずのあるヘビーなのが英国風だそうだ. なかなかエエ勉強になる.
 #でも朝食から食べるなんて,近年にない健康的な生活だ.

10時過ぎにエド&ダニーが迎えに来てくれて, まずは,足となるレンタカーを借りに行く.
 #話には聞いていたが,まあとにかくだだ広くて, たしかにアメリカではアシは絶対いる. でも,(とーぜん)免許のないぼくはお客さんで, 乗っているだけ.ラクチン^3.
 アメリカのレンタカーは結構いいかげんなのも多いらしく, U氏も慎重で,選ぶのに昼頃までかかった. いや,実は,U氏がカードを宿に忘れ,取りに帰ったせいもある?
 #これも話にはよく聞くが,アメリカは完全にカード社会. でも,U氏がターナー氏と宿にカードを取りに行っているとき, “U君にしては珍しいよねぇ”なんて言ってたら, 人のことは笑えない. ぼく自身がカードを忘れていることに気づいた. それも日本に!  うーん,宿の支払い(これもカード)どーしよう. とりあえず,忘れることにした.


The frontside view of the Peyton Hall

The backside view of the Peyton Hall

12:00前 いよいよ,目的地プリンストン大学へ向かう.
 心もち緊張,,,していない.時差でボーとしている.

天文学astronomyの研究棟はペイトンホールPeyton Hallと呼ばれる 平屋(地上一階,地下一階)の建物だ (大学の研究棟が平屋というのがとにかく驚きだった). 地上の一階部分には,図書室とアトリウム(階段教室)を中心に スタッフの研究室がぐるりと並び, 地下には,大学院生の部屋やラウンジや端末室そして工作室などがある.
 そうそう,とりあえず渡航で頭がいっぱいで, 建物に入って名札をみるまで, プリンストン大学の天文は超有名どころが揃っていることを 完璧に忘れていた. プリンストン大学は,ハーバード大学やMIT,カルテック, イギリスのケンブリッジ大学などと並び, 天文学の分野におけるメッカの一つなのである.
 もちろん受入スタッフのターナー氏は 観測的宇宙論とくに重力レンズの分野では大家の一人だが, 彼以外にも,おるわおるわ. 何でもやっているオストライカーJ.E. Ostrikerや パチンスキーB. Paczynski, 宇宙論のゴットJ.R. Gott IIIに 銀河観測のタイソンJ.A. Tyson, 星の進化を築いた巨匠の一人 シュバルツシルトM. Schwarzshild(まだ生きてたんだ), さらに物理所属だがピーブルスP.J.E. Peebles, そして銀河の起源を探るSDSS計画の中心者ガンJ.E. Gunn (地階の工作室ではSDSSで使うカメラが製作中だった). 最近では日本からの滞在研究者も常時いて (ぼくたちも短期の滞在研究者になるが), このときも,宇宙論の杉之原氏やSDSSの土井氏が長期滞在していた.
 廊下を歩けば有名人にあたるとはこのことである.

有名人ばかりなことに気づいて頭がクラクラしている間に (ぼくは有名人に弱い), ターナー氏が部屋に案内してくれる. なんとなく全員で一つの客員研究室に入るのだと思っていたら, 何とぉ,一人一部屋+一人一端末もらえる.unbelievable


Office

 #いや,実際のところ,(就職前は言うにおよばず) 大学に就職してから一人部屋(個室)に入ったのは, 今回がはじめてだ(でもって,おそらく最後だろう). もっとも,静かすぎて,逆にあまり落着かなかったりする?


Name plate

 #といっても,ぼくが入ったのは一応は共用の部屋で, 名誉教授のM. Schwartzshildがたまにくるということだったが (ネームプレートにはシュバルツシルトの名前があった), 残念ながら滞在中は出会えなかった.

さて,すでに時刻は昼時で, 昼食を取りに郊外のごく普通のパスタ料理店へいく.
 #エドはダニーを連れて,野球かなんかの試合観戦に. 週末の家族サービスは,こちらでは当たり前で, むしろ午前中われわれに付き合ってくれたのは, すごい親切なことである.

午後 モールへ.
 食後,愛妻家(?)のM氏は,レストランのすぐそばの キッザラス(Kids R us;トイザラスの親戚)で, “おうちの方”からのコマンドによる指定服を購入.
 その後は,時差ボケ状態を回復する意味もあり, Princeton Market Fairという郊外型のショッピングセンターへ行く. 巷で噂のIndepencence Dayがかかっている映画館を尻目に, とりあえず本屋Barnes&Nobleへ突入(もちろん洋書だぁ).
 #本屋では,4人とも,専門書のコーナーへ直行し, PhysicsやAstronomyの本しか見ない,というあたりが, いかにもそれっぽい(ある意味ではオタクな)ところだ.
 そして本屋の真ん中にある喫茶店で,しばし“議論”. シニアスタッフが3人集まると,話すことは決まっていて, Tくんは結構退屈だったのではなかろうか. おまけに,夕飯に何を食うかという話も, えんえんと議論したりして. あ,これには理由があって, 夕食は,プリンストンに滞在しているS夫妻 (ここだけ伏せ字にしても意味がない)と行くことに なっていたのだが,
 “Sくんのお勧めに連れていってもらおう”
 “でも(Sくん)適当なところ知っているかなぁ”
 “きっと知らないよぉ”
 “そうだそうだ”
 “じゃあ,中華にしようかインド料理にしようか”
なんて,失礼な話をしていたのである.
 #S氏の名誉のために書いておくと, ちゃんと“お勧めの”インド料理に案内してくれた. でも,“お勧めの”料理は,と尋ねたときに, “これが美味しかった,あれが美味しかった”といちいち 指定してくれたのは,奥さんだったりする.
 #このインド料理店は,店内がピンク一色でなかなか異様な雰囲気だったのだが, うっかりしていてカメラを車内に忘れてしまい,撮影できなかった. 余談だが,普通のカメラだと重い(!)ので,プリンストンには レンズ付きフィルム(でかつ新システムのもの)を数個持参した. ISO400なので割とよく写っており,何とか役に立ったようだ.

夜,ナイトキャップにみなでドイツビールやワインを飲んだら, かくっと寝てしまった.

9月22日(日) 観光不日和

6:30 起床.
 睡眠時間は少ないけど,よく寝てOK. どちらにせよ,もう寝れないから,旅日記をつける. あいにくの雨.でも,天気が悪くて幸い?
 #天気がいいと観光したくなるでしょ.

10時前には大学に行き,午前中はがんがん議論 (えー??,日曜日なのにぃ).

昼はPrinceton Market Fair内のテリヤキハウス (和食のファーストフード店;日本におけるマグドのようなもの) でMix Udon Soupを頼む. これがけっこーイケタ(ごんぶとうどんより美味しかった).
 そしてUniversity Store(プリンストン大学の生協)を ちょこっと覗いた後,さっと大学に戻り,議論を続ける. かなり遅くまで続け,みな疲れて,遅い夕食に中華をとって,宿舎へ.
 #やっぱり時差の関係もあり,頭と体が別々で, 一日中,竜介モード(うなずくだけ)だったような気がする.

9月23日(月) パチンスキーと握手する

8:00 起床.
 相変わらず眠いが,やっと少し頭がすっきりしてくる. 9:30頃には大学へ到着して仕事をはじめる.
 #昨日は週末で閑散としていたが,さすがに今日は,新学期でもあり, 大学構内もPeyton Hallも学生やスタッフで溢れている. もっとも,今日はJewish day(つづり違うかもしれん)とかで, ユダヤ教の祭日で,(ユダヤ教徒)は半日休日らしい.

10:30頃 コーヒーブレイク.
 U氏たちがコーヒーブレイクの誘いに来る. Peyton Hallの建物の中には(割と小さいが)スタッフ用の談話室があり, 毎朝10時ぐらいから小一時間のコーヒータイムになっているのだ.
 #コーヒータイムといっても休憩するわけじゃない!  コーヒーを飲みながら狭い部屋のあちこちで議論!するのである. それでなくてもプリンストンには有名人,ではなくて, さまざまな分野での超一流の専門家が集まっていて, しかも彼らは毎日,お互いのアイデアや知識を交換し合っているのだ. (耳学問によって)ますます磨きがかかるはずである.

−知識はますます集中する−

この日は,談話室に入るなり, パチンスキー(知る人ぞ知る,あのPaczynski)がいて, われわれを暖かい握手で迎えてくれる. さらに,コーヒーカップを取ってきて, 彼自らコーヒーまで入れてくれたのには感激した.
 #でも,その後でスタッフ同士がやっていた議論には, あまり付いていけなかったりして.
 #パチンスキー,なかなか気さくだったが, 後で,トイレで鉢合わせしたとき,自分が飲んだカップを, トイレの水で洗いに来ていた. いや,実はちらっと見えたのだが, 談話室で飲むコーヒーの水もトイレで汲んでたぞ. めちゃめちゃ気さくだ.
 ま,ともあれ,パチンスキーから借りたコップを, こちらもトイレの水で洗って返しにいった. 成り行きで,つたない自己紹介もしたら,
 "I remember your name."
とかなんとか,こちらの名前を知っていてくれたのは,とにかく嬉しかった. ついでに名刺も渡したのだが (本当は最近の自分の論文を渡すべきだけどね), (天文学会御用達の)裏に天体写真が印刷してある名刺は, こういうときにすこぶる評判がいい(パチンスキーはバラ星雲を選んだ). またもちろん写真もちゃっかりと撮らせてもらった. さらに行きがかりというか,何しに来たんだ,てな話になり, (彼は最近は重力レンズとくにMACHOと呼ばれるバリオン物質でできた 重力レンズ天体の探索に精力を集中している), 議論する時間まで取ってくれた. (でも,議論自体は,当然,U氏やM氏におまかせ).


Bohdan Paczynski (sorry for missing ' on n)

昼は,サンドイッチのファーストフード店Hoagie Havenの ばかでかいパンのサンドイッチ(それをhoagieというらしい)で済ませ (でも安い割に,ベーコンが香ばしく,スパイスも利いていて, なかなか美味しかった→好物になってしまった), ハードに仕事を続けたり, ターナー氏と本来の目的の共同研究の議論を行った.
 #いや実際のところ,この日は8時頃まで仕事していたぞ.

さて,お楽しみの夕食タイム.
 #ほんと,ほかに楽しみないもん.
 “福江さん,どこ行こう”
 “うん,今日は調子いいから,どこでもいいよ”
 #胃が弱いので,ぼくの拘束条件が食事の種類を決める.
 “チョイスは,中華,メキシコ料理,,,”
 “メキシコ料理でいいよ”
なんて感じで決まり,Casa Lupitaという メキシコ料理のレストランに行ったのだが,これが大正解.
 #料理はもちろん美味しかったが,Anneちゃんがよかった. Anneちゃんってテーブル担当のウェイトレスさんね (完全にオヂサンモード).

 どーせあちこちで言いまくられているだろうから, 先に言っておくけど,
 (ネームプレートで)名前をチェックしていたのはぼくです
 (ハメラレタ気もするけど)一緒に写真を撮ってもらったのもぼくです
 (おだてられて)チップをはずんだのもぼくです
これで間違いないですか>Uさん,Mさん,Tくん


Anne and her signature

宿舎に戻ったのは10時過ぎで,帰り道に買ったワインを飲みながら, “アヤシイ”天文学者の噂話をしているうちに,夜も更け,結局,
12:00 就寝.


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