活動銀河核 OJ 287 の謎

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OJ 287 は,かに座の方向にある活動銀河核です. 地球からの距離は約35億光年で, きわめて遠方にもかかわらず天の川銀河の星々と同じくらいの明るさで見える (図1)ということは,本来はとてつもなく明るいことを意味します.

活動銀河核の莫大なエネルギー源は, その中心にある超巨大ブラックホールを囲む降着円盤の重力エネルギーと, ブラックホールの両極方向へ吹くガスの高速噴流 (相対論的ジェット)だと考えられています. 活動銀河核のうち, ジェットの進行方向がたまたま地球へ向いている位置関係にあるものは ブレーザーと呼ばれ,OJ 287 もブレーザーに分類されます.

もともと OJ 287 は1967年に宇宙起源の電波源として発見されました. その方向へ望遠鏡を向けてみると,星にしか見えない天体が存在していました. 一方,その光は普通の星とは全く異質な天体であることを示していました. それは(やはり星にしか見えないことからかつて変光星と認識された BL Lac と同様の)ブレーザーの特徴に一致していました. よって OJ 287 は星ではなく活動銀河核の一種と判明しました.めでたし.

唯一無二の特異性:12年周期の増光

ところが,まだ発見直後といえる1971年末に,OJ 287 は突如として大増光を始めました. さらに最も明るくなった後,元の明るさへ戻る途中の1972年末に もう一度大増光を起こしました. つまり,するどい明るさのピーク(極大)が2回生じたことになります. そして約12年後となる1983年から1984年に, これとほぼ同じパターンの大増光が再び起こったことで, この天体は大きな注目を集めました.

そうすると, 実は過去にも同じような大増光が繰り返し起こっていたのではないか? と考えたくなります. しかし,ある天体の過去の明るさを, 時間を遡って知ることなどできるのでしょうか.

かに座を含む黄道の天域は,昔から写真に撮られることがよくあり, OJ 287 も過去に撮られた写真に偶然写り込んでいることがあります. そのような写真が存在すると,撮影当時の天体の明るさを測定できることになります. たまたま撮影されていた時だけに限られますが, あたかもタイムマシンのように,過去の OJ 287 の明るさが判るわけです.

そのような写真乾板が世界各地の歴史ある天文台に残されていました. それらを調査した結果, なんと OJ 287 は少なくとも19世紀末頃から過去120年間, 平均すれば約12年おきに大増光をくりかえしていたことが判明しました(図2). そして過去の大増光でも,やはり極大は1回ではなく2回ずつ起こっていました. これは活動銀河核に限らずとも OJ 287 でしか見られない謎の天体現象でした. そのため,なぜこのようなことが起きるのかが大問題となりました.


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図1
図1: OJ 287 を中心とする7'x7'の範囲のCCD画像.
OJ 287 は一見普通の星にしか見えません.
(大阪教育大学51cm望遠鏡で撮像)
図2
図2: 過去120年の OJ 287 の光度曲線(Villforth et al. 2010 の図24改).
OJ 287 は約12年ごとに準周期的な大増光をくりかえし続けていること,
また各々の大増光では明るさのピークが2回生じていることがわかります.
現在ではさらに測光点が追加されており,詳細な増光時期が得られました.

松本 桂 (大阪教育大学 天文学研究室)
e-mail: katsura@cc.osaka-kyoiku.ac.jp