ブラックホールの無毛定理の観測的検証

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図6は OJ 287 の衛星ブラックホールの公転軌道がどのように歳差するか,および熱的フレアがいつ観測されるかを示す最新の予測です.原点に大きい方のブラックホールが位置し,y = 0 がその降着円盤に相当します.図6から明らかなように,今後 OJ 287 の増光間隔はきれいな12年周期から大きく逸脱する時期をむかえます. これらの増光開始のタイミングを決定することで,歳差連星ブラックホールモデルの妥当性とともに,ブラックホールのスピンや no-hair パラメータ q が連星系のパラメータとして決まります.

no-hairパラメータの推定

図6における2019年7月末の熱的フレアの時期は q の値に強く相関することが理論的に予測されていました.したがってこのフレアの発生およびその時期を知ることで,OJ 287 の超巨大ブラックホールにおいて無毛定理が成立しているかどうかを観測的に検証できる可能性があります.

できました → プレスリリースをご覧ください.

宇宙に実在する天体においてブラックホールの無毛定理の成立が観測的に検証できたことで,一般相対性理論が現実の世界を正しく記述できている証拠がまたひとつ積みかさねられたことになりました.

(ダイジェスト解説・完)


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図6
図6: OJ 287 のブラックホール連星系の軌道の変化と増光時期の予測 (Dey et al. 2018
図7
図7: 図6の2019.569において降着円盤の下 (地球から見て裏) 側から衛星ブラックホールが
突き抜けてきたところの想像図.2019年7月の OJ 287 の増光はこの時に生じました.
(credit: NASA/JPL-Caltech/R. Hurt (IPAC))

松本 桂 (大阪教育大学 天文学研究室)